光る

 まるでゲームみたいにアイテムが光って見えるといいのに。みなさんそう考えたことはないだろうか?断言できる。絶対にない。


 ここまで、聞いてお察しの通り僕には身近に物がたまに光って見える。

しかも、ほとんど役に立たない。でも、その光を見るとどうしても手に取らずにはいられない。正直、こんな能力全くもって必要ない。


今回は、そんな僕の一日を見ていただこう。


 ある朝、鼻をが痛くなるようないい匂いと共に目が覚めた。どうやら、昨晩手に

取って眠りについた「柔軟剤」を潰してベットにぶちまけていたようだ。僕は落胆しながらシーツを洗濯機に投げ込んだ。逆に「柔軟剤」でよかった、そう自分を納得させながら洗濯機を回した。


 気を取り直して朝食を摂ろうとリビングに向かうとリビングにあった「椅子」がぼんやりと光っているような気がした。こうなったら止まらないもう手に取るしかない。僕は、背もたれを掴むと立ったまま朝食を食べ始めた。この症状は基本的に時間が経てば光が消えるが消えるまではなぜか手放せない。出社の時間までには消えてくれないと「椅子」を手に抱えて出社することになる。僕は祈りながら出社の準備をした。


そして、「椅子」を小脇に抱えて家を出た。


 近くを通る人の目線が痛い。電車に乗った時は本当に酷かった。そりゃそうだ満員電車にマイ椅子を持ち込んで立ってる奴は誰が見たってやばいやつだ。そんな思いをしながら僕は会社に到着した。車内で間違えて座ったおばあちゃんをどかしたときは本当にいたたまれない気持ちになった。


 会社では、僕の変な奇行には慣れたらしくあまりいじられなかった。


 そんなこんなでお昼の時間になった。

今日は、午後違う会社の社員と対面での打ち合わせが控えていた。

資料に一度目を通しておきたかったのでコンビニで軽い昼食を買って自分のデスクで撮ることにした。コンビニで買い物の途中ふと見たお酒の棚に並んでいる「スミノフ」がぼんやりと光はじめた。まずい、仕事中にしかも社外の人間との打ち合わせに「スミノフ」を持っていくのは正直やんちゃすぎる。このままでは、まるで渋谷でパーティする意識だけ高くて、若いだけで、周りを馬鹿にしていて、実は悪い大人に利用されている愚者じゃないか!これでは、大事な話もまとまらない。抑えろ抑えるんだ自分


気づくとおにぎり2個と「スミノフ」を手にエレベーターを待っていた。


会議までにこの光が消えるといいが…


もちろん、消えるわけはなかった。

会議中は、上司はすごいしゃべった。おそらく僕に視線を向けないためだろう。

僕は、なるべく目につかないよう存在感を消した。しかし、このご時世少人数での打ち合わせが基本。私は、いやでも目についた。取引先の人間も基本的に気を使ってあまり触れないでくれているが実際気まずい空気がずっと流れていた。


もう、この空気を解消するために飲んでしまおうかとも思ったが流石に仕事中まずい。私はこの時間がすぐにでも終わることを期待した。


なんとか打ち合わせは終わったが全く話が捗らなかった。


そんなこんなでなんとか今日の業務も終了した。


僕は、会社の屋上で持ってきた椅子に腰掛けて「スミノフ」を飲んだ。

飲み終わると光は消えていた。


帰り道、道中にあるパン屋をふと見ると「フランスパン」が光っていた。

しょうがないかと思いながらパン屋の「フランスパン」を買って帰った。


今日は、本当に疲れた。すぐに寝よう。


僕は「フランスパン」を持ったままベッドに入った。

今日は、精神的にも肉体的にも本当に疲れた。椅子を持って帰るのは本当に疲れた。

会議中の気まずい雰囲気も本当に嫌だった。


でも、朝ご飯を調達できたのはよかったかもな。そう思いながら眠りについた。


みなさん、ここまで読んでこんな能力欲しくなりましたでしょうか?

正直いりませんよね?

あと、お気づきになりましたか?光るアイテムの順番が全てしりとりになっているということに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る