第18話 キングホエール討伐
イージス艦は唸りをあげながら海を進んでいく。比較的静かなんだけど、波の音が心地よくて詩的な表現をしたと自画自賛した。
「う~み~はぁ、広い~なぁ、大きい~なぁ~っと」
上機嫌で航海するが、本当はさっきから各種兵装を試したくて仕方がない。
魔物を索敵しながら沖へとどんどん進んでいく。世界地図でキングホエールの位置が判れば楽なのになぁと思いつつ、不便も旅を楽しむための大事なスパイスだと何かで聞いたので、そのまま進んでいった。
10分ほど波を掻き分けていくと索敵に反応があった。小さい反応だったので魚の魔物かと思い、兵装を使うのは止めておくことにした。
外に出てみると海中に反応があったので、雷魔法を軽く撃ち込んでみる。
「雷魔法『電撃』」
海上でバチバチと音を鳴らしながら海中へと飛んでいった。反応が消えたので暫く待つと、自分と変わらないサイズの魚が浮かんできた。鑑定するとピンクシャーケと出た。
「これがピンクシャーケか。屋台で売ってたのよりも大きくないか?」
大きい分には困らないと思い、また戦闘指揮所に戻って船を進めていく。
あれから何度か戦闘を繰り返して、兵装もある程度試せたから大満足である。
「やっぱミサイルはすげぇよな!機関砲もカッコいいし、魚雷は地味だったけど効果は抜群だったな。素材は全部ダメになったけど」
兵装を使った狩りは素材がダメになるので、キングホエールの時は止めておくことにした。
大型の反応を探して航海していると、遠くで水飛沫が上がっているのを発見した。しかし索敵には反応が無い。
もしかしたら索敵に反応しない隠密スキルを持っているのかもしれない。
「あそこまで飛んでいくか。船を壊されるのもなんだし。時間も押してるしな」
水飛沫のあった場所まで来ると、海の中に巨大な影が泳いでいるのが見えた。船の10倍ぐらいはあるんじゃないだろうか?
慌てて鑑定してみると、キングホエールと出た。スキルに潜水隠密があった。効果は潜水中は隠密効果があるらしい。そりゃ見つからない訳だ。
「時間も無いから仕留めさせてもらうぞ。雷魔法『雷神の槍』!」
先ほど使った電撃が下位魔法なら、雷神の槍は上位魔法となる。といっても手加減スキルを使用している。自身とキングホエールのステータス差を鑑みた結果だ。
スキルを使用しなかった場合、多分キングホエールは消し炭になってたと思う。
絶妙な手加減の効果もあり、巨大な雷槍がキングホエールを貫くと、プカァと浮かびあがってきた。鑑定で死亡を確認したあと、ストレージに仕舞った。
その後は夕暮れまで海での狩りを楽しんだ。家に帰ったあと、魚を全て渡しておいたので、暫くは海鮮系のご飯が食べられるとほくそ笑む。
その日の晩御飯は、焼きピンクシャーケだった。焼き鮭ともいう。味はめっちゃ美味かったと言っておこう。
父さんは肉より魚の方が嬉しかったらしく、「今度は刺身も頼むよ」と母さんにお願いしていた。異世界の寄生虫が怖いから、魚介類は全て氷魔法で冷凍殺菌しておいた。
翌日、港町のギルドに依頼の達成報告に向かった。カウンターの受付嬢さんに、キングホエールを討伐したので、どこか出せる場所がないか確認した。
「依頼にあったキングホエールを討伐した。どこか出せる場所はないか?」
この時まで冒険者ギルドではトラブルが一切無かった。だから今回も特に注意してなかった。
尻に軽い衝撃を受けた。急な出来事だったので、前につんのめりカウンターに両手をつく感じになった。疑問が頭も過り後ろを振り向いて見ると、5人組の男たちがヘラヘラとした顔で俺を見ていた。
そのうちの一人の足が上がったままなので、こいつに尻を蹴られたことをようやく悟った。
「おいおい、嘘を盛るにしてもキングホエールは無いだろぉ?ボクちゃんよぉ!」
「へっへっへ!」
「ガキが生意気だぜ」
「こいつビビってやがる!」
「そうだぞ?嘘はいけねぇなぁ」
チンピラ風冒険者が五人。口々に好き勝手なことを言っている。もしかして٠٠٠俺に絡んでるのか?
「ちょっと!何を٠٠٠?あ、あなた方は『ナカヨスの荒海』の皆さん!?」
受付嬢さんは注意しようとしたっぽいけど、この5人組を見て驚いたようで固まってしまった。セリフの後は口をパクパクさせていた。
俺は絶好のチャンスを活かす為、ニヤリと笑って挑発してやった。
「どうして嘘だと思うんだ?もしかして手柄を横取りしようとしてんの?うわ、ダッセー!ププッ」
「おいガキ!ギルド内だからって舐めた態度をとってると痛い目にあうぞ?」
挑発した男を無視して受付嬢さんに話し掛ける。話し掛けられたことで、固まってた受付嬢さんは再起動した。
「なぁ受付嬢さん。冒険者同士の喧嘩はどこまでやっていいんだ?殺しても大丈夫なのか?」
「あ、い、いえ、殺しはダメです!揉め事は決闘で決めるルールとなります。殺害しなければ大丈夫ですが、決闘には両者の同意が必要となります」
「そうか、ありがとう」
チンピラ達に振り返ると、無視されたからか挑発されたからなのか、俺を怒りの形相で睨み付けていた。
それを見てニヤニヤしながら言ってやった。
「聞いてただろ?えーと、何だっけ?あぁそうそう、『ナカヨシ五人組』だったな」
「『ナカヨスの荒海』だ!てめぇ、おちょくってんのか?殺すぞ!」
「殺しはダメって受付嬢さんが言ってただろ?頭が弱いのか?あぁそうか、弱いから手柄を横取りしないと稼げないもんな!」
俺の煽り文句で、野次馬していた冒険者達がドッと笑った。
「違いねぇ!」
「弱いと稼げねぇからな!」
「言われてるぞー荒海!」
「ワハハッ!手柄の横取りすんなよ!」
「坊主の言うとおりだぜ!」
周りからヤジやら笑い声が飛んできたから、チンピラ5人組は顔が真っ赤だ。どうやら怒ってるようだけど、それはこちらも望むところだ。
「クソガキが!決闘だ!お前は絶対に殺す!」
「ハイハイ、出来てから言おうね。ところで何処で決闘するんだ?」
「あ、それなら裏の訓練場でやるのが慣習となっています。皆さん決闘をするのなら訓練場でお願いします!」
受付嬢さんに案内されて訓練場に入ると、5人組以外の冒険者達もぞろぞろとついてきた。どうやら観戦するみたいだ。
訓練場の真ん中で俺と5人組が向かい合って立つ。受付嬢さんが間に立って審判するそうだ。
「いいですか?殺してはダメですからね?どちらかが戦闘不能になるか、私が止めたらそこで終了ですからね。それでは『ナカヨスの荒海』の方は代表者を選んで下さい」
受付嬢さんの説明が終わった。始まる前に折角のテンプレチャンスなので、しっかりと最後まで煽ることにした。
「代表者は決めなくていいぞ?お前らは弱いんだから五人でこいよ。一人だと負けた時に言い訳されるかもしれーしな」
「吐いた言葉は取り消せねぇぞ?このクソガキが!おい、アイツを囲め!いつもどおりにやるぞ!」
「わかったぜ、リーダー!」
「舐めた真似しやがって!」
「ナカヨス海に沈めてやる!」
「覚悟しろガキが!」
五人を相手にすることになったので、受付嬢さんが俺に再度確認してきたが、それでいいと了承した。腑に落ちない表情をしていたけど、受付嬢さんは渋々決闘を開始する。
「それでは金級冒険者カケルと、金級パーティー"ナカヨスの荒海"の決闘を始めます。両者、始め!」
受付嬢さんが言い終わる前に5人組が動き出した。
剣を持った二人が左右から挟むように迫り、正面から槍を持った男が牽制する。その後方から残りの二人が、弓と火魔法を撃ってきた。
連携が取れた動きを見せるが、あまりにも遅かったので左の男の剣を避けて、腹パンを喰らわせる。手加減をミスったのか凄いスピードで飛んでいって、訓練場の壁にめり込んだ。それを見て前衛の動きが止まったけど、構わずに右から来ていた男にも腹パンをお見舞いする。今度は上手く手加減できたようで壁の手前まで飛んだ。仲間がやられたことで槍の男が狼狽えていた。
「な、なんだ、お前は?」
「どうした?動きが止まってるぞ」
言い終わる前に、素早く後衛の二人に接近して腹パンしてあげた。周囲の野次馬冒険者達まで飛ばされていき、残りは俺を蹴った奴だけとなった。
「お前には蹴られたお礼をしてなかったな」
「ヒッ!く、来るなぁ!」
「やられたら、やり返す。常識だろ?」
転移で後に回り込み、尻を蹴飛ばしてやった。俺はやられたことは確実にやり返す派だ。男は壁にめり込んでいたけど、手加減をちょっとミスっただけなのでセーフ。
「受付嬢さん、これで終わりだ。全員気絶したぞ」
「٠٠٠は、はい。勝者、カケル!」
勝利宣言をしたことで周囲の冒険者達から歓声があがった。受付嬢さんは目の前の現実にあまり追い付いてないようだ。
俺は倒れている5人組を集めて、平手打ちで意識を回復させた。
「おい、起きろ」
「٠٠٠はっ!ここは?」
「お前らは決闘に負けたんだよ。これで何も文句はないよな?次に絡んできたら、街の外で決闘するからな。٠٠٠この意味わかるよな?」
「はいぃぃぃ!わかりますぅ!」
演技スキルでマフィアのボスをイメージして脅すと、5人組は泣きながら首を縦にブンブン振っていた。解放してやると、蜘蛛の子を散らすように何処かに逃げていった。
決闘も終わったので、受付嬢さんにここでキングホエールを出していいか確認する。オッケーをもらったので、ストレージからキングホエールを出した。
受付嬢さんと周りの冒険者達が、あまりのサイズに驚いていた。
「こ、これは大きいですね。初めて見ましたが、確かにキングホエールの特徴と一致します。依頼達成おめでとうございます!」
「ありがとう。これって昇級するかな?」
「すみません!報酬と合わせて、ギルドマスターに確認してきますので少々お待ち下さい!」
受付嬢さんが何処かに走り去って、少しするとムキムキのオッサンと戻ってきた。あれがギルドマスターっぽいな。
「お前が金級のカケルか?俺はウミヨス支部のギルドマスターをやっているラングルだ。他のパーティーメンバーはどうした?」
「ウミヨス支部?あぁ、街の名前か。他のパーティーメンバーはいないぞ。俺はソロでやってるからな」
「なんだと?ということは、単独で討伐したということか!これはいい!確か昇級するか聞いてたよな?今日から白銀級に昇級しよう。それと討伐報酬は白金貨50枚だ。後でカウンターで新しいカードと報酬を受け取るといい」
ギルドマスターとのやりとりはあっさり終わった。それとギルドマスターが、何故か嬉しそうな顔をしていたのが印象に残った。
簡単に昇級していくな~と思ったけど、前に聞いた話のとおり確かに昇級は簡単だった。実力が見合っていればランクが下がることもないから、このまま白金級を目指そうと気合いを入れた。
カウンターで新しいカードと報酬を受け取り、受付嬢さんから注意事項を幾つか聞いた。どれもあまり関係の無い内容だったけど、一応述べるならこんな感じだ。
一、 白銀級からは貴族や王族と接することもあるので礼儀作法に気を付ける
二、 依頼失敗三連続で降格する
三、 緊急時にはギルドに召集され従う義務が発生する
一つ目は絡むことが無いから大丈夫だし、二つ目は失敗することは無いと思うから大丈夫。三つ目はスタンピードと呼ばれる、魔物の大量発生等による脅威から、街を守るといった義務が生じるそうだ。
以上が高ランク冒険者の注意事項なんだってさ。あまり関係無いけど、一応覚えておくか。どこでフラグが建つかわかんないしな。
受付嬢さんの話では、ギルドマスターは俺がこの街を拠点にしてると勘違いしてるらしい。だからあんなに喜んでいたそうだ。残念ながら今日で他の国に移動するけど、別に言わなくてもいいだろう。
受付嬢さんにお礼を言って、次の国へ行く為に街の外へと向かった。世界地図を開いて、向かう先の方角を確認した。
「次はアニマー獣人国家か。少し遠いな。日暮れには街に着きそうかな?」
ストレージからハリアーを取り出して、アニマー獣人国家へと向けて飛び立った。
以下、赤城駆のステータス
カケル・アカギ
人族 16歳 男性
職業 昼行灯改
LV 110000000
HP 10000027000
MP 7890000001150
力 980000000+1150
体力 980000000+1150
速さ 980000000+1150
知力 1550000000+1150
精神 1340000000+1150
魔力 7890000000000+1150
運 9980000000+11100
スキル
創造
神眼(鑑定、心眼、各種魔眼を統一)
ストレージ
概念操作
上限突破、限界突破、極限突破、究極突破
スキル向上、スキル上昇、スキル重複、スキル強制消去
手加減、身体制御、身体操作、精密動作、高速飛行
演技、交渉、魅力、料理、世界地図、解体、操縦、狙撃、必中、解錠、直感
未来予測、未来予知
怪力、剛力、金剛力
頑強、剛体、金剛体
俊足、瞬足、韋駄天
知恵袋、博識、秀才、天才
集中、忍耐、明鏡止水
魔力増大、魔力泉、魔力タンク
ラッキー、幸運、豪運
原始魔法(火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、氷魔法、光魔法、闇魔法を統一)
身体強化魔法、空間魔法、次元空間魔法、結界魔法、天候魔法、魔法合成
魔力操作、MP自動回復、HP自動回復、MP二倍、HP二倍、魔力吸収
武王(剣術、槍術、格闘術、弓術、鞭術、投擲術、鎌術、暗殺術を統一)
鑑定無効、隠密、隠蔽、気配遮断、魔力隠蔽、盗聴無効、神眼無効、視線感知、空間把握、思考加速、高速思考、並列思考、生命索敵、魔力索敵、緊急回避
状態異常無効、全属性無効、即死無効、無効貫通、神殺し、神気、神貫通
称号
女神に嫌われた者、賢者、大魔導士、剣聖、槍聖、拳聖、弓聖、鞭聖、投聖、神殺し、理を壊す者、創造者、闇を照らす者、同胞の解放者
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