第17話 魔法都市
魔法都市トートラス。この大陸では最大級の魔法都市であり魔法国家でもある。
俺が追放された都市も魔法は栄えていたが、剣士や武術家なんかも数はいた。だがここは、どうやら魔法使いしかいないらしいとのことだ。
「着きましたね、まさかここまで大きいとは思っていませんでしたが……」
「てっきり知ってるのかなと思ったけど、入るのは初めてなの?」
「近場まで来たことはありましたが、当時は入国が相当厳しい時代でしたから……でも、ここなら魔法の修行は勿論、様々な役立つ本なんかもあるはずです」
そんな会話をしていると、大きなゲートのようなものが見えてきた。勿論、付近に数人の入国管理者のような人も見えたが。
「失礼、この国は一定以上魔力が無いと入国できませんので、この水晶に手をかざしていただけますか?」
いかにも国の役人だという服装を身にまとった恰幅の良い男性が、手をかざすよう促してきた。
……まてよ、魔力量が鍵なのならば、俺は入国出来ないんじゃないのか??
一抹の不安が過ぎる。せっかく来たのに。
「……先に私がやりますね」
俺の不安を感じ取ったのか、ハルが率先して水晶に手をかざした。
「この水晶の色が濃くなればなるほど、魔力の量も質も良いという結果になります」
ちなみに役人曰く、この国で最強クラスともなると、どうやら木っ端微塵に……
パリン。
あ。
やっぱりそうなるよね。
「いたた……すみません、割っちゃいました」
……俺はやっぱりとんでもない子と旅してる??
しかも、割れた衝撃で飛び散った破片が不意に手に刺さり、出血したらしいが、一瞬で回復魔法を使って治していた。
「あ、あぁ、割れた水晶は気にしなくていいからね……代わりは、あるので……」
引いてますよお役人さんたち全員。これ、変に目をつけられて目立ってしまうのでは??
「じゃあ次自分がやりますね」
まぁ自分の魔力じゃ割れることなんて絶対にないから、大丈夫だとは思う。だけど、純粋に今の自分がどれくらいなのか、気になって仕方がなかった。
「──鮮やかな緑色。一般人より少し弱い程度のクラスですね」
「まぁ落ち込まないでくださいガルアさん。何かあったら私がどうにかしますから……まぁなんとなく分かってはいましたが……笑」
俺が必要以上に落ちこまないように彼女は懸命に慰めてくれた。
……最後若干馬鹿にしたような笑い顔に見えたのは多分疲れてるんだろう。
だがひとまず緑でも入国は出来るらしく、一安心した。
結局俺たちは検査の結果問題なく入れるということで、許可証をもらい、門へと向かった。
「────はい。先程、水晶を割る魔力の持ち主が入国しました。二十歳にも満たない少女ですので、心配は無いと思いますが……念のために」
「所長!今すぐ来てください!!」
「なんだ?」
「……割れてます。木っ端微塵とまではいきませんが、一体誰ですかね?」
「ここの役人にこれを割れる奴はいないはずだ。というと、さっきの少年か?」
「いやでも所長、彼は確か緑色だったはずでは?」
「そうだな。俺もこの目で確認した。まさか、時間差で割れるということがあり得たりするのか??」
「それは記録上無いはずです。
「念のため、上には連絡しておくが……なんでこった」
所長は項垂れてしまった。何せ、この水晶を割る人間なんて数年に一度来るか来ないかだというのに。一人来ることですら大ごとなのに、それが、もしかしたら二人も来てしまったというのだから。
「頼むから、平和であってくれ……」
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