盗むという行為

 そう言えば、次男は「新しく持って行ったえんぴつが全部なくなった」としょんぼりして帰って来たことがある。小学四年か五年のころのことだ。

 いろいろ話を聞いた結果、そのころ、「隠しごっこ」が流行っていて、それで隠されてなくなったらしい。担任の先生にもお伝えしたら、「そういう遊びが流行っていて」とのことでした。

 が。

 ターゲットとなるのには、それなりの理由があるよね?

 

 ここで、わたしの推理力(!)が発揮されます。

 次男の話をじっくり聞いて、隠す子の状況も聞いて思ったことは、たぶん、塾の成績が下がったストレスかなあ、と。そのころ、次男はその子よりほんのちょっと成績がよかったので、たぶん、やっかまれたのだろうなあ、と。

 学校での出来事ではなくて、原因は学校の外にある。


 わたしは成績が悪かったことを怒ったことはない(と思う)。

 望むところがあるのに、それに向けて頑張らないことは怒る。勉強したと嘘をつくことも怒る(わたしが傷つくから)。

 でもたぶん、成績が悪かったからと怒る親は多い。少し下がっただけでも、気にする。


 そこでわたしは、「なくしてもいいものを持っていくように」「なくなっても騒がず、次々に新しいものを持って行けばいい。そのうちおさまるから」と言いました。

 そして、わりにすぐに物がなくなることはなくなりました。


 隠しごっことは言え、結局出てこなかったから、盗られちゃったんだろうなあって思っています。

 でも、騒いでもいいことないので、このような対策をとりました。


 この場合、「盗む子側のこころの問題」だと思うのです。

 うちは次々にえんぴつを持っていけばいいだけ。

 そして、すぐになくならなくなったので、忘れてしまうくらいのこと。


 でも、ほんとうは「盗む子のこころ」のケアが大事よね?

 ただこれって、わたしが相手の子の親に言うわけにはいかないし(たいてい気づいていないし、言ってもまず信じない。トラブルのもと)、先生に「なんとかしてあげてください」っていうのも変です(先生には先生なりの考えがある)。

 だからこういう場合、わたしは自分の子のこころのケアだけを第一に考えました。


 長男のときの経験則が活かされています。

 長男のときはわたしも初めてのことばかりだったので、いろいろ失敗しました。

「騒がない」「やり過ごす」が最も賢いやり方だと学びました。犯罪的なことでない限りは。幸い、犯罪的なことはありませんでした。


 とはいえ、長男のときは、大筆のお金五千円がなくなり、いろいろ大変でした。

 犯人はあいつだ!

 というのが状況的に分かっているものの、確定は出来ず。

 お金は学校が補填してくれました(担任の先生のミスだったので)。


 わたしが思うのはこういうことです。


 息子たちは宇宙人だけど、でも、物を盗んだりはしない、絶対に。

 これは「絶対」と言える。

 家にお金をおいておくと、子どもが持って行ってしまう、という話も聞くけれど、そういう心配も一切ない。

 もしも、お金を盗むことがあったら、何か不測の事態が起きているということだと思う。ともかく、盗んだりは絶対にしない。


 そういうことが確信出来る子でよかった、ということ。


 えんぴつはともかく、あの五千円を盗んだ子。

 あの子だって分かっている。そして、あの子、他でもちょいちょい物を盗んでいるらしい。噂が回ってこないわたしの耳にも届くからよっぽどだ。

 あの五千円のときに、ちゃんと怒られていた方がよかったのに、と思う。


 でもね、どうも盗み癖って、直すのが難しいみたいなの。

 こころの問題? それとも脳の機能障害?

「ひとを殺したい」っていうのは、根底に脳の機能障害があるって思っているんだけど、盗み癖も同じじゃないかと、なんとなく思っている。


 ときどき、あの子はどうしているんだろう? って思う。

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