第28話 三人の家へ家庭訪問
戸田も日本に連れて帰った後は恒例のお泊まりタイム。本日は二段ベッドを追加して部屋に設置した。٠٠٠流石に狭いな。
その日は時間も遅かったのでみんな直ぐに眠りについていた。翌朝、朝食後に各自の家へと送っていった。三人には演技スキルを習得してもらったし、警察や報道関係は大丈夫だろう。
三人共とある事情があったので、俺から親御さんに説明することになった。家庭訪問かっての!
みんな家族が揃ってる時間がいいということで、まずは福山の家からになった。
福山の家族に異世界のアレコレを説明して、彼女の召喚する魔物の説明をした。証拠とばかりに福山が召喚すると、大きな黒い狼が現れた。
「この子がキューちゃんよ。可愛いでしょ?」
家族は絶句していたが、福山は嬉しそうに頭を撫でてたよ。てか、キューちゃんって狼に名付けるのはどうかと思うけど。
あれやこれやで話が終わったのが一時間後だった。要約すると、娘を救ってくれたのだから異世界関連の秘密は守るよって感じで終わった。
感謝の言葉を受け取り、次はお隣の野村さん家へと移動する。何を隠そう、二人は隣同士の幼馴染みなのだ。更にお互いの部屋の窓から往き来できるそうだ。
ケッ!羨ましくなんかねーからな!
野村家と福山家はツーカーの仲らしく、なら秘密事も共有しましょってことでお話完了。ここでも息子を救ってくれてありがとうって流れで話は終わりましたとさ。
家族間で仲良く互いの家を行き来する関係なので、ここでもキューちゃんの説明をしておいたよ。あ、説明する時は福山一家をお呼びしてるからね。その方がスムーズだから。
お昼をどうかと誘われたけど、まだ用事があると断って家に帰った。
「ただいまー」
「おかえり、駆。お昼は食べるかい?」
「今日は食べてくよ。何か変わったことあった?」
「う~ん?特にないねぇ。学校からも何も無いしねぇ。ところでクラスの子達は大丈夫だったかい?」
「まだ大丈夫だよ。けどこの先はどうなるか解らないけどね」
母さんと雑談しながら昼飯を食べた。その後は夕方まで色々としながら時間を潰した。久しぶりに砂漠に行って召喚魔法を使ったり、次の行き先を調べたりした。
夕方になったので戸田の家に行くことにした。戸田の家に着くと、家の中から騒がしい声が聴こえてきた。
インターフォンを鳴らして、「赤城です」と告げると中から戸田が出てきた。
「おう、赤城!よく来てくれたな。さ、入ってくれよ」
「わかった。お邪魔します」
リビングに案内されると、戸田の親兄弟が揃っていた。人の良さそうな御両親に険しい表情の兄と姉と思われる二人に、無邪気そうな弟と妹と思われる子供がいた。戸田を含めて合計で七人家族だ。
すげぇ人数の家族だった。五人兄弟ってちょっと凄いな!
「こいつが俺達を救ってくれた恩人の赤城だ。今日は皆に話があって来てもらったんだ」
戸田が後は頼むみたいな顔で俺にウインクしてくるけど、大した打ち合わせはしてない。だから、ぶっつけ本番である。
「えと、戸田君と同じクラスの赤城駆です。皆さんにお願いがあって来ました。本人から聞いているかもしれませんが、僕たちは異世界へと拉致されました」
御両親は真剣な顔で聞いていたけど、周りにいる兄弟姉妹からは凄い顔で見られている。兄と姉は詐欺師でも見るよな目で、弟と妹は「異世界すっげー」みたいな感じで目をキラキラさせていた。
「連れて帰ってきたクラスメイトには、記憶が無いの一点張りで対応するように伝えています。その理由はわかりますよね?正直に言ったところで、頭のおかしい人だと思われるだけですから」
じゃあ何で言うんだよといった目を向けてくる兄と姉。御両親は半信半疑みたいだけど、恩人の言うことだからって感じだろうな。弟と妹は小さいからか、よくわかってなさそうだった。
「ちょっといいかな?赤城君だったよね。異世界に行ったという証拠はあるのかい?証明できることでもいいよ。何かあるならここで出してほしい」
「そうよ、そんな怪しいこと今時小学生でも言わないわ。剛、アンタ騙されてんのよ。連れて帰ってきたったのも怪しいもんだわ」
厳しい現実的な意見を言われるけど、普通に考えたらそうですよね。俺も言ってて恥ずかしいもん。ですよねーってなるわ。
「二人ともよさないか!」
「父さんは黙ってて。お人好しなのは美徳だけど、今は僕に話をさせてほしい。赤城君、僕は弁護士だ。黙ってそんなことをホイホイ鵜呑みには出来ないよ。それとも証拠はないのかい?」
「そうよ、父さんたちを騙そうとしたって無駄よ。そんな直ぐにバレる嘘をついて、アンタ剛に何かさせる気でしょ!」
「お前達!恩人に向かって何てことを!謝りなさい!」
父親は礼儀を欠いた二人を叱りつけ、二人はそんな父親に騙されてるとか何とか、ギャーギャー言い争っていた。母親が横でオロオロしてる。
時間がかかりそうだしお茶も出てなかったので、創造でカップとお茶の入ったポットを出して一服する。
その様子を見ていた弟と妹が珍しそうにしてたので、果物ジュースとコップとクッキーを創造して二人にあげた。
「いいの?ありがとー」
「わーい!ありがとー」
「どういたしまして。ところでお父さんとお兄さん達はいつもああなのかな?」
「そうだよー」
「兄ちゃんたちすげー怖いんだ」
「おい、赤城。俺にも何かくれよ。出来たら有名店のケーキとかがいいな。出来るんだろ?」
図々しい戸田にも黙って紅茶とケーキを創造してやった。有名店とか知らんから駅前のケーキ屋のだけど。
それを見た弟と妹もケーキがいいって言い出したから、ショートケーキやチーズケーキに、ザッハトルテとモンブラン等々を振る舞ってあげたら大層喜んでくれた。
「兄ちゃんの友達すげーな!」
「ケーキ食べほーだいだー」
喜んで食べる弟と妹を見て、兄弟っていいなと思いながらほっこりしていると、さっきまで聴こえていた喧騒が止んでることに気付いた。
「あ、あんた何やったのよ?マジック?手品なんでしょ!」
「ありえない٠٠٠こんなことがあるなんて٠٠٠嘘だ٠٠٠」
御両親もお兄さんもお姉さんも驚いた顔でこっちを見ていた。証拠と証明って言われたからね。とりあえずスキルを証明してみたんだけど?更に追い討ちをかけてやるか。
「弟くん、妹ちゃん。ほら、これ見てよ」
「わー!すげー!」
「きれーだねー!」
水魔法の水流操作で、子供が好きそうなアニメキャラを宙に描いて見せた。他にも人気の魔法少女系のアニメキャラを水で作り出したり、ロボットアニメの機体も作ったりした。
更に土魔法の土操作と、火魔法の火炎操作に、風魔法の風流操作も加えて色んなキャラを出していった。広いリビングで良かったよ。魔力操作が上手い俺じゃなきゃ出来ない芸当だね。並列思考も使ってるから百体以上も余裕なのだ。
「おーい、赤城。そろそろ親父達に話してくれ。てか、お前すげぇな」
「ん?もういいの?わかった」
話をするために魔法を全部消してしまうと、弟くんが残念がってしまい、妹ちゃんは泣き出してしまった。
さすがに悪いので、二人が気に入っていたキャラのフィギュアを創造してプレゼントしたよ。二人とも大喜びだった。
そろそろ落ち着いたであろう戸田の家族に、さっきの話の続きをする。
「これで証拠と証明は充分ですか?まだ必要なら異世界に連れていって魔物を見せますけど」
「いや、充分だよ。すまないね赤城君。うちの子供達が迷惑をかけたね。ほら、お前達も謝りなさい」
「赤城君、すまなかった。確かにその不思議な力は異世界の証明になったよ」
「~っ!まだよ!確かに不思議な力はわかったわ。けど証拠がないじゃない!」
まだ信じないギャースカうるさいお姉さん。ヒステリックな女性は嫌われますよ?仕方ないからご家族全員を結界魔法で包み、次元転移で異世界へと強制的に連れていった。
場所は一目でわかるように、アニマー獣人国家の最初に行った街にした。時間は夕方だけど、まだ人はたくさん出歩いてる。
「ほら、ここが異世界テラフィアです。戸田くんのお姉さん、満足してくれましたか?」
ご家族は周りをキョロキョロしながら驚いていた。正確には弟くんと妹ちゃんはワクワクで、御両親と兄と姉は突然切り替わった環境に困惑。戸田は犬耳獣人の女の子を見て喜んでいた。
「ここはテラフィアにあるアニマー獣人国家という国です。その名の通り獣人が治める国です。頭にケモ耳があって、尻にシッポがあるでしょ?これが獣人です。それ以外は人族と変わらない種族ですね」
落ち着いたご家族さんは周りを見ながら、「ほー」とか「へー」といった感じで見学していた。けど戸田のお姉さんは自分だけは絶対に信じないといった感じで、何やらブツブツと呟いていた。
「うそ、嘘よ。これは集団催眠٠٠٠?家からこの場所までどうやって?地面は土だし٠٠٠そうよ、証明すればいいのよ」
お姉さんはフラフラと歩いてたけど、結界を張ってたから安心しきっていた。何があっても大丈夫だと油断していた。
「いい歳してコスプレとか恥ずかしくないの?」
「はぁ?なんだアンタ。こすぷれって何だ?」
「惚けてないでソレを外しなさいよ!」
「あ、ちょ、なんだぁこの姉ちゃん!?」
近くを歩いていた冒険者らしきイケメン狐獣人に話し掛けたと思ったら、頭のケモ耳を引っ張り始めた。獣人の特性を思い出して、慌てて止めに入ったが遅かった。
「あれ?外れないわね。ならシッポは٠٠٠うん、取れないわね。ちょっとアナタ、どうなってるのよ」
「あふっ、うほっ、ちょ、待って、あ、そこは!あひぃ!」
身体中を弄くり回されたイケメン狐獣人は昇天したようで倒れていた。お姉さんは倒れてる狐獣人のシッポを容赦なく引っ張ってるし。
すぐに辺りを見回して目撃者を調べたら、数人の住民がこの惨状を見ていた。素早く睡眠雲で目撃者と被害者を全員眠らせた。そのまま集団転移で目撃者と戸田一家と被害者を連れてその場を離れた。
転移した先は前に休憩してたこともある平原だ。ここならこの時間は誰もいない。
「お姉さん、あんた何てことをしてくれたんだ!」
「な、何よ!バレるのが嫌で邪魔したんてしょ?」
「いい加減現実を見ろよ!火魔法『中爆発』!」
俺が火魔法を放った場所に大規模な爆発が起こる。軽く50メートル程のクレーターが出来上がり、お姉さんはその威力にビビって黙り込んだ。
「あんたがやったことは、この世界じゃ強姦と変わらないんだぞ?あんた責任取れんのかよ」
いい機会なので戸田一家に向けて、簡単に獣人の特性を説明した。説明の途中で弟くんと妹ちゃんは耳を塞がれてたよ。子供にはまだ早いからね。
そして説明を受けたお姉さんは青ざめていた。罰金か責任とって結婚するかだもんな。相手に妻か恋人が居なければだけど。
俺の話を聞いて戸田一家は緊急の家族会議に入ったので、その隙に眠らせた目撃者の記憶を何も無かったように改竄していく。
記憶の改竄が終わった目撃者を街へと送り、目立たない所で目覚めさせて解散させた。
転移で戻って、今度は被害者の男性の記憶を探った。魔眼の一つに記憶視があるので、記憶を見るのは簡単だ。調べると嫁も恋人もいないというのが判ったので、後はお姉さんの判断待ちにしようと思う。
異世界だからと、記憶を改竄して無かったことにするのは時と場合による。相手も人なんだから、そこら辺はキッチリとしておきたいのだ。
「どうするか決めましたか?」
俺が尋ねると、お姉さんは悲壮な顔をしていた。まだ決めきれてないらしいく、黙って青くなっていた。
「あなたの軽はずみな行動でこうなったんですよ。相手は知性ある人なんです。知らなかったではすまされない。今回は俺が何とかしますが、この事は覚えておいて下さい。それでは日本に戻りますね」
被害者男性の記憶を改竄して街に送り届けた後に、全員を連れて日本へと転移した。
「これで異世界は証明できたでしょ?それで俺の話ってのは、戸田をもう一度異世界に送ることです。理由は戦う力を身に付けてもらいたいからです。直ぐには決められないかもしれませんが、明日の朝までに返答を下さい。彼には戦う力を渡しておきますから」
「赤城君、すまないね。今夜は剛と話し合うとするよ。それと娘が迷惑をかけて申し訳ない」
「いえ、俺からは以上です。いい返答を期待しています」
言いたいことを言ってちょっとスッキリした。帰る前に戸田にLV1000ドリンクセットを渡しておいた。スキルオーブやドリンクの使い方を書いたメモも渡しておいた。
そして戸田家を出て我が家に帰った。
ここまで戸田の面倒を色々みてやったのは、全てあの時に戸田が彼女を欲しいと言ったからだ。その言葉を聞いて、ある閃きが浮かんだってのが正しい。そのアイデアを実行する為に、戸田をもう一度異世界へと送ることに決めたのだから。
翌日の朝、スマホにメッセージの通知があった。戸田からだった。
『異世界に行けることになった!』
『あの約束を忘れんなよ?』
『あと、ありがとな!』
何か仲間が出来たような気持ちになり、フッと笑ってる自分がいた。おっと、返信しとかないとな。
『じゃあ朝飯食べたら迎えに行くわ』
こうして戸田を連れて異世界に行くことになったが、向こうでは別行動予定となる。ただ、前と違って一人じゃないという気持ちになったのが新鮮に感じた。
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