第23話 和平条約と四谷の処遇
ザガ族の長、ザガギギムを拘束した。その後の行動は早かった。
四谷とザガマリアさんは、集落の中央でザガ族全員を集めると、新しくザガ族の長として四谷が継ぐことを宣言した。先代であるザガギギムは、その残虐な思想により拘束し幽閉することを伝えた。
一部のザガギギムを信奉している者達だが、ザガギギムを倒した新しい長に力で敵わないと知って恭順の意を示したそうだ。
「これからは部族間の不和を無くし、各部族と手を取り合う方針でいく」
これがザガ族全体に伝わると、今まで嫌々従っていた者がかなりいたようで、新しい長を支持する声が数多く挙がったそうだ。
四谷たちは、あの事件から三日間ほどザガ族を纏める為に時間を使っていた。俺はその間にガガ族の集落に行って、状況の説明をガガハッドにしていた。
最初は半信半疑だったガガハッドだったが、証拠にザガ族の集落まで転移で連れていくと、まずは転移に凄く驚かれた。
「俺のやることは全て内密に頼む。名前も伏せてくれ。目立ちたくないんだ」
そう伝えると、ガガハッドは何かを理解したように頷いていた。
辺りを見回してザガ族の集落だと確認したので、その足で新しいザガ族の長に会わせに行った。四谷とザガマリアを見て、少し話し合っていた。これからの両部族の未来というよりは、大平原全体の未来を語ってるようだった。その辺の話はよくわかんないし、聴いてもしょうがないのでゲルの外で待ってた。
「すまない、カケルよ。待たせたな」
満足な回答が得られたのか、ガガハッドは笑みを浮かべていた。その後、ガガ族の集落に戻ってからが大変だったようだ。
ガガ族の皆に、新しいザガ族のことを説明していった。ガガハッドは部族内で、ある程度の発言力があるらしい。もちろん信じる者もいれば、信じない者もいる。なので近日中に、ザガ族から和平の使者が来るので、実際に会って確認してほしいと上層部に伝えていった。四谷らと話していた内容がそれだったらしい。
ザガ族を纏めあげた四谷は、和平の為の使者を通して、大平原にいる全部族に手紙を送ったそうだ。手紙は和平条約を結ぶと共に、今までにザガ族から受けた被害等も賠償するといった内容が記されている。ちなみに使者役として飛び回っていたのは、俺と四谷とザガマリアさんだ。ザガ族を纏めあげてる間に、各部族の集落を巡って転移できるように飛び回ったよ。
これからザガ族の立ち位置は厳しいものになるけど、二人は一緒に乗り越えていくと言っていた。いい感じにハッピーエンドっぽいけど、まだやることが残っている。四谷とザガマリアさんを日本に連れていくことだ。
「緊張するわね٠٠٠ツグオの世界って馬がいない鉄の馬車とか、高い石の建物とかがあるんでしょ?」
「あぁ、車やビルだな。文明が進んでいるだけで、こちらの世界のように魔法やスキルは無い。それに魔物も居ないから、ある程度は平和だな」
二人でお土産を用意しながら、呑気な会話をしていた。準備ができたようなので、二人を連れて日本に転移した。異世界の人も無事に日本に連れて来れた。少しホッとしたのは内緒だ。大丈夫だと思ってたけど、先に魔物とかで実験しておけば良かったな。
四谷の家は先に調べてあったので、二人を連れて転移した。大事な話なので、事前に両親がいる時間を四谷から聞いて確認している。というわけで、今は夕方だったりする。
二人には事前に話してあるが、もし両親が異世界の話を公表するようなら、魔法で記憶を改竄すると伝えている。上手く説得してほしいと祈ってしまう。
「大丈夫だ、赤城。お前が緊張してとうするんだ?ちゃんと説得してみせるさ」
「そうよ。ちゃんとツグオの両親に認めてもらうわ。アカギ٠٠٠あなたには感謝する」
二人に励まされて?そのまま家に入っていった。自宅に戻って千里眼で中の様子をみていたが、音声が無いのでどうなってるかわからない。最初は喜んでいた両親も、四谷が話を始めると渋い顔をしていた。母親の方は泣いていたし。時折、四谷が魔法で水を出してるのを見て驚いていたり、ザガマリアさんが出したお土産の果実を見てスマホで調べたりしていた。
四谷がスマホを出して誰かに電話をかけると、俺のスマホが鳴り出した。着信相手は四谷だったので、慌てて電話に出る。
「はい、もしもし?」
『俺だ。今から家に来れないか?』
「どういうことだ?」
『すまないが、お前の力を借りたい』
少し考えたけど、もしかしたらダメだったのかもしれない。両親の記憶を消すことになる。その為に呼ばれたのかな?
「わかった。直ぐに行こう」
そう伝えて電話を切ったあと、四谷の家に転移してインターフォンを鳴らした。
四谷が出てきて、俺を連れて居間に案内された。居間では四谷の両親と、居心地悪そうなザガマリアさんがいた。ザガマリアさんの隣に四谷が座り、向かい側に両親が座っている。二人と両親の間に挟まれて俺が座った。非常に居心地が悪い気がする。
「こちらがクラスメイトの赤城だ。俺達を助けてくれた恩人でもある。そしてこちらが俺の両親だ」
四谷の紹介でお互いに頭を下げる。親父さんは恩人と聞いて、再度深々と頭を下げて言った。
「赤城くん、継雄を助けてくれて本当にありがとう。君には感謝しても足りないほどだ」
「いや、そんな、俺なんかに頭を下げないで下さい。やりたくてやってることなので、頭を上げて下さい」
困ったので周りに助けを求める視線を送ると、全員が俺に頭を下げていた。いや、ちょっと待って!こういう展開は慣れてないんだ!
なんとか全員の頭を上げさせて、話の続きを始めた。もしかして感謝の言葉を言いたかったから呼ばれたのか?けど力を借りたいって言ってたよな?
「赤城くん、息子から聞いたのだが、君は異世界から日本へと子供たちを帰しているそうだね」
「え?えぇ、そうですけど」
「そこで頼みたい事がある。厚かましい願いだとは思うが、息子を時々で構わないから日本に送ってやることは出来ないか?」
「え~と、どういうことか詳しく聞いてもいいですか?」
親父さんの頼みとは、息子が異世界で結婚したのなら、定住しても構わない。けど時々顔ぐらい出してよ、孫が出来たら顔を見せに来てねという内容だった。簡単に説明するとこんな感じだ。特に母親は孫のところで激しく同意していた。あまりの剣幕にちょっと怖かった。ザガマリアさんは照れてたけど。
「話は理解しました。僕にも都合があるので、これから四谷٠٠٠息子さん自身に移動できるようにしてもらいます」
「赤城٠٠٠どういうことだ?まさか転移の魔法を覚えるまでレベルを上げろということか?」
「違うよ、これを使ってくれ」
空間魔法と次元空間魔法のスキルオーブを渡した。たった今、創造で作ったものだ。更にサービスでLV1000ドリンク三本と、上限突破と限界突破のスキルオーブも付けた。MPが足りないと行き来できないからね。四谷の魔力なら成長すればいけるだろうけど、念のためにLV3000は持っていてもらいたい。ついでに自衛の意味も込めてある。
「これはスキルオーブという、スキルを覚えれるアイテムだ。こっちはレベルが一本で1000上がるドリンク。あ、先に上限突破と限界突破のスキルを覚えてからな。レベル上限が最初は300で、次は1000だから」
「こんな物があるなんて٠٠٠信じられないわ」
ザガマリアさんは見たこともないアイテムを見て驚いていたが、俺とアイテムを何度か見て納得していた。間違ってないけど、何度も見られるとズルしたみたいで後ろめたくなるから止めて?間違ってないけどさぁ。
「赤城、本当に感謝する。何かお前が困っていたら俺は必ず力になろう」
「その時は声をかけるよ。あ、レベルアップ後はだけど、ちゃんと練習したほうがいいぞ?力加減がわからないだろうから、物とか壊してしまうし。ついでにこれも付けておこう」
四谷に「貰いすぎだ」と恐縮されたが、無理矢理スキルオーブを渡した。手加減、身体制御、精密動作の三点セットだ。これで日常も安心だろ。ザガマリアさんに怪我をさせたりしたら大変だもんな。あ、それならザガマリアさんも強くなってたほうがいいか。
ザガマリアさんには、LV1000ドリンク三本と、上限突破と限界突破のスキルオーブと、手加減等の三点セットを渡しておいた。仮にザガマリアさんが人質に取られそうになっても、これで四谷も安心だろう。
まだ魔族という脅威も残っているけど、魔族が完全に悪なのかわからない。ザガギギムのような奴もいるかもしれない。
四谷の御両親からは凄く感謝された。この一連の出来事は秘密にしてもらいたいと話すと、親父さんから墓場まで持ってくと言われた。うん、言っておいてなんだけど、表現が重いと思った。
こうしてマダラ大平原でのクラスメイトの帰還?は、無事に終了した。今後も状況次第で柔軟に対応していくことにしよう。
四谷の一件は例外だけど、四谷は人格が良かったからこの対応になっただけだ。
今までのクラスメイトで、まともじゃなかった者もいたことだし、今後も気を引き締めていこう。
四谷一家に別れを告げて自宅へ帰ると、夜はぐっすりと眠ることができた。ハッピーエンドで終われたからホント良かったよ。残りは先生含めて31人かぁ~頑張ろ。
翌日の朝、新しい場所へ移動するために、異世界テラフィアへと転移した。
以下、四谷継雄のステータス。
ツグオ・ヨツヤ
人族 16歳 男性
職業 治療士
LV 44→3044
HP 1250→185500
MP 2220→414400
力 120→14200
体力 220→19500
速さ 310→28800
知力 440→41400
精神 1850→237000
魔力 2220→414400
運 440→41400
スキル
鞭術、水魔法、光魔法、空間魔法、次元空間魔法、手加減、身体制御、精密動作、上限突破、限界突破
武技
乱れ鞭、トリックウィップ、ブレードウィップ
称号
女神の戦士、義理人情、治療の達人
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