第14話 姿で損している ゲジ

 3月も第2週に入ると、日中の最高気温が20°Cを超える日もでてきました。すると、さっそく活動を開始した虫の姿を、拙宅内で見かけました。

 今年2023年の「啓蟄けいちつ」(二十四節気せっきのひとつで、冬ごもりしていた虫が活動を始める日)は3月6日だそうですが、まさにそのとおりでした。


 1階と2階を結ぶ階段の壁に、何やら黒っぽいものがあります。

 ゴキブリかもしれないと思いつつ、リーディンググラス(要するに老眼鏡)を掛けて確認すると、「ゲジ」でした。

 体長は3cmくらいです。


 ゲジは、節足動物―多足類―ムカデ綱に属しているので、ムカデの親戚のようなものだと言えるでしょう。

 しかし、ムカデが気が荒く、咬まれるとその毒でひどい目に遭うのと対照的に、ゲジはとても臆病です。人間の気配を感じると、たくさんの細い足を巧みに使って、素早く逃げていきます。

 顎肢がくしと呼ばれる牙の力は弱く、人が手で掴んでも、咬まれて怪我をすることはないらしいです。私はやったことがありませんが。


 ゲジを見て何となく不気味に感じる人も多いようで、「不快害虫」のレッテルを貼られています。虫好きな私でさえ、突然出現されると、ちょっとだけ驚きます。

 しかし、肉食のゲジはゴキブリなどを捕食するので、むしろ「益虫」なのです。あくまで人間からの観点ですが。

 ゲジを漢字で書くと「蚰蜒」だそうですが、字面からは何やら不気味な感じが伝わってきます。

 また、濃くて太い眉を「げじげじ眉」と呼ぶことがありますが、これも、あまりいいイメージではありません。

 やはり、あの毛の塊のような姿と、素早い身のこなしで損していますね。

 

 私は、拙宅の内外にいる虫は、基本的に放任、というか、むしろ保護しています。庭や生垣に殺虫剤を噴霧することもありません。

 ただ、例外はゴキブリ、ハエ、カで、屋内への侵入を見つけ次第捕殺します。また、室内に迷い込んできたムカデは危険なので、傷付けないよう注意しながら、屋外に移します。

 冒頭のゲジも、そのままにしておきました。少し時間が経って、階段のところに行くと、もう姿を消していました。また、家のどこかで再会するかもしれません。


 

 

 

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