第7話 目的
いつもは活気のある料理店だが、このテーブルだけは重い空気が流れていた。
「────かつて私が組んでいたパーティーは、あそこで私以外全員死んだの。ギルドじゃ最高ランクがSなんだけど、当時はAランクのそれもかなり上位くらいにはいたと思う。実績もかなり積んで、周りからの評価も高かった。でも、終わりってのはあっけなく訪れるものなのよね。最後の最後に私だけどうにか逃してくれて……みんなは…………」
後半から目に涙を浮かべながら語るティアに、俺たちは何もかける言葉が見つからなかった。
「私の目的は、敵討ちと、出来るならば遺品回収。本当は、あのダンジョンが公に調査される前に目的を果たしたかったけど、少し間に合わなかったかな」
その眼差しは本気であった。仮に自分が死のうが復讐を果たすつもりだ。
「話を聞く限り、最下層には相当な敵がいるのですね。そうなると、ギルド総出となるとダンジョンが過度に荒らされて面倒になったり更に犠牲者が増えたりする危険性があるかもしれない……ですね」
ハルの考えはおおよそ当たっていたらしい。ティアはゆっくり頷いた。
「──この二人、ジザとコクアに関しては……口数は少ないけど実力もあるしいい奴だから、心配しなくていいよ」
そういえばこの二人が喋っているの一度も見ていなかったので、折角なので彼らにも話を振ることにした。
「そういえば、二人はどうして?」
「俺は、複数の魔物に襲われている所を修行中の彼女に助けられた恩を返したくてな」
ジザは、どうやら助けられた恩返しらしい。
「私も、敵討ちです。実は私の友人がその壊滅したパーティーの一人だったので、話を聞いて彼女に協力したくて……」
どうやらコクアの友人は、犠牲になったうちの一人らしく、是非ティアに協力したいとのことで加わったらしい。
「そういえば貴方たち二人は何か目的があってこの町に来たの?」
今度は逆にティアに質問を投げかけられてしまった。流石に本当のことをペラペラ喋るわけにはいかないので、どう答えようか悩んでいるうちに、ハルがこう切り出した。
「私は、死んだ姉を生き返らせる方法を探して旅をしています。その道中で彼に助けてもらい、色々と話を聞いたところ、似たような境遇だったので、それならば一緒に……という流れです。この町へは、旅の途中でたまたま寄りました。」
親しい人を亡くしているという共通点を見出したのか、ティアとコクアは目に少し涙を浮かべていた。
ジザは、若いのに苦労してるんだなぁと言わんばかりの表情でゆっくり頷きながら話を聞いていた。
(死んだ姉……以前言っていたハルの罪……そうなのか……?でも、それならば天使の力と自分一人の力でどうにかなるんじゃないのか??)
流石にこの場で深掘り出来そうにはなかったが、やはり気になってしまったので、後日もう聞いてしまおうと決心した。
「ちなみに自分も、旅の目的は似たような感じです。昔お世話になった人が大病になってしまって……病気を治せる薬か魔法を探しています。」
ある程度話を合わせつつ、うまく誤魔化すことが出来たとは思う。
「なるほどね、申し訳ないけど、薬の知識も魔法の知識もこのパーティーは割と疎い方だからね……あ、でも世界樹に行けば薬の材料……いやでも世界樹は数百年前に…………」
魔法使いやヒーラー専門のメンバーがいないところを見る限り、やはりそうではと思っていたが、的中であった。
後半部分は声が小さくて全部聞き取れなかったが、薬云々は本来の目的とあまり関係ないので、気にも留めなかった。
「いえいえ、全然大丈夫です。お気遣いなく」
気がつけば料理が運ばれてきていたが、話したり聞いたりするのに夢中であったのか、はたまた遠慮の塊なのか、誰も手を付けてはいなかった。
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