第3話

『笑わないんだね』

彼女は不思議そうな顔をしたけれど、僕には笑う要素が分からなかった。

『よく音楽が好きなくせにアニソンばっかじゃんって言われたんだよ』

なるほど。なら僕には分からなくて当たり前だ。だってアニメ見たことないし。でも、

「アニソンじゃダメなの?知識ないから何も分からないけど全部背景の物語があるように感じた。僕は好きだったよ。」

彼女の好みは幅広かったけど、どの曲にも僕は惹かれた。それは音楽を何も知らないからの興味かもしれないけれど、僕の知らない世界が音の先にはたくさんあるように感じた。大げさかもしれないけれど彼女と居ると僕の知っている世界の狭さに毎度驚かされる。

『君の知らないことが多いおかげかもね。そうやって偏見なく音楽楽しめるのって』

彼女は今日一番の笑顔を僕に見せる。本当に彼女は太陽のような人だとつくづく感じる。気つけば彼女を目で追ってしまうし、音楽室に居るのが当たり前のように思ってしまう。彼女も境遇は違えど僕と同じ人間なのに違う動物に感じてしまう。

『今度おすすめの曲まとめてくるからまた来てよ』

僕は多分彼女の笑顔に弱いんだと思う。心の底から楽しそうな無邪気な笑顔に。

「わかった。また明日同じ時間に来るよ」

そういう僕はやっぱり彼女に弱いのだ。

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