第6話 勧誘
「ねぇ、私たちのパーティーに入ってくれない?」
長く美しい銀髪のエルフらしき女性に声をかけられてしまった。どうやら三人パーティーらしく、後ろには、大柄で黒髪短髪の盾使いらしき男と、小柄で茶髪に獣耳を生やした獣人らしき女性がいた。
さまざまな種族がこの大陸には存在するとはいえ、俺はおそらく初めてエルフと対面した。しかもそれが物凄い美人でスタイルも抜群ときた。
「えっと……あんまり見つめられると照れるんだが………」
物珍しさに顔を凝視してしまったゆえに、エルフの女性は照れ隠しに顔を背けてしまった。
「おっと、失礼しました。初めてエルフの方とお会いしたので……」
急いで詫びを入れると、女性もそうでしたかと快く受け入れてくれた。
……ちなみにこの時横でハルにジロッと睨まれていたのには気づかなかった。
「すみません、名乗り遅れていました。私はエルフ族のティア。後ろの大柄なのがジザ。あなた方と同じ人間族です。そしてその隣が獣人族のコクアです」
「ガルアです」
「ハルと申します」
お互いの名前を知り合ったところで、立ち話もなんだからと近場の料理店に誘われた。もちろん食事代は出すからと。
俺とハルが顔を見合わせてどうしようか悩んだが、結局彼女が悩んだ末に頷いたので、お言葉に甘えることにした。
「────で、私たちが貴方たちを勧誘した理由はね……」
席に着くなり速攻で注文を済ませた後に、早速ティアが会話を切り出した。
「二人とも、かなり強いでしょ!特にハルちゃん!!」
正直なところ、街中などでは二人とも魔力の消費と面倒ごとを避けるためかなり制御していたつもりではあった。だが、それをあっさり見破り、勧誘してきたのだ。二人は思わず驚嘆してしまった。
「……どうして分かるのですか?」
恐る恐るハルが質問すると、ティアは少し申し訳なさそうにこう答えた。
「私みたいなエルフの里出身で一定以上魔力に長けていると、多少隠したくらいじゃわかっちゃうのよね……ごめんなさい、やっぱり迷惑だったかしら?」
「いえいえ、そんな、迷惑だなんて……」
唐突に謝られたので、思いっきり否定すべく首を振った。
「単刀直入に言うとね、今度、私たちは洞窟──いえ、ダンジョンに行こうと思っているの。でも、後衛の魔法使いがいないから、パーティーのバランス的にも、もう一人くらい勧誘しましょうかって話になってね。そこで貴方たちが通りかかって、かなりの魔力の使い手だと分かった瞬間、もうこれは運命だ!勧誘しちゃえ!!って感じで……あっ、ダンジョンってのは広場に貼ってあったアレのことね!」
どうやら、ダンジョンに挑むためのパーティーメンバーを探している途中で、俺たちは見つかったらしい。
正直なところ、俺たちにとってはあまり関係のない場所であった。しかし、こうも長々と勧誘されおまけに食事も奢ってもらったとなると、良心の呵責に苛まれそうで断りづらかった。
いやちょっと待て、そもそもこの三人は既に相当な実力者に見える。だが強い人を更に勧誘までしてこのダンジョンに挑みたい理由が何かあるのか。
だがそんなことを思っているうちに、ハルも同じようなことを考えていたらしく、先を越されてしまった。
「貴方たち3人はかなりの熟練者に見えますが、更に勧誘をしてパーティーを強化する必要性があるほど、目的のダンジョンは難しい場所なのですか?」
「……いや、おそらく全体的な難易度で見れば三人でもどうにかなるレベルだろうな……しかも、ギルド総出での攻略となれば、更に難易度も下がるだろうね……でも……」
ティアは頭を悩ませ、少し唸った後にさらにこう告げた。
「あの場所──厳密に言えば最下層辺りかな。少し因縁があってね────」
そこまで言った辺りで、更に口調と表情が険しくなった。
「私の以前組んでいたパーティーは、あの場所で私一人を残して壊滅したの」
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