第14話 手紙
どれくらい眠っただろうか。
窓の外からは太陽の光が既に差していた。
気怠い体をなんとか起こそうとすると、柔らかいものに当たった。
「……そういえば、一緒に寝たのか」
まだハルは気持ちよさそうに眠っていた。起こさないように立ち上がり、ぐーっと背伸びをした。
着替えるため移動しようとした時、ふと、机の上にメモらしきものを発見した。
……どうやらティアの置き手紙のようだった。
────先日はすまなかった。さて、ここから書くことは本来直接言うべきだったのだろうが、書き置きでの伝達になってしまい申し訳ない。あのダンジョンのことで近々聴取が行われるらしく、既に私たち三人は招集がかかってしまい、おそらくこれを読んでいる頃には王都の使者にあれこれ聞かれている頃だろう。
────これ以上の迷惑はかけられない。王都の人間を舐めるのは危険だ。君たちも色々調べられて、何かしら良くないことが見つかってしまえば、大変なことになるかもしれない。だから、早く街を離れることを勧める。これからの旅の無事と幸運と祈っている。もしまた会った時にはぜひ二人の力になることを約束しよう。
────P.S. 次会った時には昨晩のハルちゃんとのことをたっぷり聞かせてもらうね♪
……思わず天を見上げてしまった。
そうか二人でくっついて寝ているのを見られたか……これは完全に弄ばれている気がした。俺たちのことを気遣ってくれる良い人という印象だったのに。
──最後の一言さえなければ。
…………変なことを考えている場合ではない。
俺はすぐハルを起こし、ティアの置き手紙のことを話した。もちろん最後の文は言っていない。
「……んーー……とりあえずこの街はすぐ出たほうが良いって感じなんですねー」
寝ぼすけ天使は重い瞼を擦りながらも、すぐに俺の言ったことを理解はしたようだった。
しばらく寝起きモードだった彼女も、数分後にはしっかりとした表情で準備を進めていた。
「次、どこに行きましょうか?」
「そうだなぁ、ひとまず近い街から転々とする感じで良いんじゃないかな?」
「そうですね、賛成です。それならいきなり強いのが出る可能性も低いですし、上手く道中の魔物を特訓相手にしながら進みましょうか」
「了解。俺ももっと強くならなくちゃいけないもんな」
そうして俺たちは、この街に別れを告げ、次の街へ向かうことにした。幸い、街を出る際も何の問題もなく出ることが出来た。
「風が心地よいですね」
「そうだね、天気も良いし、たまには少し歩いて行こっか」
清々しい風がまるで二人の背中を押すように新緑の大地を駆け抜けていく。
以前ハルが使った魔法で近場まで一瞬で行くのも良かったが、街を出る際に次の街への行き方は教えてもらったし、天気も良かったのでしばらくは歩いて向かうことにした。
……この時はまだ、密かに跡をつけられていることを知らなかった。
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