騎士団side 助けられなかった…

邪教団のアジト制圧の任務を受けたアーレス王国第二騎士団、制圧は順調に進み被害者も出る事なく無事に終われると思われていた。

しかし無事には終わらなかった。


「見つかりませんでした…」


「そうか…」


一際大きなテントで騎士団の中でも地位の高い者が集まり会議をしている、議題は奴隷の少女と殺害されてしまった騎士について。


「なぜ少女をまた攫いに来たのかが問題だな…」


「あの少女が教団にとって重要人物だったのでしょう、でなければわざわざ奪還などしないかと思われます」


「教団側の聖女とも考えたが隷属の首輪をされていましたし生贄かスキルが目的でしょう」


「見張りをしていた彼は決して弱くありませんでした、彼を殺害できるほどの手練れですと幹部クラスしかありえないですね」


「だが主な幹部達は殆ど捕縛、残りも死亡確認しています。捕縛と言っても契約魔法で質問に答えられないようになってます」


話し合っている者達は頭を悩ませている、どれだけ考えても騎士団の実力者を殺し少女を攫った犯人がわからない、第三者又は他の組織の者の可能性もあると考えている。


「生きていたのもあの子だけですし少しでも内情を聞ければよかったのですが…」


このまま会議を続けても答えに辿り着く事などない、まさか保護した少女が騎士を殺し自ら逃げたとは思わないし考えない、現場には少女のものと思われる血が残っていたのだから無理矢理連れ去られたと思っている。


「ダニス団長どうするんだ、あの子を探すのか?」


「個人的に探してあげたいとは思うが今の騎士団の状態じゃ無理だろうな」


「そうだよな。全員相手の策にハマったって落ち込んでやがる、此処に残ってた奴等なんか良くて自信喪失、悪くて騎士団を辞めるって言い出す程だ。所詮は奴隷だった少女1人にそんなに考える必要なんて俺は無いと思うがね」


「もっと他の言い方があるのでは?ホルスト隊長」


「事実だろ。辛気臭い奴等ばっかで士気が下がってしょうがねぇ、まだ敵が近くに潜んでる可能性もあるんだ思うのは自由だが表には出すなって話だ」


部隊長であるホルスト・ギデイブ、貴族の出だが口調が荒く評判は良くない。

だが冷たい言葉を誰も責める事はない1番仲間を思い騎士として誇りを持っていると知っているから、今回の件で殺された騎士は彼の部下であり彼も仇を取りたい気持ちでいっぱいだろう。


全体の士気が落ちている少女の探索を行えばある程度は持ち直すだろうが…


騎士団長が結論を出し騎士達に向け話す。


「少女の探索はしない。明日教団の施設を完全に破壊し帰還する事とする」


だがオークリーを殺せる実力者とぶつかる可能性もある、騎士達の安全を考えれば仕方あるまい。


数人は納得していなそうな者も居たが反対意見は出ず会議は終了となった、騎士団長と部隊長のホルストのみ残り殺された騎士オークリーの元へ向かう。


「刃物は使われていない、鈍器それこそ石で殴られた様だな」


「これは…後ろから1発をまともにくらって気絶したのか?犯人は隠密に長けている?」


「少なくとも〈気配遮断Ⅳ〉にプラスして似た系統のスキルを使っているだろうな、Ⅴ以上の可能性もあるが盾兵であるオークリーを一撃で気絶させる事ができるなら作戦行動中に我々の陣営にもっと被害が出てるはずだ」


「ダニスさん、俺だけでも残っちゃダメか?」


「ダメだ、俺は絶対に許可しない」


縋るようにも聞こえたホルストの願いを騎士団長であるダニスは許さない、それが騎士団長ではなくダニス・ゴーサルズ個人でも絶対に許可は出さなかった、家族ぐるみで関わりのあったホルストに死んで欲しくは無いのだろう。


「そう、ですか」


「国に帰ったら違法組織を調べるぞ、泣いている暇なんて無くなる今だけだ」


「は、はぃ……」


騎士団長は外へ出たホルストが1人で落ち着く時間を作るために。


「やりきれんな…」

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