第13話 やったね!何にも決まらないよ!

「いやはや、面白い。やること為すこと全てが裏目に出る、持って生まれたエンターテイナーの天運。おつむが弱いのも実に良いエッセンスだ」


「副長。黙ってください。気が散ります」


「君もそう思わないか? 全世界の注目を浴びているというのに醜態を晒して晒して晒す。穴があったら入りたい、だったかな? 私だったら死んでるよ」


「副長。煩いです。動画の解析中です」


「やはり彼は生き残れたら私のギルドに来るべきだ。ここは生真面目で鉄仮面な冷酷非情な実力者しかいない。彼のような存在がギャグの者がいれば、きっと私たちにとって良い風が吹くことに違いない」


「副長。黙れ」


「ハイ」


 ちゃらんぽらんで隊長は任せられない、と副長の座に就いた金髪イケメンの世界2位とその秘書の会話があったりなかったり。




☆☆☆


「おはよう。デッド・オア・アライブも三日目だね」


コメント

・自分で言うのかw

・もう昼だぞ

・気持ち良く寝てやがって……


 ふわぁ、と欠伸を一つ。

 水を買って顔を洗ったり、と最低限の身だしなみを整える。すっぴんがどうのこうの、というわけではなく、普通に目糞付いてたら恥ずかしいじゃん。

 

 昨日は……というか今しばらく散々な目に遭ってるわけだけど、一向に希望が見えないのは誰のせいなんだ。……僕だ。

 

「寝たらスッキリしたけど、スッキリしたせいで絶望が認識できるようになった」


コメント

・紙装甲さんチッスチッス

・思考放棄するから……

・もう諦めれば?

・全部お前が悪いんだよなぁ

・自分の手で自分を絞め殺そうとしてるからなw

・ある意味最強のドM

・被虐趣味超えて欠損趣味で草


「いや、好きで腕消費してないから! ピンチの時に何を犠牲にするか、って時に仕方なくポーションで治る四肢を差し出してるだけだよ?」


 それも嫌だけどね!

 散々な言われようだ。苦痛耐性があっても痛いのは嫌だし、熱耐性があっても溶けるのは嫌だよ。

 嫌じゃなくなった時は多分人間辞めてる。


コメント

・犠牲の優先順位が四肢

・スナック感覚で腕消費すな

・熱耐性付けるために嬉々としてマグマに腕突っ込んだのどちらさんでしたっけ……?

・あーあ、ドMが露呈しちゃった


「良いよ、もうドMで。我慢できてる時点で才能ありそうだし。……ドMの才能ってなに? ニュアンスがすでにもう気持ち悪いんだけど」


 そういう趣味はないからね??

 というか朝っぱらから何でこんな生産性のない話をしなくちゃならんのだ。


「それより! とりあえず今日はレベルアップの恩恵を確認しておこうかな。そんなに変わった気はしないんだけど、ジャンプして飛びすぎて落下死とか笑えないし」

 

 力が……うおおおぉ! とかはない。

 何か内に秘めるエネルギー的な何かが漲っているのは感じていても、劇的に自覚できるくらいに変わったことはないんだよね。


コメント

・いや、それはないだろw

・レベルアップして力と防御は上がるけど、他はそんなに変わらないからなぁ

・《ユキカゼ》一番の恩恵は動体視力が良くなること。レベル50なら銃弾をギリギリ目視できるライン。レベルアップして上昇するのはモンスターへの特攻であって、身体能力は付随的なものにすぎない

・充分すごくて草

・ギリギリなのかw


「あ、確かに」


 ユキカゼさんのコメントはまさに芯をついていた。

 高レベル探索者……例えばユキカゼさんが、モンスターをバッサバッサと切り裂く光景は見たことあった。

 でも、身体能力をフルに生かした動きじゃなかった。


 僕からじゃ速すぎて見えない攻撃を、受け流して避けて隙を突いて斬る。身体能力が上がっている、というよりは反応速度が上昇している。

 でも、攻撃力は確かに上がってるんだと思う。じゃなきゃ硬そうなゴーレム型のモンスターを剣で切り裂くことなんて出来ないし。

 レベルアップしたから倒せるわけじゃない。

 技術がないと成せないことだ。


 僕に今求められてるのは、力じゃなくて技術。


「そっか。じゃあ僕がするべきなのは技術の研鑽……!」


コメント 

・《ユキカゼ》でもここまでレベル差あったら小手先の技術じゃ通用しない

・裏切られてて草

・決意した瞬間に意見翻されとるwww

・草


「ユキカゼさんん!? もうちょっと希望持たせて欲しかったよ……。やーでも剣の性能的にも通用しないもんね」


 安物のショートソードじゃ傷一つ付けられないのがオチだ。


「うーん、リスナー何とかして」


コメント

・もっと自分で考えろよ

・お前の頭脳で何とかするんや!


 頭脳……頭脳?

 ふふふ……





「えっと、あの、さ。──何で僕に頭脳戦期待するの?」


コメント

・自分で言うのかよwww

・諦めんなw

・いや、草

・前科複数w

・確かにそうだけども!


 僕が今までどれだけ引っ掛かってきたと思ってるんだ。

 考える時は考えるよ、そりゃ。だって人間だもん。


 でも、不意に思考が停止して体が勝手に動いてしまう。多分ただのバカなんだと思うよ。自覚しても治せない。やめられないし止まらないんだ……。


「僕の浅はかさを皆知ってるよね?」


コメント

・うん

・それはもうたっぷりと


 僕はニコリと笑って言う。


「じゃあ頭脳なんて言葉は出ないはずだよね」


コメント

・え、待って何でキレてるの?wwwwww

・意味わからんwww

・思考回路が……!理解できねぇ……!

・草

・《Sienna》こいつやべぇな

・口調が崩れてる6位……

・草しか生えん


 キレてるのは冗談だけど、本当に僕に頭脳戦だけは期待しないで欲しいところ。努力はするよ? 本当だよ?


 実際僕は知恵を借りて、素直にそれを落とし込むことはできる。適応力はそれなりに高いんじゃないかな?

 

 でも……自分で考えられない……っ!

 圧倒的不利……! 産み出すことへの適性の無さ……!


 いや、考えれるよ? ただそれがうまく行かないだけ。


 判断はできるけど!

 最終判断だけは僕がするけど!





「さて。どうするリスナー。僕の命は君たちが握ってるよ」


コメント

・何でこんな不敵な笑みを浮かべてられんの?

・おかしいって

・さらっと責任押し付けてない?

・ちがう、そうじゃない


「大丈夫。判断するのは僕だから。例えそれでご臨終しても恨まないし、責任は僕にある」


コメント

・そこだけ潔いんだよな

・憎めねぇ……w

・でも言ってること「何とかしろ。僕を殺したいの?」なんだよなw

・クズで草


 




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