第18話 やったね!IQが下がったよ!

「さぁて、お腹空いたからご飯食べよっか」


コメント

・前、前

・狼くんガン見しとるて

・切り替え早すぎて草


 無事に休憩所に辿り着くことができた僕は無敵だ。

 過信しているわけではないけども、狼くんも無理に突破することはなくなったし、まあ安全なんだろうと思っている。


 僕はそのままショップで『食糧一日分』を購入。

 厳密に言えば、一日分というかと一食分なんだけどそこの辺りは気にしないでいこうと思う。


「ふぅ……相変わらず作るものは勝手に決められるんだね」


 落ちてきたのは『餃子の皮』とパッケージに記載された商品と、豚ひき肉、ニラ、キャベツ、すりおろしニンニク。

 それとホカホカのご飯。


コメント

・餃子やんけw

・商品そのまま出てきて良いのか……www

・相変わらずの炊きたてご飯

・ご飯だけ良心的な設定なのウケる

・早く作んなきゃ冷めるけどなw


「気分とか関係なく脈絡もなく料理を作らせるよね。確かに餃子は好きだよ? 羽つきが特に」


コメント

・お前の好みは聞いちゃいねーんだよ

・飯テロやめろ

・さっさと作れよ

 

「急に辛辣だなぁ……。情緒不安定すぎない? 落ち着くことと、人に対する思いやりを学ぼっか」


 僕はリスナーへの愛を込めてニコリと笑って言った。


コメント

・おめーに言われたかねぇよ!!!一番!!

・ブーメランで首切られたいんか?

・落ち着くとかwwwwwwお前がwwwwwwwww

・情緒に関しては一番人のこと言えないんよ

・人の振り見て我が振り直せの極地がよォ

・《Sienna》お前が言うのかよ


 この3日感の間にどんどん扱いが雑になっていくなぁ。

 落差、っていうか感情のジェットコースターに関してはリスナーも大概酷いと思うんだ。

 シエンナさんに関してはずっと口調が迷子じゃない?


 僕は非常識なりに常識人っぽく振る舞ってるつもりなんだよ? ……ごめん、嘘だった。素で狂ってるから常識のじょの字も知らないんだ。

 

「まあまあ、平和が一番だよ、平和が。最近は色々と殺伐してるし一回落ち着いて考えてみようよ。…………クソ狼がァ! いつまで見とんじゃゴラァ!!」


コメント

・いや、情緒

・前言撤回が光速

・理不尽すぎてwww

・狼「えぇ、僕っすか?」

・これには狼くんも苦笑い

・きょとん、ってしてるけどな

・フラグ回収するの早くない?

・急に狂うのやめてもろてw

・最初から狂ってるから問題はないな、うん

・《ARAGAMI》ここまで落ち着きのない人間を知らないね


「いや、さすがに冗談だよ?」


 今のを本気にされたら僕の立場がもっと危うくなる。

 ……うん、でも狼くんに怒鳴ることに関しては前科あるし本気にされても仕方ないかな。


 でも、滅茶苦茶強そうな外見しておいてワンパターンの攻撃しか仕掛けてこないのが悪いと思うんだ。


「この狼くん配信映えしないからなぁ……。そろそろクビかな」


コメント

・草

・草

・獲物を追っていたはずがリストラされる狼くん

・理不尽の権化で草

・被食者側に選択権あるんかw


「ほら、やっぱり余裕がない今、切れるクビは切っておいた方が良いと思うんだ」


コメント

・切 れ る ク ビ な ら な

・絵空事定期

・切ってから言えよw


 本当にね。

 僕だってサッサと切って帰りたいんだけど。できるなら、のお話だよねぇ。


「さて」


 そこで僕は話を打ち切って、材料を中華鍋に入れて歩き出す。ここじゃ調理ができないし、いつまでも悔しそうな狼くんを眺めていたい気持ちはあるけど仕方ない。


 地味に調理場(仮)まで遠いんだよなぁ……。

 

 僕は洞窟の長さに辟易しながら歩みを進めた。




☆☆☆


「ご馳走さまでした。本当は狼くんの目の前で煽りながら食べてやろう、って思ってたんだけど、そこまで調子に乗ったらしっぺ返しが怖いからやめといた」


コメント

・世迷が学習した、だと……!?

・こいつが成長することはあったのか……?幻?

・いや、行動に移してないだけで思考は狂ってるんやで

・煽り性能だけやたらと高いよなw

・しっぺ返しなんていつも食らってるだろ。慣れろよ


「うん、腕が取れるのは僕も慣れた。日常茶飯事と言っても過言じゃないよね」


 僕の脳内辞書に『腕は消耗品』って言葉が刻まれたもんね。今のところ足は失ってないから四肢というか二肢?

 足も慣れておくべきかな……? いや、その思考はおかしい。多分。……多分?


コメント

・慣れたらあかんのよw

・着々と人間を辞めてらっしゃるw

・《ユキカゼ》逞しい……

・流石のユキカゼもドン引き

・そら(四肢チェックなんてアホなことやってたら)そうよ

・状況が状況だから仕方ないけど自分から危険に首突っ込んでる事が原因の8割だからな??

・お前のクビの方が危ないんよ

・クビ賭けたデッドレースすな


「引かないで、ユキカゼさん!」


 僕の心のオアシスがいなくなったらどうなっちゃうのさ。


「もっと狂っちゃうよ!?」


コメント

・ユキカゼ何とかしろ

・ユキカゼ、お前……いや、貴方様は必要でござる

・これ以上狂うことあんの……?

・ユキカゼ!最初のネットに慣れた感じを出せよ!!

・草生やしてたお前はどこいった!!

・《ユキカゼ》えぇ……?


 僕の初期勢がユキカゼさんを励ましていた。

 うん、仲良くなったようで何よりだぁ!

 

 困惑しているユキカゼさんを尻目に、僕は呑気にそんなことを考えていた。


 と、同時にふと僕は漂ってきた汗の臭いによって、あることに気がつく。


「そういえば僕、風呂入ってなくない……? 三日間も風呂無しとか衛生最悪じゃん。日本に住んでた弊害が……」


コメント

・どうでもよくね?(鼻をホジホジ)

・お前以外いないんだし気にしなくてもええやんw

・でぇじょうぶだ。病気になってぇもぽーしょんがある

・やはりポーションは全てを解決する……!


 いいよね、いつでも風呂に入れる君たちはさァ。

 ダンジョンに入る前の僕は、必ず一日に二回は風呂に入ってた。朝はシャワーで、夜は湯船に浸かって。

 最近のゴタゴタですっかり忘れていたけれど、元来の僕はそこそこの綺麗好きなんだ。


 うぅむ、気づいたらお風呂に入りたくなってきた。


「両腕はさ、ポーションで新しく生え変わった腕だから綺麗だし……」


コメント

・生 え 変 わ っ た

・乳歯の感覚で話すな

・腕は永久歯みたいなもんなんよ

・これだから腕を使い潰す奴は……

・綺麗なのか、それはw


 衣類をショップで買って、それを手ぬぐい代わりにしてお湯で体を拭く。これが一番の安牌なんだろうけど、疲れ切った体には湯船でお風呂、なんて固定観念があるんだよねぇ……。


「うーん、何とかここにあるもので湯船を作ってお風呂に入る方法を模索……」


 はっ、分かった。

 僕は指をパチンと鳴らして言った。


「ポーション飲みながらマグマに入れば良いのでは……?」


コメント

・はい、バカ

・一気にIQ下がってんやんw

・なに閃いたみたいな顔してんの?

・体張った芸人も今時そこまではしないぞ

・体張る、じゃなくて命張ってんのよ

・ポーションの供給が追いつかないだろw

・溶けるお前は見たくないぞ


「ダメかぁ」


 リスナーの徹底的な否定で僕は諦めることにした。

 お風呂は諦めないからね!!



 


ーーーー

ほのぼの回


 

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