第13話 頭が良過ぎる カラス

 カラスを取り上げるのは、今回で2回目です。

 先月(2月)前半のことでした。

 

 拙宅は戸建て住宅が集まった団地にあります。

 ところどころに、ゴミ置き場があり、カラス除けのあみも備えられています。網は、置き場の端に置いた箱に、丸めて入れられています。


 可燃ゴミの収集日でした。

 ゴミを出しにゴミ置き場に行くと、誰かが置いたゴミ袋の一部が食い破られ、中から小松菜の株とか、ニンジンの皮といった生ごみが、袋から引っ張り出されて、道に散乱しています。

 「やられた!」と思いました。カラスの仕業に間違いありません。

 

 ゴム手袋をしていたので、散乱した生ゴミを拾い集め、自分のゴミ袋に入れました。しかし、そういうことが2回続きました。


 原因は、カラス除け網の広げ方が不十分な人がいたたことだと思われます。

 そのため、網が完全にゴミ袋群を覆っておらず、袋の一部が外にはみ出していたのです。


 ここからは、実際に見てはいないので、推測です。

 カラスが狙う生ゴミはどういう状態かというと、まず、よく家庭で行うように、生ゴミはゴミ袋代わりのレジ袋に入っています。

 それが、他の紙ゴミなどと一緒に、市指定のゴミ袋に入っています。そして、ゴミ置き場に持ち寄られたゴミ袋(20数世帯分)には、カラス除けの網が被せられています。


 網からはみ出したゴミ袋を目敏く見つけたカラスは、まず市指定のゴミ袋をくちばしでつついて穴をあけたのでしょう。

 続いて、狙った生ゴミが入ったレジ袋にも穴をあけ、そこから生ゴミを引っ張り出した。これらの作業を、時々ゴミを置きに来る人間の合間を縫って、やり遂げたわけです。


 私が不思議に思うのは、まず、網の覆い方が不完全なゴミ置き場を、目敏く見つけることです。団地内には、ゴミ置き場が、数10か所はあります。

 人が気が付かない間に、カラスは各ゴミ置き場を巡視し、網の被せ方が不完全な置き場がないか、チェックしているのでしょう。 


 さらに、どうやって生ゴミが入った袋を特定するのかも不思議です。

 市指定のゴミ袋は半透明で青色です。さらに、生ゴミが入ったレジ袋はだいたい白い半透明で、中に入っているものは見にくいはずです。

 そうすると、たくさんのゴミ袋から、美味しそうな生ゴミが入っているゴミ袋を見出すのは、それほど簡単ではないと思います。


 以前、カラスを扱ったTVの番組で、ある実験をしていました。

 本物の肉を入れたゴミ袋と、食品サンプルの肉(人間の目では、本物そっくり)を入れたゴミ袋を置いて様子を見ていると、食品サンプルの方は見向きもせず、本物の肉を入れた方をついばんでいました。

 人間の視覚では判別できない色彩、あるいは偏光の違いなどを識別しているようです。


 カラスというやつは、なかなかの知恵者です。「悪知恵」と言いたいところですが、それは人間側の都合に基づくものです。

 餌が乏しくなる冬場、彼らも生きるのに必死なのでしょう。


 今は、私が朝食を終えた6時半ごろゴミ出しをして、カラス除けの網をゴミ置き場一杯に広げるようにしています。その時刻にはまだほとんどゴミが置かれていないので、カラスにやられることはないはずです。

 

 先日私が網を広げていると、少し離れた所にある電線に2羽のカラスが留まっており、羽繕いをしながらこちらを見ていました。

「余計なこと、していやがる」

と思った、かどうか……。


 


 




 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る