第19話 キジも鳴かずば……

 私は今、自宅にいるのですが、時々キジの鳴き声が聞こえます。そう書いているうちにも、また聞こえました。

 拙宅は、戸建住宅が建ち並ぶ団地の一番外側にあり、20~30m先には、水田、畑、休耕地が広がっています。

 キジはそのどこかにいるのでしょうが、2階の窓から見ても、姿は確認できません。


 キジの鳴き声は、「ケーン、ケーン」などと表現されることがありますが、実際はちょっと違います。もっと、喉から絞り出すような、やや濁った感じを受けます。

 拙宅のある地域では、4月の下旬ごろから6月ごろまで鳴き声が聞こえるようです。(正確な記録は取っていません)

 もちろん、オス鳥が繁殖のために鳴いているのだと思いますが、力いっぱい喉から絞り出すようなその声を聞いていると、お役目とはいえご苦労なことだ……などと、おかしなことを感じます。


 ご存じと思いますが、「雉も鳴かずば打(撃)たれまい」という諺があります。余計なことを言ったばかりに、災いを招くことの例えとして使われます。

 実際のキジも、茂みに身を潜めている限り人間に見つかることは少ないのですが、大声で鳴くので居所が発覚し、猟師に仕留められてしまいます。もっとも現在は、野鳥は法律によって守られているので、そういうことはないでしょうが。

 自分の居場所を晒し、危険を冒してまでメスの気を引こうとするのは、ひとえに自分の子孫を残したいがため。やはり、ご苦労なことではあります。


 滅多にありませんが、拙宅からオスのキジが歩いている姿が見えることがあります。とても美しく、国鳥に名に恥じません。

 なお、鳥類図鑑によると、日本にいるキジは、二ホンキジ・グループと、コウライキジ・グループに分けられ、本州にいるのは主として二ホンキジだそうです。


 私が住む市は徐々に開発が進み、里山や草原が、宅地や物流センター、データセンターなどに変貌していきます。

 時代の流れでやむを得ないのでしょうが、キジの声はいつまでも絶えることなく聞こえてほしいと思います。


 

 

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