ドーナツ
「たとえばの話なんだけど、お前の前に大好きなドーナツがあるとしよう」
友人は、そう言いながら俺の目の前にドーナツと紅茶を置いた。
このドーナツは、俺と友人の大好物で、いつもこのドーナを求めて行列ができている。並んでも買えない時があるくらいだ。
「それがどうしたよ」
俺は、そう言うとドーナツを手に取り一口食べた。
「いつも通りめちゃくちゃ美味しい。普通のドーナツだ」
友人は、それを聞くと満足気な顔をして喋り始めた。
「たとえば、3日前、ドーナツを食べようと机の上に置いたままトイレに行ったとしよう。トイレから戻るとそのドーナツがな忽然と消えていたらどう思う。」
俺「それは、悲しいな」
友人「じゃあ、ここにもしタイムマシンがあったらどうする?」
俺「急にどうしたんだよ」
俺は急な友人の発言に少し怪訝な顔をした。
友人「もしもの話だよ」
友人は笑顔で言った。
俺「それなら、そうだなぁ、多分、ドーナツがどうして無くなったのか見にいく」
友人「そうだよな!でも、いつまで経っても何も起こらずに違う時間の自分に
鉢合わせそうになったらどうする?」
俺「んー、思わず持って帰っちゃうかも!」
友人「そうだよな!でも、もしも、この時間に持って帰ったら、ドーナツを盗んだ犯人は自分ってことになるよな」
俺「お、おう」
友人「そのことにドーナツを食べ終わった後に気づいたとしよう。それで、何を思ったか新しいドーナツを買ってその時間に置きに行ったとしたら。最初のドーナツはどこに行くんだろうな?」
俺「はぁ?そんなのお前の腹の中じゃん」
友人「そうだよな、でも、そもそもドーナツが無くならなければドーナツを盗みに
行かないよな?じゃあ、俺が盗んだドーナツはどこに行くんだ?」
俺「えっ?それなら、最初のお前が食べるんじゃないの?」
友人「でも、それだと2個目のドーナツはどう説明するんだ?どこに行った?」
俺「あっ」
友人「そうなんだよ、ドーナツは必ずどこかに消えてしまうんだよ。
俺の仮説なんだけどな、多分、無限のパラレルワールドからドーナツが次元の
狭間みたいなところに集まってどんどん増殖していくんだと思う。
そしてどこかのタイミングで急に次元の亀裂が空いてそこからドーナツが次々と出くる。そこから徐々に亀裂が広がっていずれは世界を崩壊させるんだと思う。」
俺「何を突拍子の無いことを...そんな、頭の痛くなるようなこと言ってないで
ドーナツ食おうぜ。せっかくのドーナツが不味くなっちまう。」
友人「そうだな、たくさん食べろよ!いっぱいあるぜ!」
そういうと、友人は45Lのゴミ袋いっぱいに入ったドーナツを俺に見せてきた。
友人の目はわらっていなかった。
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