第32話 やったねぇ!影だよぉ!

 僕は消し飛ばしたスノラビくんがいた場所に落ちていた緑色の魔石らしきものを拾う。


「何だっけ。変色魔石だっけ?」


コメント

・《Sienna》属性魔石じゃないの……。アホでもバカでも分かるように説明すると、変色魔石……アホが拾った白いのは純粋なエネルギー的すーぱーぱわー、を秘めてる。色のついた魔石はそれぞれ秘めてるエネルギーが違う。赤色だったら炎。緑色なら風属性ね。その大きさなら時価だけど、まあ、数千億かしら


「分かりやすい! シエンナさん、ありがと」

 

 僕はニコリと微笑んで感謝を伝える。


コメント

・《Sienna》別に説明マウント取りたかっただけだし

・こいつデレてね?

・アンチ発言は愛情の裏返しだった……!?

・チョロくて草

・説明のところどころに罵倒と皮肉が入ってるけどなw

・説明マウント取りたかったのは多分本当だなw

・《ARAGAMI》チッ

・お株奪われてキレてる世界2位

・なんだこいつら、思ったより人間してるな


 拳大ほどの魔石を《アイテムボックス》に入れながら、こんなものが数千億もするんだぁ、とどこか他人事のように考えていた。

 現金で手元にあるわけじゃないし、これ貴重です、高いです、って言われても実感が湧かないよね。


「純粋な魔石と変色魔石はエネルギーを利用して何かの開発をする、っていうのは聞いたけど属性魔石? は何に使うんだろ。食べるの?」


コメント

・いや、おめーじゃあるまいし……

・食べるは草

・《ARAGAMI》説明しようか。属性魔石の利用方法は多岐にわたるが、魔石に内包している力を利用する。つまり、熱や、風、冷気など自然現象を仮とはいえ、人為的に発生させることが可能だ。悪意に満ちているならばそれ相応の使い方をされるが、ほとんどは発電や開発に使われている

・《Sienna》説明するわ。発電……風属性なら風力発電に使われるわね。ゴウンゴウンプロペラが回ってるやつよ。風が無くても魔石があれば回せるのよ。後は、機械類……飛空艇のエネルギー回路にも使われているわ。魔石が大きければ大きい程エネルギー量は多いわ。その大きさなら一ヶ月は飛空艇を運行できるわね


「うん、シエンナさんの勝ちだね。僕に分かるように例えを混じえて話してる。言葉の節々も、アラガミさんは小難しくて説明が入ってこない。その分、シエンナさんは僕が理解できる最適解を選んで話してる。説明はどれだけ難しい言葉で飾ったって、対象が理解できなきゃ意味がないんだよ」


 なるほどねぇ。

 世界中の資源が枯渇してる、ってのはニュースとかで結構な頻度でやってたし、属性魔石がその代わりを担ってたのかな? よく分かんないけど。


コメント

・批評すんなw

・それっぽいこと言ってるけどおめーの理解力が無いだけじゃねぇかw

・《Sienna》よし

・《ARAGAMI》シエンナ……。君の装備品のメンテナンスを委託してるのはどこのギルドだったか憶えてるかい? 確か世界2位が所属しているギルドのはずだったが?

・《Sienna》脅して困るのあんたでしょう

・人の配信枠でレスバすんなよw

・世界2位が大人気ねぇ……


「アラガミさん。僕になっちゃうよ?」


コメント

・《ARAGAMI》ごめんなさい

・《Sienna》草

・圧 倒 的 説 得 力

・自虐の使い方ってこうするんやな……

・あの世界2位が謝った……!?


 すぐ謝られるのも癪だなぁ……。

 ともかく、エネルギー問題とかお金的なアレは売らないうちはあぶく銭だしどうでもいいかな。

 僕一人でエネルギー問題を解決できるなら国は苦心してないし、世界中がバタバタしてない。


 ……でも飛空艇一ヶ月運行って結構すごくない?

 

「ま、魔石が食べられないなら良いや。今の僕にとっては生活を充実させれないものはゴミと同価値だし」


コメント

・《ARAGAMI》属性魔石なら、魔力を込めれば……あぁ、いや、何でもない

・あ、魔法使えないもんな、そういえばw

・使えるやつの方が少ない定期


 魔法とか興味ないかな。

 暮らしを便利にし過ぎたら人は堕落する、的なことをどっかの偉い人が言ってたし何でもかんでも力任せにしていたら、いざそれを失った時に何にもできなくなるからね!


 ま、僕の《一魂集中》があればどんな敵でも一発で粉砕できるから関係ないけど!


「さっさと休憩所を発見しに行こうか」


 立ち止まってるのも寒い。

 僕の右腕が復活するまでの時間も分からない以上、魔物とのエンカウントはできるだけ避けたい。

 

 そんなわけで、僕は雪道を歩き始めた。

 吹雪で視界は確保できないし、今自分がどこにいて、このフィールドはどれくらいの大きさなのか……とかも全て分からないから地図も作れやしない。

 

「視覚封じられるのは大変だなぁ。四肢くらいなら問題ないのに」


コメント

・四 肢 な ら 問 題 な い

・何かを失うことが問題なの分かるぅ??

・失うことに慣れると人は心の一部分を削られる

・知能を悪魔に捧げてるから問題なし

・草

・草


 えぇ……。

 何も捧げてない素でコレなんだけど。

 つまり僕は天然……ってコトォ!? ……いや、流石に違うか。天然物のアホなのは自覚してるけど、鈍感でもないし。むしろ変なことばっかに気づくから問題ある。

 

「さぁて、着替え一式が有能じゃなかったら確実に凍死してたね。本当に寒い」


 モンスターがいつ現れるかも分からないし、油断は一切できない。

 僕の《一魂集中》の残機は三。

 つまり、三体以上のモンスターがやってきた場合、四肢を全て失った状態で紙防御の僕が君臨するわけだ。


 終わりじゃん。


「雪っていったら洞窟だよね、やっぱり。休憩所の形的にそれが一番ありそうじゃない? 知らんけど」


コメント

・また思考を放棄した

・便利すぎる知らんけどw

・説明責任と正誤責任を放棄できる最高の言葉

・雪山の麓とかないの?


「視界が遮られてるから雪山がどこにあるのかも分からないんだよね。手探り状態だなぁ。影とかシルエットなら雪が弱まった時にギリギリ見えるけど」


 一定の吹雪じゃないってことは、この雪が止む可能性もあるってことでしょ? 多分。ってことは、その時を狙って一気に探すのもアリだけど、その場合は低体温症で冥界にレッツゴーだから、そう簡単に選べない。


 ウンウン、と唸りながら考える僕。

 勿論、ちっとも良い案が浮かぶはずもなく諦めて歩き出した。


コメント

・マグマエリアも結構広かったし、同じなら視界不良のこっちの方が難しいわな 

・どこにモンスター潜んでるのかも分からないし


 だよねぇ。

 なんてことを話しながら歩くこと十分。

 

 ──吹雪が弱まった。



 と、同時に前方に現れたのは──首の長い恐竜らしきもののシルエット。

 とてつもなくデカい。狼くんなんか鼻くそに見えるほどに大きかった。


 僕はじんわりと冷や汗をかく。

 厳しい視線をシルエットに向けて、僕は呟いた。



「ここが本当に福井県だったなんて……!!」


コメント

・※福井駅前には恐竜のモニュメントが設置されていますが、今回の件とは無関係です。無理に名前出して貶めようとするのは止めてください。追放しますよ

・草

・解説と罵倒を同時に……!?

・追放とはwww


「あ、はい、すみません」


 


ーーー

説明回とほのぼの回 

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