第36話 やったねぇ!神機能だよぉ!
「僕、この通り、足が複雑骨折してグニャングニャンになってるんですけど、今からでも入れる保険ってありますか?」
コメント
・(あるわけ)ないです
・落ちて一言目がコレ
・情緒が終わってんな
散々な言われようだけど、これがそこそこ痛い。
でも、腰とか他は無事だし、両足の骨折だけで済んでるのは《落下耐性》のお陰だね。
落ちすぎていつ身についたのか分からないけど。
僕の唯一の防御が耐性系スキル。でも、そのスキルを得るためには結局痛い思いをしなきゃいけないという。本末転倒じゃない? 手段と目的が逆な気がする。
「復活」
サクッとポーションで治して、僕は辺りを見渡す。
落ちた地面はそれなりに硬くて、この空間も広い。
「畳が一、二、三…………八畳くらい?」
コメント
・そうやって数えるヤツあんまりいないぞ
・畳一枚の面積把握してるのなんなん?
・知識の偏りがすごい
・クレバスの下とは思えんくらい広いな
最初に落ちた時はクレバスかと思ったんだけど、コメントの言う通り、まるで人為的に作られた空間のように感じた。多分。
そして、薄暗い空間内に小さく光る魔法陣のようなものも発見できた。
「この形……見たことあるね。具体的に言えば5日前くらいに」
コメント
・転移魔法陣じゃないですかヤダー
・乗ってみ、飛ぶぞ(物理)
・草
・トラウマを掘り起こそうとしてるやつおるw
・世迷が世迷であるための原点
・《ユキカゼ》……ごめんなさい
・別の人のトラウマを引き起こしてて草
・最早責めるヤツおらんのよ
もうユキカゼさんの件には触れない。
無闇に掘り起こして何かユキカゼさんが言われるようなことがあったら嫌だし。
責める人は……たまーにいるけど、もう数えられるくらいに少ないね。あの時のユキカゼさんは今とキャラの乖離が激しいけど何かあったんだろうか。
「転移魔法陣かぁ……。一先ず乗ってみるか。多分、これ出口でしょ? 他に何もないし、罠ってことはないと思うんだ」
僕は咎めるようなコメントを一瞥した上で、魔法陣に足を踏みれた。
歪む視界。
僕の小さい脳みそから導き出した結論。
「──ここが休憩所だね」
僕は気づけば、さっき落ちた場所の近くに立っていた。
落ちた場所には、人二人分くらいの穴が空いている。ちらりと穴を覗くと黒々とした空間が広がっていて、それなりに高いことにさしもの僕もゾッとした。
多分、《落下耐性》なかったらペチャンコだったんじゃないかな?
「うわぁ……まさしく薄氷の上に立ってるじゃん、僕。トップレベルでダンジョンの悪意を感じてるよ」
コメント
・世迷が珍しく世迷い言を言ってないだと……?
・ヒントがそれなりに転がってたから、まあ……
・お前……成長できたのか!?
・自分で気づいて行動してないからノーカン
・これ、毎回落ちないと入れないんじゃね?w
「確かに!! 一々骨折しないと入れない!? 休憩させる気ないじゃん。文字通り骨が折れる……ってやかましいわ」
悲しく一人でノリツッコミをしながら地団駄を踏む。
休憩所って名前なのに、休憩させる前に骨折させるとか頭おかしいんじゃないの?
頭おかしいとか僕に言われたくないと思うけど、これは怒っていいレベルだと思う。
コメント
・499階層に来れるようなレベルなら落ちても怪我しねーんじゃね?
・それだ
・真理
・スキルやらレベルやらで無傷だろ、確かに
・捨て身と相性悪い休憩所だなw
・結局世迷が悪い
「世界は残酷だね。どうでもいいけど」
コメント
・どうでもいいのかよw
・悲観してんのかと思ったら堪えてなかったw
・そのメンタルはどこから来てるんだ……
別にメンタル強いわけじゃないけどね。
リスナーの言葉で一喜一憂したり、怒ってる時点で通常のメンタルだと思うんだ。
ただ、
「メンタル、ね。……生きてる世界に悲観したところでどうにもならないじゃん? 前にも言ったけど、嘆いたってどうにもならないし。達観とか、そんな領域にいないよ? 至ってるならこんなにアホじゃないよ。ま、今を生きる覚悟さえあれば、世の中そう捨てたもんじゃないと思うんだ」
そう言ってから僕は、垂直を意識して穴に飛び込んだ。
直立立ちで……こう、スッと。
「ひゃっはァァァ!!! ──痛ァァァッ!!」
膝が逝った。
コメント
・情緒
・ちょっと良い話だな、って思ったのに……
・世迷の言葉をまともに聞いたのが間違いだった
・さらっと紛れるフルネーム
・《Sienna》やっぱムカつくな
・《ARAGAMI》種類は違えど考え方は同じだ
・だから楽しいのか、世界2位
・そんな疑問氷解してほしくなかったぜベイベー……
サクッとポーションで復活。
アラガミさんと同種の考えかぁ……。僕はそこまで享楽主義者じゃないけどねぇ。どっちかというと俯瞰するより主観で体験したいし。
何事もやってみなきゃ分からないぜ、的精神で生きてるからね。
「ふわぁ、眠い」
そんなことを考えると、突如眠気が襲いかかってくる。
今日は特に色々なことがあり過ぎて疲れたかも。かなり時間が経ってるし、時間感覚も無事に消え失せたことで日も明るいけど眠い。
でも、このまま眠ったら低体温症で死にそう。
休憩所でも温度は変わらないし。
コメント
・《ユキカゼ》着替え一式を、「寝袋」って念じながら買ってみて
「さすがユキカゼさん。僕の危惧を理解してらっしゃる」
ショップ機能を開いて、着替え一式の購入ボタンに指を置いて「寝袋、寝袋、寝袋、お袋」と念じて買ってみると、
「本当に出てきた!!」
赤色の寝袋が空中から出てきた。
これ、コスパ最高じゃん。コミックスパフォーマンス?
コメント
・そんな神機能あったんか
・だから冬服一式も出たのか
・着替えって広義的認識すぎるだろw
・寝袋も……まあ、着替え
・絶対違うw
「まあ、いいや。みんなおやすみー」
僕は眠気に抗うことなく目を閉じた。
ーーー
骨折のみなので超ほのぼの回
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