第22話 爆発と揺れ
俺たちが連れてこられたのは、都市の最奥にそびえ立つ王宮……の一つ手前の建物だった。
石造りの白く塗られた建物。外観こそ王宮のように煌びやかな装飾が施されている訳でもないが、中は設備が整っており、要所要所に煌々と輝くガラスや宝石などの装飾が見られた。どうやらここが王皇軍の本拠地らしく、兵士たちは勿論、補給や治療のための人員らしき人も見られた。
「──ずいぶん豪華だね……」
「そうですね……いや、そんなことを考えてないで、ここからどうするか考えてください?」
「まぁでも、ここまで来たら協力するしかないんじゃないかな?」
「それも……そうですね……」
俺たちはタロスに連れられ城内を歩きながらも、他の兵にはあまり聞こえないよう小声で会話をした。もうここまで来てしまったら、ある程度協力しない限り解放されないだろう。
ハルの魔力なら、この建物はおろかここ一体を破壊──なんなら空間魔法を使って逃げることも出来るだろうが、流石にリスクが高すぎる。ここは相手の本拠地でもある。それに、都市の人間にとって俺たちは得体の知れない奴等なのだ。ほぼ常に監視されていると思っていいだろう。
「部屋は……その……一つでも構わないか?」
歩きながら唐突に上官のタロスに質問された。
「構いません」
俺がどう返事をしようか悩む暇もなく、彼女に返事をされた。
返事早すぎない??と思う間もなく、
「何が起こるか分かりませんから、一緒にいた方が便利かと」
そう耳元で小声で囁かれた。
はい、ごもっともですね……。
「少ししたら、王に面会してもらう。それまで、しばしゆっくりしているといい。あと、私が呼ぶまで部屋からは出ないように」
「分かりました」
歩きながらいくつか些細な問答をされながらも、気づけば部屋の前まで来ていた。二階、いくつもある通路の一番突き当たりの場所だ。当面はここで過ごすことになるらしい。部屋内は、想像以上に広く、おそらく客室か何かだと容易に推測できる程、綺麗なものだった。
──ゆっくりしていろと言われても……やることがない。部屋から出れもしないし。
どうしようかいう視線をハルに投げかけると、彼女ははーっと息を吐いて、ベッドに倒れ込んだ。
「……なんか気を使いすぎて、疲れちゃいました。ちょっと横になるので、あの人が来たら起こしてくれませんか?」
こちらから見ても分かるくらい、彼女の表情に疲れの色が出ていた。まぁ、いくら胆力があろうと、こうも連続して気を張っていればそうなるはずだろう。
「分かったよ。起こすし、ゆっくり寝てていいよ」
「ありがとうございます」
そうして、彼女は横になった。
一緒に寝る……ことも一瞬頭をよぎったが、残念ながら目がギンギンに冴えてしまって寝れそうにはない。それに、安眠を妨げるようなこともしたくないからなぁ。
さて困ったぞと思い、ついに部屋内を適当に物色し始める。
結果から言えば、俺の興味を引くようなものは一切なかった。本の一冊でもあればどれほど助かっただろうか、図書館で借りておけばよかったなと、悔いてももう遅い。
ドカァァァーーーーーン
そんなことを思っていると、城内から爆発音が聞こえてきた。グラグラと建物が揺れて、部屋内の装飾の一部が床に落ちる。
何が起こったのか分からないまま、再度爆発音が響き渡る。今度の方が音が大きい。
部屋からでも廊下を走る兵士の足跡や声が聞こえてくる。二回も爆発が起こったのだ。城内は大混乱だろう。
とりあえず、俺はハルを起こすことにした。彼女はまだすやすやと眠っていた。安眠を妨害してしまうのは心苦しいが、おそらく外は非常事態なのだ。許してほしい。
俺が起こそうと手を伸ばした瞬間、三度目の爆発が起き、彼女は目を覚ました。
「…………何が起きているんです?」
「分からない。爆発音が三度鳴り響いて、おそらく城内は大混乱なはず」
「えっ?三回も??」
……どうやら一、二回目は聞こえてなかったらしい。まだ寝ぼけ気味の彼女を催促し、俺は部屋のドアを開ける。
……どうやら近くには誰もいないようだった。
「ガルアさん、これからどうするんです?」
「とりあえず、何が起こったか知りたい。危険かもしれないけど、音の鳴った方に向かおうと思う。
「分かりました。用心深く行きましょう」
詳しい場所は分からないけれど、地面から突き上げるような揺れだったのと、音が明らかに外からのものではなかったため、爆発は地下からのものではないかと推測。
……まぁそもそも地下があるかどうかも分からないのだけれども。
「ハル、空間認知みたいなことが出来る魔法って、使えたりする?」
ふと俺は思いついたことを彼女に聞いてみた。
「……魔力探知ならもうやってますよ。詳しい規模や人数までは分かりません。ですが、地下にとても大きな魔力が点在しています。その周辺には大小様々な魔力の動きも見られますから、何かしら行われていても不思議ではありません」
「わーさすが。天才。頭が上がらないよ」
「褒めても何も出ませんよ。……少なくとも今は」
ジト目で睨まれた。最後の方は声が小さくて聞きとれなかったが、どうせ関係のないことだろう。
無駄話はその辺にしておき、俺たちは地下へと向かった。
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