第28話 都市の幕切れ
後から聞くと、ハルの時空魔法は空間属性寄り?なるものらしく、俺のものは時属性?が強いらしくそれの融合であのブラックホールに対抗できたらしい。なんとも不思議なものだ。やっぱり魔法というものはまだまだ未知が多くあり奥が深い。
だが一件落着とはいかず、代償はあまりにも大きかった。
魔法都市トートラスは、超高濃度の時空魔法の衝突により、そこだけが時空の流れから切り離されたらしく、完全に時間が止まった状態で時空の狭間なるところに浮かんでいるらしい。
ハル曰く、かつて彼女の姉が使用しようとした魔法に近い現象が起こったらしい。そして現状の俺たちではもうどうしようもないという。
それにやはりというか、俺はどうやら魔法を放った直後、魔力枯渇によって気を失ってしまったらしい。
必死に記憶をかき集めて思い出せたのは、視界が一瞬にして真っ白に染まり、世界が揺れ、あらゆるところに鏡が割れたようなヒビが入っていき、最終的には逃げるためハルに腕を引っ張られたところまで。
そして、これはおそらくイリスさんの最後の声だろう。
「お元気で。またいつか、会える日を」
その声がかすかに、記憶の底に眠っていた。
俺以上に、ハルが分かりやすく俯いて落胆していた。救えたはずの大多数の人間たちや、イリスやガイオスを、救えなかった。それどころか私たちだけが助かってしまった。彼らはまだ死んではいないらしいものの、現状打つ手無し。敵であった側近たちの属する教団の連中も、四人の反応が消えたことで更に活発に動き出す。下手すれば俺たちの存在が知られていてもおかしくはない、とのことだ。
それに、俺に魔力枯渇に陥るまでの力を使ってもらいながらの結果がこのザマというのは、天使族である彼女のプライドに大きく傷をつけてしまったのかもしれない。
「……今はまだ難しいだろうけど、いつか力をつけて、またいつかイリスたちを助けに行こう?」
「……そう、ですね……」
俺なりに彼女を励ましたが、中々落ち込んでいる女の子を励ますというのは難しいようで、彼女の顔色はあまり変わらなかった。
「今すぐには切り替えるのは難しいかもしれないけど、とりあえずまた前を向いて、また一緒に頑張っていこう……?ね?」
そう言って彼女が以前してくれたように、そっと優しく抱擁した。
「とりあえず、近くの街か村かに向かおうか」
「そうですね」
とは言ったものの………ワープホールから出てきたためそもそもここがどこかすら分からなかった。
はたして一体俺たちはどこに来てしまったのだろうか…………。
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