第3話 見えない隣人 モグラ

 拙宅のある千葉県北部では、今日は穏やかに晴れ上がって、風もなく気持ちの良い天気です。私は午前中、所用があって電車で出かけました。

 

 駅までは徒歩10分弱で、途中は遊歩道になっています。遊歩道の両側は、幅数メートルの緑地帯で、雑木ざつぼくが生えています。


 その緑地のところどころに、比較的新しい土が、こんもりと盛り上がっています。モグラが作った、いわゆる「モグラ塚」です。

 緑地の向こうは戸建て住宅が並んでいるのですが、こんな狭い緑地にも、モグラが住んでいるようです。


 このように、モグラは比較的身近にいるのですが、地下生活者なので、その姿を見たことは一度もありません。(動物園で見たことはあるかもしれませんが) それに、どのような生活を送っているのかも、専門家ではないのでよく知りません。


 おそらく、活動時間のほとんどを使って、食べ物を探し回っているのでしょう。とはいえ、モグラだって、命を子孫を繋いでいかねばなりません。 


 地下に暮らしていて、どのようにして異性の相手を見つけ、愛を語るのだろうか? 

 視力が弱いようだから、顔で相手を選ぶのではないだろうな……。

 そんなことを考えながら、モグラ塚を通り過ぎました。


 ところで、一昨年の11月、拙宅1階リビングルーム前の、庭に張り出したベランダに、見慣れない小動物が横たわっていました。すでに死んでいました。


 体長10cm弱で全身が灰色の毛で覆われています。一見ネズミのようですが、よく見ると違いました。

 鼻が、まるでバクの鼻を小さくしたように長く、鼻の根元にある口からは、長い前歯が見えていました。手の指が、細長いのもネズミと違います。


 私は写真を撮り、メールに添付して千葉県中央博物館に照会しました。

 学芸員の方から、恐らく「ジネズミ」でしょうという回答をいただきました。 ジネズミは、名前に「ネズミ」と付いていますが、モグラに近い種だそうです。


 それにしても、なぜ拙宅のベランダにあったのでしょうか?

 そこで力尽きたのか、猫のお土産か?


 庭の隅に埋めてやりました。


 



 


 

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