第25話

 僕はベッドに倒れ込んだ。頭がぼーっとするほど疲れている。でも不思議と、マイナスな感情は湧いてこない。むしろ、達成感から感じるような幸せな疲れだ。

 スマホを開いて、寝転がったままダラダラと見つめる。画面を眺めながらも、僕は夕方の五百木さんとの会話を思い出す。

 本当に楽しい一時だったなぁ。

 でも途中で、嘘をついていると指摘されたときはびっくりした。確かに僕は五百木さんに隠していることがある。でも誰だって、隠し事くらいはあって、全てを曝け出している方が稀ではないのか。きっとそうだ。だから、仕方ない。と自分に言い聞かせた。

 じゃあ逆に、五百木さんの嘘はなんだったのだろう。色々と、五百木さんの発言を思い出してみるが、それらしいものは見当たらない。

 僕は体を横向きにして、インスタを開けた。

 スマホの奥に、カーテンの隙間から夜空が見える。しかし、星は一つとして見当たらない。冬場は12時間労働も当たり前なエアコンが、ガタガタガタっと怪しげな声を出す。

 僕はストーリーを眺めていると、思わぬものを目にした。

 全身に力が戻ってきて、気づけば上半身が起き上がっている。心を落ち着かせようと再び窓の外へ視線を移せば、星のない夜空には綺麗な三日月が孤独に浮かんでいた。

 スマホに意識を戻すと、ryoーhosogaiというサブアカウントのストーリーに、卒業コンサートのチケット購入確定画面が投稿されている。その上に、太い文字で「誰か一緒に行く?笑」と添えられていた。

 細貝遼。中学校時代の友達で、人生唯一の親友だった奴。でも僕はもう嫌われているだろう。あの遼の冷たい目線を思い出すだけで、身がすくむ思いがした。

 しかし、あれからもう二年が経とうとしている。遼の僕を嫌う感情も少しは薄れたはずだ。ならば、希望はあるように思えた。

 そうしてやってきた土曜日の午後。僕は使わないでとっておいたお年玉を財布に詰め、靴を履き、玄関を飛び出す。行く先はもちろん、細貝遼の家だった。

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