大木の秘密

 都内から車で3時間弱で着くその山の山頂近辺には古くからある神社があった。

そこには、社の裏手に大きな御神木がそびえたっていた。


その昔、天女が降り立ってその地に杖をさしたという、その杖が瞬く間に成長して

この御神木となったらしい。


私は、迷信の類は信じないそんな人間だ。そんな、私がなぜこの木に興味を持ったかというと先日きた客人の影響だ。


私はとある科学雑誌のライターをしている。

ある日、仕事をしていると上司に呼び出せれて応接室に向かった。

そこには、世界でも有名な物性の研究をしている大学教授が座っていた。


教授には、以前取材で何度もお世話になっている。

私の書いた記事をえらく気に入ったらしく挨拶しにきたらしい。


「その節は、本当に取材協力ありがとうございました。」

「いえいえ、あなたの記事拝読させていただきましたよ、すごくよかったです。

多角的な視点から書かれていたし私以外の様々な専門家にも話を聞き丁寧な取材がされていることが感じ取れました。」


そんな感じで、社交辞令がいくつか続いた。


「実は、今日あなたをお尋ねしたのには別の理由がありまして。

この物質について調べていただきたいのですが」

教授は、鞄から大事そうにシャーレを取り出した。そこには、ドロドロとした黒い粘度の高い液体を取り出した。」


教授曰く、その物体は熱に強く、ありとあらゆる衝撃にも耐えるのにも関わらず

人間の意思に反応して形を変えるという非常に奇妙な物質らしい。

私がその物質に触れて、固まれと念じると即座に私の思い描いた。

立方体へと変化した。その奇妙な光景に私は驚愕していると教授は言った。


「驚いたでしょ、実は、この物質はとある山奥の神社の御神木の樹液なんですよ

こんな話、誰も信じてくれないですし、これについて研究したとしたら学会から馬鹿にされてしまうし、正直今の研究に追われてこの物質の調査ができません。

そこで、あなたにこの物質のある御神木の取材を行っていただきたい。」


正直、信じられない話だが実際にある以上嘘ではないのは確かだ。

この教授には幾度となく取材でお世話になっているので私は調査協力に応じた。


そして、今この御神木の前にいる。御神木にはしめ縄がされいかにもな面持ちで友禅とそびえたっていた。私は、木の表面にふれ徐にコンコンと叩いてみた。


すると、中から声が聞こえた。

「いるよー」そんな感じの声だった。


もう一度叩く

するとまた、中から「いるよー」と声がした。


また叩く

「いるよー」


また叩く

すると、ウィン!という音と共に御神木の中から得体の知れない人形の何かかがでできた。

「いや、いるったら!」そう何かが叫んだ

私が愕然としているとその何かが続けた。


「いや、何?勧誘か何か?俺は入らないよ」そう言うとまた御神木の中に入ろうとしたので引き留めた。


「待ってください、私はこういうもので、あなたはなんなんですか?」

私は、自分の名刺を渡しながらその何かに聞いた。


何かは名刺を見ながら言った。

「ん?ライターさん?俺は変な取材は受けないよ」

「いやいやそうおっしゃらずに、どうかあなたの話を聞かせてください。

あなたはなんなんですか?」

「俺か?俺は、昔からここに住んでる者だ、ごらんの通り人間じゃない。

以上!さ、帰った帰った」


「あの、最後に教えてくださいあなたはなぜここに?

そして、あの木はあなたの家なんですか」


何かは、少し考えため息をついて言った。

「バカンスで宇宙旅行をしてて宇宙船が壊れて降り立ったら

ここだったんだよ、これは簡易居住地って言ってこれくらいのサイズで持ち運べて

地面に刺すだけで居住地になるテント見たいなものなの」


宇宙人は、手的なもので大体80cmくらいの幅を作りながら言った。

「昔は帰る方法を考えたけど、仕事もリモートでなんとかなるし

ご近所さんもいい人ばかりだからここに住むことにした。飯もうまいしな」


そういうと、その宇宙人はまた御神木の中に入っていった。


果たして、教授になんて説明しようか、そんなことを考えながら山を降りた。


後日、教授に会いに行った。すると、教授から意外な言葉が飛び出した。

「いやぁ、この前見せた物質の件なんだけど、あのことは忘れてほしい

どうやら、あの情報はデマだったみたいだ。ご足労かけて本当に申し訳なかった。」


教授には、あの日の話をちゃんと説明したが、冗談だと捉えられてしまった。


狐に摘まれた気分で帰路についた。

ちょうど、夜風に当たりたい気分だったので近所の公園に入った。

ぼーっと考えごとをしながら歩いていると目の前の大きな木にぶつかった。


ぶつけたところをさすりながら思った。

「こんな、大きな木ここの公園に生えてたかな?」

しかし、これ以上大きな木には関わりたくない。そう思って公園を後にした。

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