第4話 巨乳より貧乳を信じ続けてくれる限り、ズッ友ですよ。
「さ、これで分かったでしょう? 今の貴女はレーヴァの毒にしかなっていないんです。彼を想う心があったのならば出てってください」
少々キツい物言いだけど、これくらい言わなければ面の皮の厚さが天元突破しているエルザには届かないでしょう。しかし、そんな事くらいでめげる女では毛頭なかったようで……。
「おかしいわよ?だって私はレーヴァに愛されてるんだもの」
「ええ、愛されてたでしょうけど、貴方が全部無下にしたからこうなったんじゃないですかね?」
「は?私は裏切ってないが?」
怖い。裏切ってないとか言ってきたんですけども、何を言っているのでしょうか。大きな胸の間に腕を挟み込みながら、レーヴァにアピールするように、ハイライトのない赤い目を彼の下半身に向け……。この女は身勝手に自分の思いだけをぶちまけてきたのです。
「私が最初にレーヴァの事を好きになったのよ……!!それを横から取るなんて……駄目よ……」
エルザが右腕を微かに上に向ける。その動きを僕は見逃さず……、拳を同時に抜いた次の瞬間──。
「……僕の一撃の方が素早かったですね」
一撃。左の拳がエルザの腹部の半分を吹き飛ばした。
戦いと呼ぶにはあまりにも早すぎる決着。音よりも早く戦う者達の世界とは常にこういうものだ。
レーヴァと旅をしていた、三人の魔力を多く含んだ間男の力を得た為か、僕の拳の速度は更に素早く、鋭く、強固となっていた。
本来ならば僕などよりも遥かに速いエルザの拳を僅かに上回っていたのです。
「くっ……、そんな事言ってるけど……、本当は一緒に居ても良いと思ってるでしょ?」
「腹を半分吹き飛ばした相手に何を言っているのです。大人しく去ってください、これ以上は不快です」
殺すつもりの一撃だったが、光の聖女という物はこの程度では死なないらしい。そしてこの期に及んで、まだこちらに居座れる僕の慈悲を期待していたとは。だがこの女にかける言葉は最早一つしか存在しません。
「さっさと失せろ。僕たちの前に姿を表すなよ淫売」
流石に堪えたのかエルザは涙目でその場を立ち去る。チラチラとこちらを見てくる辺り、泣けば何とかなると少しでも思ってるのだろうが大きな間違いだ。
これからエルザが僕達と共に旅をし、一緒の空気を吸うことすら僕は許す気はない。
「……百合もイケるよ?」
ピラリと豊かな乳房を見せつけてくる。
「お前の頭部をふっ飛ばしてやってもいいんですが」
「ふんっ!!レーヴァの子種で母乳を撒き散らすのは私よっ!!!!」
何と醜い捨て台詞だろうか……。
◆
「そういうワケでエルザは、これ以上レーヴァを傷付けたくないと自分から出ていきました」
「そうか……」
流石に追い出したと言えば、彼の事だから居座っても良いなんて甘いこと言って、エルザに付け入る隙を与えるでしょうし、少々心苦しいのですが騙しておく事にしました。それに彼の甘さを此処で僕が怒ったとして、それは治らないでしょう。
その甘さこそがたった今、彼が勇者として立ち上がっている理由であって、そこを根っこから圧し折ってしまえばもう彼は立てなくなる。
彼をこれ以上追い詰めるのだけは嫌でした。だから僕は彼の弱さも何もかもを認めて一緒に居てあげようと思ったのです。
彼の旅の最終目標を最後まで教えてもらっていない僕では、彼の仲間としての信用を勝ち取れていないことは自覚している。
それでも友達なのです。彼が友達を裏切るなんてしないと分かっているからこそ、僕は彼に着いていける。
僕は彼女達とは違う、友情の想いを彼に捧げましょう。
ならば彼に言うべき言葉はただ一つ。
「まだ話してくれてないこともいっぱいありますけど……、今は良いでしょう、ゆっくりと僕を信用してくれるまで待ってあげます。だから怯えないでください。僕は君の側に居ます」
彼が慰めて欲しいと言ったわけではない。これは僕が君に捧げる誓いでしかないのだから、それが返ってくることを期待はしない。
ああ、どうか君の行く手が穏やかでありますようにと。僕は祈りましょう。
「……やっぱり笑ってる」
「そうかもしれませんね」
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