第12話 顛末
ぱしん、と俺は頬を優しく叩かれた。
ハルの顔は涙と怒りの混ざったような顔だった。でもそれは俺のことを心配してくれているからこそだった。
「──馬鹿なんですか。あと少しで死ぬ……いえ、跡形もなく消滅してしまうところだったというのに」
「ごめん」
「でも正直驚きました。まだ使えるレベルには全然達していないと思っていたので……どうやったんですか?」
「いや、必死すぎて殆ど覚えていないんだよな……俺以外の四人が死ぬとこまでは覚えてるけど……」
「え、私が死んだのですか??」
彼女はその事実に驚いて目を丸くしていた。私が負けるはずないと、腕にかなりの自信を持っているのだろうが、そもそも出会った当初、魔物に襲われてたじゃないか……
「うん。最終的に魔法の反動で動けないところをね……俺も、魔力切れで助けられなかった。」
「そうですか……私もまだまだ精進しなければなりませんね」
「そういえば、結局洞窟は封印されたんだっけ?」
「そうですね、それと一つ伝えておかなければならないことがあります。時空魔法を使った影響でおそらくあの空間には時空のねじれなるものが出来ていると思います」
「時空のねじれ??」
「はい。異なる時層や空間を繋ぐ通路のようなものです。確率は低いですが異なる世界から招かれざるものが迷い込んでしまうこともあります」
「それってかなりやばいんじゃないの?」
「まぁ、確率は相当低いですし、封印が施されるなら、おそらく問題にはならないでしょう」
若干フラグにしか聞こえなかったが、どのみち現状の俺たちではどうすることも出来ないらしいので、忘れてしまうことにした。
「あ、一番重要なことを言い忘れていましたが、あの三人には時空魔法の事は何一つ言っていないしバレてもいないので、どうか秘密でお願いしますね?」
「分かってる。というかバレてなかったんだね……」
バレたならバレたで彼女たちは悪人ではないと思っていたので、知られてもどうにかなるだろうとは考えていた。だがその事実を知って少しホッとした。
「ちなみにさっきティアが言ってた見たことないような傷跡ってのは?」
「……あれが、おそらく今回の魔法の代償の傷です。私はこれまでに何度もあのような姿になった人を見てきましたから。もう少し遅ければ、あのまま木っ端微塵に砕けて消滅です」
「そうなのか……その点は本当に感謝してる。ありがとう」
それほど、代償の大きい魔法なのだと言うことを改めて認識した。おそらくハルがいなければあのまま消滅していたことだろう。
「いえ、最初に助けてもらったのは私ですから」
「いやでも返せないくらいの恩を受けてるんだけどなぁ」
「ですが、今回のは貴方が魔法を無理矢理にでも発動させなければ、どのみち私も死んでいた訳ですし……それに、これで私の目的にもまた一歩近づきましたから」
「そういえば、ちゃんとした本当の目的を聞いてなかった気がするから、聞いても……いい?」
目的の話が出たので、前々から気になっていたことを恐る恐る聞いてみることにした。
「分かりました。ですが、絶対に他人には内緒ですからね?」
少し悪戯な笑みを浮かべ俺に念押しした後、彼女は真剣な表情で話し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます