りんごもなしも自分で剥け(ダークサイドに落ちてます)

 わたしは3月までと違って、ちょっと忙しくなった。

「ちょっと」は、自営の仕事が増えた、ケーキ屋さんで働くことにした、と、ひとつひとつなら「ちょっと」なんだけど、全体としては「けっこう」忙しくなった、だと思う。特に、ケーキ屋さんで働いたあと自営の仕事がある日は段取りが命で、例えば、朝に夕ごはんまで作っていかねばいけない。

 そして、近頃は息子たちからの頼まれものがあって、これがけっこう大変で「かなり」忙しい。とってもとっても忙しい。


 夫は「大変だね」とは言う。

 気が向いたら、洗い物をしてくれたりもする。洗濯もしてくれる。

 でも、あくまでも「気が向いたら」。

(週末の買い物は彼の仕事に決めた。それはしてくれている。)


 在宅ってよくないね。

 さぼっているのがよく分かってしまう。

 ゆえに、「今日は残業で大変で」と言われても、「さぼってたからじゃない?」と思ってしまう。実際、在宅の日はそうだ。一時間に何回タバコ吸いに言ってんだ、とか思う。まあ、あんなにさぼっていても給料がもらえるならいいやって思っている。


 半年くらいフルタイムで働いて、思ったのは、「残業で」って言って気軽に残業出来るのって、いいねってこと。

 残業していたら、家が回らないんだよ。

 誰がごはん作るんだよ。掃除も洗濯も。

 家に帰って食べて寝るだけの人はいいねって思った。

 在宅のようすを見て以来、「残業で」と言われても「大変ね」って思えなくなってしまった。もっとさぼらずに働いて、家事をやれって思う。


 思うんだけど、もういい。

 もういいんだ。

 そのことは考えないことにした。

 つまり、完全に諦めて、何も期待しないことにした。

 何も期待しなければ、腹も立たないし、正直どうでもいい。


 はっさくが実家から送られてきた。

 わたしははっさくは買わない。

 なぜなら剥くのがめんどうだからだ。

 でも、はっさくは好きだから、自分で剥いて食べていたら「剥いて」と夫が言うので、外の皮を剥いて一つ一つ分けて、「あとは自分で剥いて食べて」と言ったら、「実だけにして」と言うので、全部自分で食べた。

 それくらい、自分でやればいいじゃない?

 以前、剥いてあげたことがあって(たぶん、子どもが小さかったから)、そのときたくさん剥いても次々に食べて、わたしの食べる分がなくなってしまったことを思い返し、剥きたくなくなったのだ。

 そういうのが、なんかときどき、ものすごく嫌だ。


 したがって、りんごやなしも買いたくない。

「剥いて」が嫌だから。

 長男には「自分で剥け」と自分で剥かせた。よし。

 次男もそうさせよう。


 りんごもなしも、自分で剥いて食べるのだよ。


 ねえあのさ。

 わたし、けっこう本気で小説書いてんだよ。

 他の誰が分かってくれなくても、身近な人が分かってくれていればいい。

 長男も次男も分かってくれている。

 だから、「今ね、こういうのを書いていて」と話す。

 でも、夫はそうじゃない。

 もっと軽い気持ちで書いていると思っている。

 そういう感情が、言葉のはしばしから見えて、気持ちが冷えてしまった。

「小説書いていないで、もっと自分をかまって欲しい」とか、うざいんだけど。

 とか、うっかり思ってしまった。


 わたしを、自分の手のうちに置いておきたいという気持ちが透けて見えた気がした。

 そういうのって、一番嫌いなんだけど。


 わたしにとって、一番だいじなことは、自由。

 社会の中で生きているから、完全な自由はない、もちろん。

 でも、精神は魂は自由でありたいとずっと願っている。

 それはもう、ずっと小さいころから。

 わたしにとって、魂の自由が一番だいじなことなんだ。


 っていう話もしたと思ったんだけど、何にも理解していなかったんだ、と、うっかり思ってしまった。うっかり気づいてしまった。


 子どもが大きくなって、もう見守ればいい年齢になって。

 わたしはわたしの人生を歩こうと決めた。

 わたしはわたしの人生を自由にいきたい。


 自由にいきたいんだ。


 その中に、やはり「書く」ということがあって、わたしにとって「書くこと」はほとんど「生きること」と同じなんだよ。



 書かないと、息が出来ない。

 ゆるやかに死んでいく。




 まあどうでもいいんだけどね。

 わたしはわたしの魂の自由をぜったいに護ろうと思う。

 

 そして、自由にいきるために出来ることを、全力でやりたいと思う。




 ああ、結婚、向いてない。

 全く、向いてない。

 出来ることと、好きなことは違う。ほんとうに。


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