第20話 なんでも屋
「すまないが、反逆者を全員捕まえるまでは、関所は閉じろという上からの命令でね……。もし仮に変装されて逃げられても困るからね……」
「うぅ……そんなぁ……」
次の日、俺たちは厄介ごとを避けるべく、都市を出ようとしたのだが……どうやら当面封鎖らしく、出ることも入ることすらも出来ないらしい。
「どうしますか?図書館も臨時休業ですし……この揉め事に関わっても良さそうな未来が見えませんし……」
二人でしばらくどうするか頭を悩ませていたが、ふと一つ思いついたので、俺は提案してみることにした。
「昨日親切にしてくれたノトスって人が確か店やってるって言ってたし、どうせ時間潰すだけなら、行ってみない?」
「……ありですね。もう少しこの都市の情報も欲しいですし」
意見も一致したことで、俺たちは『魔法関連なんでも屋』に向かうことにした。
「開いてる……のかな?」
closeの文字も書かれていなかったため、恐る恐る扉を開けてみると、カウンターには眠そうにウトウトしている男性が立っていた。おそらく昨日のあの人で間違いないだろう。
「……?お?先日の兄ちゃん達か、いらっしゃい。その顔を見るに、どうやらこの都市から出られなかったんだな」
笑い顔を浮かべてノトスは言った。
「この店は……一体何を取り扱っているのですか?」
どうやらハルもこの店が少し気になったようだ。
店内はどちらかと言えば、かなり年季が入っており、古く見える。だが見たところ、いつの年代の物かも分からないような本や道具もあれば、かなり最新式の機械や道具、真新しい本等が様々に置かれている。
おそらく何かしら魔法に関わった物なのは間違いなさそうなのだが、それにしては見たことのない物が多すぎる。
「おう、まぁ戸惑うのも無理はない。この店は店名の通りほぼなんでも取り扱ってるからな。都市外の物もたまに取り寄せたりもするし、結構珍しい本なんかも置いてるから、これでも毎日結構客入りは激しいんだぜ?」
「そういう割には今日は閑古鳥が鳴いているようですが……」
ハルがすかさず冗談めく言う。こういう所は彼女には相変わらず敵いそうにない。
「さ、さすがに先日の騒動の後じゃあなぁ……」
店主・ノトスはバツが悪そうに頭を掻く。それもそうだろう、ここに来るまでも今日はそこまで人とすれ違わなかったし。
そんな会話をしていると、急に店の扉がガタン、と横暴に開けられた。
外から入ってきたのは、武装した兵数人だった。また、扉越しに、外にも待機している兵士が何人もいることが確認できた。
鎧や武器には紋章が付いていることから、おそらくこの都市の兵士なのだろう。
俺もハルもノトスも、一瞬何が起こったか分からず、目を丸くしてその光景を見ていた。
少しして、明らかに兵士とはまた異なった上質な鎧を纏い、長く鋭い槍を持った男が入ってきて早々こう言った。
「ここに、入国の際水晶球を割ったという人物がいると聞いたが、左様か」
俺もハルも突然のことすぎて、すぐに言葉が出てこなかった。
魔力自体は魔道具で隠しているため、まだバレてはいなさそうだ。だが、何故ここにいると分かったのだろうか。これも都市のカラクリが関係しているのか。
俺は返事に困った。おそらく彼らの目的は水晶を割ったハルだ。彼女がそうだと答えれば、十中八九連れていかれ、どんな目に遭うか分からない。逆に嘘をつくこともできるが、バレて下手をすればこの場で八つ裂きだ。この男は手練だ。この距離の近さも相まって、逃げることも出来ないだろう。
そうこう迷っているうちに、ハルが口を開いた。
「────私が水晶を割った人物で間違いありません」
凛々しく男を真っ直ぐに見て言い放った言葉に、恐れなど微塵も含まれていなさそうだった。
途端、男と兵士たちの顔が少し晴れやかになった。そして、全員がその場に膝をつき、代表して男がこう告げた。
「貴女を見込んでお願いがございます。是非そのお力をガイオス様の軍の為ににお貸しいただけないでしょうか?」
それは予想外の言葉だった。
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