第50話 やったねぇぇ!いつものだよぉぉ!

「暑い、寒いと来てまた暑い。環境の変化で風邪引かせる気かな?」


コメント

・お前バカだから風邪引かないだろ

・確かにw

・物理的に風邪に強そう

・弱ってる、って概念から程遠い男


「バカは風邪を引かない、っていうのは風邪を引いたことに気づかないかららしいよ。ちなみに僕、風邪引いたことない」


コメント

・気づいてねぇじゃねぇかw

・伏線回収早すぎる

・自らバカを証明していくスタイル

・さすがバカ


「バカバカうるさいなぁ……。別に言うほどバカじゃないと思うけどね。ただちょっと人と変わってるだけで」


 今まで散々言われてるけど、僕はとある結論を出した。

 それは、僕が少し一般人とは感性とか行動とかがおかしいだけということ。


「ほら、みんな違ってみんな良い、って言うじゃん」


コメント

・ちょっと……??

・ちょっと………………????

・言い過ぎるほどバカなんだから黙っとけ

・その言葉は世迷限定で作用しないのよ

・良くないんだよなぁ……w

・みんな良いけどお前は良くない

・最悪に酷くて草


「まあ、それは君たちが僕の良さに気づいてないってことだけだよね!!」


コメント

・どんな育ち方したらそんなポジティブになれんだよ

・知ってるか? こいつ、一般家庭から輩出されんやで……

・突然変異で草


 人をミュータント扱いしないでもらってもいいかな?

 僕は人間だ、と叫んでから、改めて周りを見渡す。


 本当に何もないなぁ。

 

「砂漠って行ったことないけど、こんなに足場取られるんだ」


 少し歩いてみると、ただ足を動かすだけなのに足が重い。砂に足を取られて思うように動けない。

 これは移動だけでも一苦労かもしれない。

 

「……まあ、進むしかないよね」


 僕は意を決して歩を進める。

 靴の中まで砂が侵入してきて気持ち悪い。環境が悪い!


コメント

・お前に許されたのは前進のみだ

・思考は後退してるけどな

・見るからに暑そうな格好だなおい


「あ、脱ぐの忘れてた」


 通りでめちゃくちゃ暑いと思ったんだよ。

 僕の格好は雪山重装備のままだった。これだからバカとか言われるんだろうけど、まあ極限状態だったらこういうこともあるよね! 

 というわけで納得。

 そろそろ進もうか。


 モコモコした何かを脱ぎ捨てて、いつもの格好に戻る。

 これでも暑いけど、素肌晒すのは危険とかどこかで聞いた気がするから我慢しようかな。


「れっつごー!」


コメント

・こんな輝かしい笑み浮かべてるけど、こいつ何回も死にかけてるんやで

・明らかにまともな精神性じゃない

・世迷相手にまともとか一般常識を求めるのは間違ってるからなw


 求めてよ。

 求めたら求められた分だけ期待を裏切るから!

 やっぱり人の予想とか期待通りに動くのはなんか違うんだよね。期待を裏切ってなんぼだと思うんだ。

 

 そんなわけで歩く。

 暑いし足は重いしで最悪だけど、レベルアップの成果が出ているのか、疲れ果てるとまではいかない。

 とはいえ、休憩所を見つけないと詰むと思うけどね。さすがに砂漠に野晒しは死ぬ運命しか見えない。


 ……うーん、こんなだだっ広いスペースで休憩所が見つかるのかな。


 何だかんだ二層連続休憩所が見つかってるから安心してる自分もいるけど、本来は見つかったらラッキー程度に考えておいた方が良いんだろうねぇ。


「先が文字通り見えない。いっそのこと何か起きてくれた方が解決しやすそうだよね」


コメント

・フラグやめーやw

・おめーがそういうこと言うとマジで何か起きそうなんよ

・《ARAGAMI》日本には言葉は言霊、という言葉があると聞く。摩訶不思議で未だ解明されていないダンジョンだ。あながち『フラグ』が本当にあるかもしれない

・《Sienna》そんなくだらないことに思考を働かせたくないわね

・フラグを証明しようとする世界二位

・世迷に限っては当てはまりそうで草


「やめてよね。確かに何か起きた方が都合は良いけど、危険な目に遭いたいとは思ってないから」


 問題提起? みたいなのがある方が、明確にすべきことが分かるじゃん。そっちの方がやりやすくない? 知らんけど。


 僕はひーひー暑さに耐えながら歩く。

 照りつける太陽。実はちょっとだけ砂漠に対する憧れがあったけど、それが一瞬にして消えたよね。

 

「太陽嫌いかも」


コメント

・急にスケールデカくて草

・多分太陽もお前のこと嫌いだよ


 ──とか言ったからかもしれない。

 ある意味予想通りだったから、僕は驚くことなく受け入れた。


 足元で鳴るという音。

 

 ポッカリと空く黒道。

 

 ヒュゥと耳元で鳴る音は、明らかに落ちていることが原因だった。

 物理的に。


「まあ、うん、テンプレだよね」


コメント

・どこの世界のテンプレなんだよ

・《ARAGAMI》落ちる世迷言葉を見ても平常心を保っていられるようになったのは、ある意味当然の結果だったのかもしれない

・いや、ねーよ


 


ーーーーー

今更ですが、出版レーベルが決まりました。


『講談社Kラノベブックス』様で書籍化、『マガポケ』様にてコミカライズが決定いたしました。

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