第7話 貴方で良かったぁ

やっと着いたな。

入り口探すのが1番大変だった、まさか草で隠れてるとは思わないじゃん?


滝の裏にある事に加え、夜で明かりなど月の光ぐらいしかなく、スキル〈暗視〉があるとはいえ殆ど何も見えず探すのに苦労したようだ。

健斗は落ち葉を集めネフティーを下ろす。


これから俺はどうなるんだろうな。


健斗は考える。

さっきまでは騎士達から逃げるのに必死でゆっくり考える時間はなかったが今は少し余裕がある。

ネフティーに目的は世界征服と聞いている、聞いてすぐの時は断ろうと思っていたがネフティーをネフティーを見捨てる事になるんじゃないかと。

だが考えても答えは出なかった。


はぁ、1人で考えても仕方ないし奪った知識の中にある使えそうな魔法使ってみるかな…


「はぁ…」


「どうしたんですか?」


「え!」


起きてたー!全然気づかなかった。


「疲れたんですか?私が見張ってるので交代しましょう」


「いや大丈夫ですよ。それにネフティー様全然休めてないじゃないですか」


健斗は身体が骨のお陰で身体的な疲労は無いようだ、だがネフティーも引かない。


「私少ししか魔力使ってませんし走って疲れちゃっただけなので少しの睡眠で問題ありません。ケントさんの魂は世界を渡りましたし休憩なしでずっと動いてたんですから休みましょ?」


「いやいyーー」


「問答無用!」


健斗が断ろうとするとこのままでは埒があかないと判断したのかネフティーが強行手段に出る。

健斗の霊体がスケルトンから追い出されネフティーに膝枕される形で横にされ影から出てきた黒い手に拘束される。


「え、ネフティー様?!」


「うるさいです、寝なさい!」


理不尽だろ〜、あれ待って俺初膝枕じゃね?


そんな事を考えながらネフティーに話しかける、抜け出そうとすると黒い手の拘束がキツくなるからだ。


「少し話しませんか?」


「なんでしょうか?」


「ほら、この世界を征服したい理由ですよ。」


「この世界にいる神共が嫌いだからですかね〜、魂まで完全に消せたらもう最高です」


え、野望とかなかったのか?

ほら世界を我が物にするとか、人類を滅ぼして綺麗な世界を作る、みたいなさ。


「それだけですか?」


「え?はい!それだけですよ」


健斗は目を閉じた、しょうもないとまでは言わないが大きな野望を抱えていると思っていたのがまさかの好き嫌いだったなど信じたくなかったのだ。


「眠くなりました?ゆっくり休んでくださいね」


「あ、うん…」


もうそれで良いや…


夢の中へと旅立つ。

それから暫く経った頃、ネフティーは拘束していた魔法を解いた。


「よかった、よかったぁ!本当に良かった!アハハ!」


人が変わったかのように笑い始めるネフティー、その顔は笑ってるようにも泣いてるようにも見える。


「何人も、何人も連れて来たのに此処まで私の事を考えてくれたのは貴方だけ。まぁ少しサポートはしましたが」


かなり大きめな声を出しているのに健斗は起きない。


「目的の為なら仕方ないのに人間だからって断ってくるんですよ?」


ネフティーは膝から健斗を降ろし上に乗りながら顔を近づける。


「だから人間じゃない、魂だけの貴方を召喚したんです。世界征服って言った時の反応にはびっくりしましたよ?面白い冗談を言ってくれるなんて…私は一切手を加えませんでした自分の心を押し殺して私に言ってくれた貴方自身の答えだったんです」


少しだけ怒った様な顔になり声が少し荒くなる。


「最初に私を否定して軽い理由を説明したら怒り出す様な奴ばかり…貴方は否定しなかった、私を受け入れてくれました。でも怖いんです本当の事を言えない私を許して」


健斗の首が少しだけ動いたのを肯定したと捉えたネフティー、抱きついたあと耳元で囁くように言った。


「本当に、貴方で、よかったぁ〜。ずっとずっと一緒ですよ、離れちゃ嫌です」


ネフティーは健斗のステータスの中でも加護の欄をみつめている、そこには消されていたような跡があったが今はしっかりと読むことが出来る。


そこには


〈加護〉

痛覚無効  精神安定

女神依存  残虐思考  


「まだ見せるのは早いですね、ずっと一緒にいたいですもん…消しておきましょうね」


健斗が加護を知る事はまだ先の事になるだろう。

いや知る日なんて来ないのかもしれない…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る