第5話 ヘイ! トゥクトゥク!


 中学からの友人に、海外旅行に行かないかと誘われました。

 行ってくれそうな人が私くらいしか思いつかなかったとかで、行きたい場所を訊いたらタイだと言います。確かに、以前よりアジアのどこかには行ってみたかったので、すぐに行く! と返事をしました。


 半分ツアーで半分自由行動みたいな感じの旅程。ツアーのうちは半分森に埋もれたお寺を回ったり、イベントがあったり、楽しく過ごしました。象園にはとても働きものの象がいて、背中に乗せてもらえました。甘いお茶にドリアンチップ。ツアー後に町を散策して買ってきたものをホテルの部屋で食べるのも楽しみでした。

 

 ところがです。自由行動の日に由々しき問題が起きました。友人がパクチーや東南アジア系の香辛料、調味料が苦手ということが判明してしまったのです。友人はすっかり引きこもり。ホテルの付属のプールとレストランでリゾート気分を味わっていたようです。


 今だったら止められるかもしれない。私は当時は特に禁止事項じゃなかったので、ホテルから出られない友人からあまり離れないようにしつつ、近くの空き地みたいなところに出ていた屋台で食事をしていました。


 言葉は分からなかったけれど、おばちゃんがドラム缶をコンロにして豪快に炒めてくれる料理とか、ビニール袋に入ったパイナップル? のジュースとかを注文して食べていました。めちゃくちゃ美味しかったのです。


 その内に、夜も遊びにおいでと言われるようになりました。一回だけと思い遊びに行くと、空き地は大きなテントが何張りも広がっていて、ビリヤードの台とかダーツとかバーカウンターとか置いてあって爆音で音楽がかかっています。

 雰囲気が昼間のおばちゃん達の屋台とはがらっと180度変わってしまっていました。この時点で引き返すべきでした。


 ビリヤードでちょっとばかし遊んで、多少お酒も入っていた所為もあると思います。バイク乗るかと言われて乗るー!(←まことにあほである)と言ったらぽんと乗せられてそのまま何処ぞに連れ去られました。周りにトゥクトゥクやら車やらバイクやらが、日本では考えられないくらい乱雑に走っていました。夜景がきれいで全部がきらきらしていました。

 勿論メットなどありません。


 けれど、夜風にあたるうちに酔いは醒める。

 あれ、私何やってるの? 危ない危ない。


 車が混んでるところでバイクが停まったので降車して、トゥクトゥクタクシー捕まえてホテルに帰りました。


 ヘイ、トゥクトゥク!


 タイ語は分からぬ。

 でも泊まっているホテルの名前を伝えると走り出す3輪車。

 タイに行った初日に使ったタクシーでぼられてたことがトゥクトゥク乗ってよーくわかりました。

 程なくしてホテルに着き、無事に部屋にもどることができました。




 お酒は飲んでも飲まれるな。こんな風に羽目を外すことが無いよう、容量用法を守ってお楽しみくださいね!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る