第49話 やったねぇぇ!498層だよぉぉ!
「なんだろう。階層ボスが消える度に気絶するのバグじゃないの? 何が起きたか全然分かってないけど」
僕は寒さに凍えながら起き上がる。
凍死してない、ってことはそこまで長い時間眠ってたわけじゃなさそうだけど。
コメント
・あ、起きた
・ピクリともしないから遂に死んだのかと
・バグじゃなくて仕様です
・草
・仕様で気絶させられる人間
・今回は凍死寸前だったしなw
「人の死に様で笑ってる君たちを見て安心する僕もなかなか終わってるかも」
主にいつもと変わってない、って点だけだけどね!
相変わらずリスナーはクズしかいない。
再三言ってる通り、まともな人は僕の配信を見ないけど。
「一先ず何が起きたわけ? ほら、早く説明ぷりーず!」
コメント
・何だこいつ起きた早々偉そうだな
・そのまま氷像になってろ
・見下される立場(物理的)で何見下してんの?
・まあ、そら下層にいますからね……w
「まともなアドバイスも寄越さないリスナーを敬うわけないじゃん。それならアラガミさんとかシエンナさんにへりくだるし」
コメント
・ユキカゼは?
リスナーは何を言ってるんだろ。
僕は小首をかしげながら満面の笑みで言った。
「ユキカゼさんは崇拝対象だよ、何言ってるの。そんなことも分からないなんて君たちは全く……」
コメント
・狂信者で草
・分かるわけないだろ常考
・《ユキカゼ》ひぇ
・崇拝されてる側が恐怖するの草
まあ、さすがに冗談だけどね。
崇拝というよりは、尊敬と感謝の念が強い。
ユキカゼさんの配信を見て探索者に憧れた節もあるし、退屈で仕方がなかった僕の日常を彩ったのは、間違いなくユキカゼさんの配信だ。
「さて、それよりも状況教えてくれない?」
幾ら着込んでるとはいえ寒いには寒い。
早く教えてくれないと凍死しちゃうよ? 君たちのせいになっちゃうよ?
コメント
・《ARAGAMI》話が進まなさそうだから私が説明するよ。簡単に言えば、あのトランスフォームスノーラビットを倒したスノーラビットが進化し、君をぶん殴って気絶させた。以上だ
・簡潔に説明すんの上手くなっててワロタ
・世界二位も成長するのか……
・成長ってよりかは退化だろ
「ふむふむ、なるほど? 進化なんてものがあるんだ」
魔物が進化する。
初耳だけど、こんな不思議にあふれるダンジョンじゃ何が起こっても違和感ないよね。
「じゃあ僕も進化する可能性がある、ってことだよね」
コメント
・ねーよ
・どんな怪物が産まれるんだか
・人間じゃない、って意味じゃ進化済みなんよ
・説明したんだから早く先進め
「相変わらず辛辣だなぁ」
僕はそうこぼしながら、前方に浮かぶ魔法陣に目を向ける。
そこで僕はあることに気づいた。
「あれ? そういえば僕、ボス倒してないけど転移ポータル出るんだね」
実際にとどめを刺したのはスノラビくんのはず。
正式にパーティ登録をしている探索者は、パーティ内の一人が倒せばポータルが出る……らしいけど、僕はご覧の通り永遠のソロプレイだし。
コメント
・確かに
・そういや何でだろ
・《Sienna》少しはダメージを与えているから、共同討伐者として認められたんじゃないかしら? 知らんけど
・適当で草
・世迷
・世迷で感染菌だったのか
「すぐさま人外扱いにするのやめてくれない? 終始僕のことをさァ……何だっけ。何扱いしてたっけ。忘れたから良いや」
コメント
・だからそんなこと言われんだよ
・良い加減扱いに慣れろ
・色んな意味含んでて草
まあ、忘れたってことは大したことじゃないんだよね。
喋ってないでさっさと転移ポータルに入ろ、っと。
と、その前に。
「なんか転がってるドロップアイテム拾っておこうかな」
グルリと辺りを見渡すと、拳大の黄色の魔石と虹色に光る飴。更には真っ黒な石が埋め込まれてるネックレスが落ちていた。
コメント
・お前が倒したわけじゃないのにな
・ハイエナ野郎で草
・乞食やんけ
「だって、このまま放置するなんて無駄でしかないじゃん。なら僕が有効活用してあげた方がアイテムくんも喜ぶと思うんだ」
コメント
・お前がアイテムを有効活用したことがあったか?
・アイテム「来るなァァァァァァァ!!」
・ドロップした鎧をマグマに投げ捨てたの憶えてるぞ
・無駄とかwww無駄ことしかしてないくせにwww
・いつにも増して口撃の火力高いなw
僕はリスナーのボロクソコメントを華麗に無視して、アイテム類を拾う。
コメント
・《ARAGAMI》岩の魔石か。あの大きさなら四十億円くらいか?
・《Sienna》岩の魔石って、資源的に使える事柄が少ないのよね。しょっぱ魔石とか。石が岩に変わっただけ、とか酷く詰られるのよ。あのクソ鑑定人が
・漏れてる漏れてる、殺気漏れてる
・それでも一生遊んで暮らせる額だけどなw
・まあ、普段ドロップする魔石は爪先くらいしかないし
へぇ、意外に安いんだね。
懐に兆単位の物があるから感覚おかしいのかもしれないけど。これ、僕脱出した瞬間に色んな人から金目当てで襲われそうな気がするんだけども。
「まあ、《アイテムボックス》にしまっておこ。問題は……コレだよね」
僕は虹色の飴を見つめる。
何で毎回見るからにレアっぽい外見にするわけ?
「こんな光ってたら食べたくなるじゃん」
コメント
・それは分からんw
・ゲーミング飴玉は食いたくねぇだろ
・その感覚が狂ってるんよ
「僕の勘が言ってるんだ。食べろ、ってね。正直この勘が当たったことは皆無に等しいけど僕は食べる。いただきます」
あ、美味し。
虹色のくせにブドウ味の飴なんだ。
「スキルの確認は後にして、次はこれ」
僕は見るからに怪しいネックレスを持ち上げる。
どこをどう見ても僕にはサッパリだし、モンスターを鑑定することしかできない欠陥スキルしか持ってない僕には、まさしく宝の持ち腐れ。
「どんな効果あるか分かんないしこれも《アイテムボックス》行きだね」
コメント
・なんかそのネックレス見てたら嫌な予感するんだよな
・分かる
・なんかやべぇ雰囲気っていうか
・《ユキカゼ》でもどこかで使う予感がする
「ユキカゼさんもこう言ってるし放置しておくよ」
そして、僕は次にスキルを確認して────
「じゃあ、次の階層へレッツゴー!」
出発前の確認は終えた。
僕は意気揚々と緑色のポータルに足を踏み入れる。
最早三回目ともなる転移特有の視界がグニャってなる現象は、何回味わっても慣れる気がしない。
そんな現象をやり過ごすこと数十秒。
視界の先には──
──見渡す限り砂! 砂! 砂!
「砂漠かぁ……」
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