第6話 やったね!ゾンビ特攻を覚えたよ!
「ギャァァァ!! 僕の腕がァァァ……あ、生えてきた」
コメント
・いや、草
・情緒大丈夫そ?
・レーティングかかったから死んだかと思ったらバリバリ元気やったw
・あ、生えてきたは草
・四肢欠損おめでと!
・《ARAGAMI》すごいね、君。うん、色々と
痛いのは一瞬だけで、神経まで完全に焼き尽くされたからか、思考する余裕まであった。
ジュッ……! って音がした時は終わったと思ったよ、正直。
そんなわけでポーションごっくん。
期待を裏切ることなく腕が……こう……ニョキッと生えた。
なんか筋繊維から生えるとか気持ち悪い感じでは全然なくて……新しい腕がそのまま生えてくるみたいな? いや、それはそれで気持ち悪いじゃん。まあいいや。
こうしてリスナーの下馬評を覆してやったわけだが、依然としてピンチなことは変わってない。
「リスナーァァ! ハァッ、楽しんでるの許さないからなァァ!」
とにかく僕は叫ぶ。
リスナーの大半が、ぬくぬくした家の中で笑いながらこれを見てる姿を思い描いたらムカムカしてきた。
僕が大変な目に遭っているというのに。許せん。
「二本目えええ!!」
僕は《アイテムボックス》からポーションを取り出して再び口に含む。
あ〜、効くんじゃ〜。
……脳がやられてるのか変な怪電波が飛んできたな。
ともかくとして!
狼は若干「なぜ?」って感じで戸惑いつつも追いかけてきている。相変わらず手加減しているが、油断すればパクリと一撃。
その光景が目に浮かんで、僕は思わずゴクリとポーションを飲んでしまった。
いや、何やってんの僕。
「どうにかする方法ない!? 教えてリスナー! 今度こそ!」
僕は再び望みを賭けて叫ぶ。
時間が空いたし少しはまともな案が思いついてくれると嬉しい。
コメント
・あー、どうしようもないんじゃね?
・一か八か素手でタイマン
・↑ただでさえピンチなのに縛りプレイするの草
・気合いで頑張る
「役に立たないなァァァァァァッ!!」
諦めるなよ! そこで!
もっとあるじゃん……ほら、起死回生の一手がさァ!
僕は今思考能力に意識を割く余裕がないの!
コメント
・薄氷の上で漫才すんな
・実は余裕説を唱えたい
・《ユキカゼ》先程逃げてる最中に洞窟っぽいの見つけた。今で言う右方向
・《ARAGAMI》僕も見たよ。休憩所っぽいね。そこまで頑張って走れれば生き残る確率は上がるだろう
「洞窟!? 本当に!? ユキカゼさん、アラガミさん、ありがとう!! ……ほら見たかァァァ! これがリスナーのあるべき姿だァ! 人の不幸見て笑ってるアホは見習いなさい!!! ハァハァ……」
コメント
・はー、キレたわ
・そんなこと言っちゃって良いんですか?
・地上波だぞ、自重しろ
・ワイら助言しないけど……良いの?
・敵増やしてこの先生き残れるんですかねぇ……
「ごめんなさいッ!」
コメント
・鮮やかな掌返し
・即堕ち2コマで草
・謝れて偉い
いや、よく考えればまともな助言貰ってなくない!?
ノイズにしかなってない気が……きっとこれから素晴らしい助言をしてくれるのを待とう。
「というかポーションって……ハァ、体力も回復してくれるんだね!」
一本目を飲んだ際に体の疲れまで消えた。
傷だけじゃなく体力まで回復してくれるなんて、素晴らしい優れものだね。一本10万円なのが安く見える。
コメント
・はえー、そうなんか
・【速報】無限シャトルラン決定
・一応終わりは見えたから!多分
・ただの洞窟エンドに一票
「そういうフラグ建てるのやめて!?」
「ギャゥッ!」
「いってえええええええぇぇ!!」
狼の気配が近づいたかと思えば僕の左腕が宙を舞っていた。
それが狼の爪によって斬り裂かれたことは、遅れた痛みが生じてから気がついたことだ。
焼けるように痛くて、熱くて。
痛い……痛い……痛いな!? 思ったよりッ!
でも、燃やされる痛みを味わった後だからか、思考能力が失われる最悪の事態は避けることができた。
情けない悲鳴を上げながら僕は《アイテムボックス》からポーションを右手で取り出し、曲芸染みた動きで飲んだ。
「復活ッ!」
コメント
・雑技団出身なん?w
・明らかにポーションの飲み方が気持ち悪い
・アイテムボックスから片手で取り出して……瓶を親指で外して……前方向にぶん投げて……落下地点に素早く入って……飲む
・……あれ、いらない動きが幾つか……
・腕吹き飛ばされたのによう諦めんなぁw
・何で痛みに耐えられるん?w
・やってることゾンビ特攻やんけ
「混乱してたの!! そのまま飲もうにも片手失って体のバランスが取れないしあれが一番効率良かったんだって!」
言い訳しながら復活した左腕を使って、ポーションを口に含む。すでに3本……4本? くらい飲んでいる。
僕は気合いで走り回りながらユキカゼさんの言っていた洞窟の場所を目を凝らして探す。
「ふぁふぇか!(あれか!)」
僕は岩で出来た山の麓にポッカリ穴の空いた場所を見つけることができた。紛れもなく怪しい。
穴の形が綺麗すぎる。
まるで人力で作り上げたような違和感。
コメント
・おぉ、マジで生き残れるかもしれねぇやんwww
・盛り上がってきたァ!
・頑張れェ!
・《ユキカゼ》耐えてくれ
・《ARAGAMI》興味深いね
そんなコメントも見ることなく、僕は一心不乱に足を動かす。
最早熱いとか痛いとかどうでもいい。
生き残れる唯一の道を目指して僕は希望に向かって走る。
油断など一切ない。
後ろ手に振り返り、狼の若干焦った表情を見た僕は、狼が僕の希望を察したことになる。
その証拠に足を早めて距離を詰めてくる。
洞窟まで残り20m。
狼が僕に牙を届かせるまで残り10m。
これだけ焦っていても手加減はしている。
その気になれば一瞬で詰めれる距離をわざわざ四本脚で追いかけてきているのだ。
唸れ僕の貧弱な筋肉。
届かせろ天運。
──刹那、僕の体を余裕で埋め尽くす程の火球が後ろに迫ってきた。
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