流刑
強い日差しに耐えかねて私は目を覚ました。ここに漂流してきて2日目の朝を迎えた。
その日、仕事の関係で珍しく出張があり船に乗っていた。私の乗っていた船は航海の最中嵐に巻き込まれ転覆した。沈没する最中近くにあった救命胴衣を纏ったことで命だけは助かった。しかし、気が付くと誰もいない島に流されていた。
私は、昨日1日は呆然としながら私同様に流されてくる船の残骸を見つめながら1日が過ぎてしまった。日が沈む頃になり我にかえり夜を迎える準備を何もしていないことに気がついた。しかし、日が傾いてから沈むまでの時間は恐ろしく早かった。気が付くと私は夜の闇に呑まれていた。その日は、浜辺で息を殺して眠ることにした。
ひとまず、漂流物の中に何か役に立つものがないかを探した。しかし、漂流物には役に立つ物は何もなく船の破片等が流されてくるだけだった。まぁ、いずれ役に立つものが流れてくるかもしれない。そう、自分を落ち着かせながら次にこの島の散策をすることにした。しかし、都会でのデスクワーク生活に慣れきっていた身体に24時間飲まず食わずの状態での島の散策は想像以上に体力が消耗していった。
特段成果も上げられずに、また日が傾き始めた。そして、2日目も終了した。
3日目の朝また強い日差しを受けて目が覚めた。しかし、2日間飲まず食わずで動き回ったせいで意識が朦朧とする。全身筋肉痛の痛みでなんとか意識を保っている。
正直、動ける状態ではなかった。
これも私の運命なのか、人生とはこうもあっけなく終わるものなんだな。そう考えると私はひどく後悔した。
こんなことなら、なんとなく観れていなかった映画をもっと観ておくんだった。
こんなことなら、数少ない友人ともっと時間を共にするんだった。
こんなことなら、意中の人に気持ちを伝えておくんだった。
こんなことなら、もっと人生を楽しめばよかった。
そんな、考えを巡らせながら薄れゆく意識の中、ふと隣を見ると昨日まではなかった木の箱が漂流されているのに気がついた。私は最後の力を振り絞り身体を起こし、その箱をみた。その木箱には、「封」と書かれたお札が無数に貼られていた。
正直、中身は期待できなかったが藁にもすがる思いでその箱を開けた。
箱の中には1体の日本人形が入っていた。
私は、それを見ておのずと涙が出てきた。がっかりしたという感情よりも
最後に人間の形をした何かと共に最後を迎えることが、死への恐怖が少し和らぐ気がしたのだ。
人形を強く抱きしめこう人形にいった。
「お前も1人こんな何もない場所についてさぞ辛いだろう
大丈夫だ、ほんの少しの間だけれども私がそばにいてやる」
そう言い終わると私はゆっくりと目を閉じた。
「皆さん!、昨日の”捨てても捨てても戻ってくる呪いの人形を海に捨ててみた”はお楽しみいただけましたでしょうか!!!」
「今日は捨てた人形が言い伝え通り、何もなく飾り棚に戻ってくるのかを皆様と一緒に確認したいと思います!!」
二人の男は、カメラに向けてそう言い終えると奥の襖に近づいていった。
「ここを開けると噂の飾り棚のある部屋ですねぇ」
「それでは、3,2,1....」
2人の男は襖を開けた
「「!!!!誰だおっさん!!!!」」
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