第23話 やったね!安定の中華鍋だよ!

 ある意味予想していた通りになったけど、マグマで窒息作戦は頓挫した。単純なリサーチ不足の結果かもしれないけど。

 あんなに底が浅いなんて思わないじゃん。

 

「さあ、第二フェーズだ。リスナー。案ちょうだい」


コメント

・こいつさては何も考えてなかったな?

・自信満々に言っておいて無策とかw

・まともな案を俺たちが出したこともないのに頼るとかバカなの?


「まともな案を出したことない自覚あるなら出してよ!」


 確かに今まで情報とか打開策を打ち出してくれたのは、ユキカゼさんを始めとする上位探索者たち。

 一般リスナーくん頑張ってよ。


 ひたすら走りながらスマホに向かって叫ぶ僕。

 実のところ……というか見て分かる通り余裕はない。狼くんがかなり弱体化されていることが分かっても、それでも僕の遥か上の強さなんだ。

 しぶとく生き残れてるのも思考が鈍っているだけ。


「見て見て。僕はこの通り満身創痍で、その上これ以上の策は全く思いつかない。ほら、無知蒙昧な僕を救ってくれないとさ。死んじゃうよ。マジで。良いの? 切り取り師さんとか収益無くなるよ? 酒のつまみが無くなっちゃうよ?」


 僕はグッと拳を握って続ける。


「いけるいけるいけるッ!! 僕からもっと搾取できるんだよ!! そのチャンスをふいにするなんて勿体ない!! あー、勿体ないッ!! 無限の鉱脈を君たちは捨てようとしているんだよ!? ほら、搾取してみようよおおお!! 搾りカスになるまで搾取するのが現代でしょ!?」


コメント

・恥も外聞もプライドも何もかもねぇw

・自分のピンチを捨て置いて俺の心配するとは人間の鑑

・なわけw

・自分の安全のために他を脅してるだけなんだよなぁw

・自分で言うのか連発

・草

・搾取は草

・現代の闇を常識のように語るな

・こいつやべぇw

・言葉も出ねぇわw

・世迷い言とも言い切れない情けない言葉を聞いた


 実際僕が死んで困る人は一定数いる。

 心情的な問題じゃなくて、お金的に。僕が今現在、莫大な利益を生み出しつつあることは、リスナーのコメントから何となく分かる。


 最早僕の配信は、一般人にも広く知れ渡っているコンテンツだ。果たして死んで困るのは僕? それとも……?

 


 まあ、そんなのどうでも良くて、普通に助けて欲しいだけなんだよね!! ピンチです!! ずっと!



「助けてええええええ!!!」


 僕は泣くことも悲痛に歪むこともなく、至って真面目な顔で叫んだ。どうにもできないなら後はよろしく、の叫びだ。


コメント

・叫ぶ表情じゃない

・なぜこいつは一定の余裕かあるんだ……w

・流石の世迷もネタ切れか

・しゃーねーな

・解析班、そろそろ割り出せたろ?

・《ARAGAMI》待たせたね。動画解析が済んだよ。文献との照合が思いの外時間がかかってね。協力者の存在もあって速く済んだ方だが

・解析してたのお前かよ

・適当に格好つけようと解析班って言ったのに

・助ける気微塵もなくて草


「アラガミさぁぁぁん!!!!」


 やはり救世主はいた!!

 協力者? アラガミさんのギルドの人かな?

 何はともあれ、これから僕の反撃ターンの開始というわけだね。アラガミさんの情報は九割正しい。

 狼くんのテリトリー内にモンスターはいない、という情報。

 あれも、休憩所内がテリトリー外ならば、その予想は当たっていたことになる。……うん、微妙に外してるような気がしないでもないけどさ。


「靴でも舐めるんで教えてください!」


コメント

・元から無いプライドをマイナスにする男

・《ARAGAMI》強制はしないがギルドに入って欲しいところだ

・《ARAGAMI》情報だが、君が鑑定した時に名が『スコル』だった。火を纏う狼。この情報ならば、一定の知識を持つ者は、これが神話に登場する生き物だということは理解できるだろう。しかし、確たる証拠はない。神話での撃退方法が現実に通用するとは限らないからだ。ゆえに他のダンジョンのケースや、神話の文献を解析することにした。すると、インドダンジョンの50階層ボスが不朽とされる神話の生物だった。しかし、インドダンジョンは8年前に攻略されている。どう討伐したのか。当時の攻略者に話を聞くのは骨が折れたが、何とかコンタクトを取ることができてね。そこで神話と同等の方法で討伐することができた、ということが分かったんだ。本題だが、スコルはラグナロク時に太陽を飲み込む神話の生物ということが分かった。それゆえ、当時の撃退方法であった鍋でぶっ叩く。それが攻略方法だと思う。多分

・最後の多分で逃げるな


「長い!! 僕に分かるように一行で!!」


コメント

・《ARAGAMI》神話の怪物。鍋でぶっ叩けばいける。多分


「把握しました!!」


コメント

・草

・草

・草


 なるほどね。

 非常に簡潔で分かりやすい。


「やっぱり君だったんだね。──中華鍋ッ!」


 いつだって僕を守ってくれた。

 熱さから。悲劇から。飢えから。


 その身を呈してずっと僕を守ってくれていたんだ。

 消耗品だ、なんだって一々買ってごめん。

 

 これからは一つ一つ大切にするよ。

 君が僕を守ってくれたように、今度は僕が君を守るよ。





 ──さて。








「よし、いっぱい買って投げるか」



コメント

・あれ、なんかしんみりした空気流れてる?

・どこにも感動要素ねぇよw

・倒せるのか、中華鍋で

・ばっか、今までどれだけ役に立ってきてると思ってんだ

・最早世迷の本体が中華鍋まである

・万能武器だな。料理にも使えるし

・──逆だったかもしれねぇ

・草

・草




ーーー

次回、世迷の反撃が始まる……!?

やはり中華鍋……!中華鍋は世界をも救う……っ!

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