朝食は食べ物を胃に詰め込む作業である
現実なのか、そうでは無いのか分からない場所でふわふわしている感覚を覚えた。それが気持ちいいのかどうかすらよく分からない。
突然無音だったはずのその場所に、不快な音が反響して聞こえ始める。
やがてまだ見慣れない天井が見え始め、体が間違いなく自分自身の物だと認識する。
ほぼ無意識に音のなる方に手を伸ばしてスマホのアラーム音を止めた。
完全に意識が覚醒してから時間を確認すると六時三十三分の文字が確認出来た。
朝起きる事が不得意な訳ではない優からすれば、確認こそするが、いつもと変わらない時間だということ以外に特に思うことは無い。
中学時代までの優なら起きてから朝食までの時間はスマホをいじったり、自分自身を意識が高いと褒めちぎりながら勉強したりした。
しかし、一人暮らしを始めたのだから朝食も優が用意しなければならない。
優は自炊も一人暮らしの醍醐味だと考えている。自分の好きな物を好きな時に作れるし、味付けももちろん自由。
優の場合、学食を利用することを踏まえて食費としては十二分と言える額が毎月与えられるので、尚更好きなように自炊がしやすい。
けれども、優が取り出したのはフライパンでもボウルでもなく、シリアルだった。それも数多くあるシリアルの中でもメープルシロップやドライフルーツが入っていて格別な甘さを持つものである。
自称シリアル愛好家の優が、スーパーのシリアルコーナー棚を端から端まで調べあげて発見したお気に入りの品だ。
これに牛乳をかければ、わずか三十秒で朝食が出来上がる素晴らしいライフハックも自分自身で確立した。少なくとも優はそう思っている。
いざ食べようとした時、優の脳内に母親の顔が浮かび「栄養ちゃんと取りなさいよ」と言ってくる。
優は、次からシリアルの時はゆで卵を作ってたんぱく質を取ればいいと若干的外れな事を考えていた。
とはいえ、ここまで手軽に食べられる物は限られている。いずれそういう物に対して飽きを感じるようになったら、多少の手間をかけて朝食を作る事になるだろう。
少し憂鬱な気分になりながらも、学校に向けて明るい気分に切り替える。
まだ二日目であり、油断をするわけにはいかない。
こうして、何気ない一日の朝食は終わるのだった。
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