第7話 ギルドを作ろう!④
ミスケさんが慌てて仕事に戻ったのは、7時ちょっと前。僕も一緒に喫茶店を後にして、自転車に乗って師匠の家を目指す。周囲はすっかり暗くなったが、目的地は割と近場だ。
とは言っても、車で行こうと思ったら苦労するのは確か。大学の敷地を横目に見ながら、神社のある小高い山の歩道を越えないと辿り着けない場所なのだ。
途中は階段になっていて、何と車は通り抜け不可の小路しかない場所がある。つまりは、車だと川の方に出て遠回りしないといけなくなってしまう訳だ。
街路灯も寂しい感じで、夜に通り抜けるには確かに怖い気もするけど。おまけに、抜けた先は思いっきりの田舎である。田んぼと真っ直ぐな田舎道、ぽつんと離れて建っている家々が印象的だ。
師匠と奥さんは大井大学の卒業生で、そのままここに住み着いたらしく。
その辺のノロケ話なども、僕はたっぷり聞かされている。奥さんもファンスカのベテラン冒険者、出会った頃もそんな気の合う2人だったとか。
当時は期間限定イベントが盛んだったらしく、年に何度も賞品付きで開催されたらしい。今はほとんど無いが、それに取り組む過程で徐々にお互い意識し始めたのだとか。
今は奥さんの方が2人目のおめでたで、師匠の家はちょっとゴタゴタしている。奥さんは、以前は地元の有名薬品会社に就職していたが、長男の出産を機に辞めてしまったらしい。今は2人目の出産前で、大事な時期らしいのだが。
僕とも顔見知りで、とても親しくしてくれる。物凄く気のいい人で、それは師匠もそうなのだけれど。母親としては相当苦労しているようで、やんちゃな我が子に毎日苦労しているよう。
言うのを忘れていたが、師匠の家は出版社も兼ねている。趣味が高じて、とうとう立派な印刷機まで隣の倉庫に買って取り付けてしまったのだ。
その2階が編集室になっていて、僕も色々と作業を手伝わせて貰っている。師匠の家はそのせいで横長で、傍目に見れば田舎の大きな農家のようにも見えるのだ。
農機具置き場の変わりに、印刷の機材が置かれている感じだ。
師匠は大抵、家か編集室のどちらかにいるので、アポ無しで訪れても行き違いになる心配はない。この時間なら、恐らく夕食も終えて寛いでる頃だろう。
僕は家の前に自転車を置いて、編集室の明かりが灯っているのを庭先から確認する。それから合図の為のベルを鳴らして、鉄製の外階段を上って行く。
いつもの事なので、師匠も訪問者が僕だと分かっている筈。
「よう、
「こんばんは、師匠。ご飯はさっき、ミスケさんと食べて来ましたよ。今日はちょっと、相談があって来たんですけど」
「ほうほう、それは珍しいね。コーヒー淹れようか、メールのチェックしながら聞いてもいいかな?」
「構わないですよ、僕も資料整理手伝いましょうか? 春から全然減らないですよね、バイトとかで作業人数増やさないんですか?」
「売れる本なら増やしてもいいけど、あてが無いからねぇ。よしっ、話を聞こうか?」
コーヒーの入ったカップを2つ持って来て、師匠がいつもの席に着いた。パソコンを操作しながら、いかにも寛いだ呑気な風情を醸し出している。
師匠の名前は
物凄く良い人で、それはファンスカのプレイにも現れている。家庭でも同様で、重荷の妻に代わって掃除や食事の用意を率先して行っているようだ。
僕もたまに魁南君の子守りをするが、物凄~く大変。
僕は午後に起こった顛末を、かいつまんで説明した。なるべく分かり易く、これからの指針を得やすいように。師匠は笑うと言うよりショックを受けているようで、パソコンに向けられた視線は、いつの間にか僕を注視していた。
ミスケさんの忠告や僕のやる気まで話し終えると、師匠は椅子の背にもたれて考え始めた。長く掛かるかなと思ったが、割と早く言葉が飛び出す。
しかもそれは、賞賛の響きを称えていた。
「う~ん、凄いねその娘達は……情報に頼らずに、自分達の感性で冒険を進めていた訳だ。最近の子供は、些細なクエから狩場に至るまで、まず情報で安全を確認しないと動かない。
キャラのメイクにしたって同じさ、どうすれば近道で有利かを真っ先に考える。それは近道でなく、ただの想像力の均一化だよ?
まぁ、攻略本を出している僕も、それに一役買っている訳だけど……」
なる程、そう言う考え方もあるのか。僕は思わず、師匠の解釈の仕方に感心した。確かに彼女達の今までの冒険は、遠回りで無益だったかも知れない。
しかし、彼女達が楽しんでいなかったかと言えば、誰もそんな事を判定出来やしないんだ。しかも、その中から今後のセオリーとなる、新しいプレイスタイルが生まれないとも限らない。
さすが師匠、見る角度を変えただけでいい話に聞こえて来た。
「召喚ジョブにしても同じ事さ、昔は確かにペットブームってのもあったけど。所詮は戦闘に勝たないといい目を見れないもんだから、どんどん使用者が減って行って。
今は極端に使用者もいなくて、なかなかデータも取れないんだが……」
「確かに僕も、召喚ジョブの事は良く知らないものですから。師匠に色々聞きたいと思って。最新の攻略本にも、一応の代表スキルしか載ってなかった気がして」
「そう、恥ずかしながらデータ不足だね。……よしっ、こうしよう。凛君がその娘達から召喚ジョブのデータを集めてくれないか?
軍資金を取り敢えず、1千万モネーほど渡そう……現実にも、それだけ潤沢な資金があれば、もっと出版物が出せるんだが」
「それは確かですね……でも、本当にそんなに貰っていいんですか?」
どうせ使い道もないしと、師匠は達観した表情。確かにゲーム内で億万長者になっても、達成感や満足感だけで終わってしまうモノ。あるいは、虚しさだけかも知れないが。
僕は了承したと答えて、それから2人のキャラの育成についての相談を改めて持ち掛けた。レベル上げやミッションに挑むにしても、もう少し使えるようになってくれないと困る。
僕だけが活躍しても、こちらの負担が大き過ぎるし彼女達もつまらないだろう。
師匠は神薙さんについては、『還元の札』でスキルの払い戻しをすべきだろうと提案して来た。還元の札とは、一度取得したスキルを封印して、その分のスキルポイントを取り戻す事の出来るアイテムである。
例えば振り込んだスキルが不必要だった場合とか、別の武器を育てるので今まで育てた武器のスキルをもう一度新しい方に振り直したい時とか。
かなり強力でお高いが、どちらかと言えば武器指南書の方が人気が高い。武器指南書は普通に、武器スキルを2ポイント獲得出来るアイテムである。
第一、そうやって一度封印した筈のスキルは、再び戻って来てしまう確率が非常に高い。それならそのスキルは使わず、どんどん伸ばして別のスキルを覚えた方が特。
神薙さんが使うと明言した銃の弾丸は高いが、それはこちらで買ってあげれば済む問題。逆にパーティの攻撃力の上昇は、戦闘時間の軽減に繋がるので非常に良い。
銃の攻撃力と言うのは、遠隔武器の中でもそれ程突き抜けているのだ。約束したレベル上げでも、それはきっと有効に作用するだろう。
岸谷さんに関しては、さすがの師匠もアドバイスのし様が無い感じ。召喚ジョブオンリーの育成など、師匠にとっても初めて見るパターンらしかった。
彼女は召喚が終わったら、後衛でペットの支援しかしないらしい。そう説明する僕に、師匠はう~んと唸って天井を仰ぎ見た。
辛うじて、自分の属性の魔法を伸ばせば、属性召喚が可能になって、昔はそれに個性をつける『宝石献上』という行為が流行ったらしいとの事。
与える宝石の種類によって、属性の光球が色々と変化して、それが当時は珍しかったらしいのだが。今はペットを出していると、経験値がそちらに横流れするのを嫌って、NM戦ですら使用する人がいないと言う寂しい事態に。
ペットも一応、経験値を取得すれば成長はするらしいんだけど。
だから岸谷さんがそれを当てにするのも、あながち的外れでは無い訳だ。レベル上げで経験値が減ってしまうのも折り込み済みで、ペット強化のためと考えれば腹も立たない。
師匠は貯まったスキルポイントは属性魔法に廻して、ステータスは精神力か知力に廻したらと、ちょっと自信なさげに提案して来た。
後衛仕様に育てて、しばらく様子を見ればと言う事らしい。
他に良い考えも出て来ずに、そんな感じで話はまとまった。神薙さんのジョブ選択は、取り敢えずは遠隔か何かが良いだろうとの一致の見解。
僕が前衛で頑張れば、それなりに統制の取れたパーティになるだろう。自信は無いが、ゴールデンウィーク中には、もっとマシな感じになると期待したい。
そう言えば、一緒にレベル上げしようと約束してたっけ。
「そう言えば、師匠の家はゴールデンウイーク、どこかに出掛けるんですか? ミスケさんは家族旅行に出掛けるそうで、ペットの世話を僕に頼んで来ましたよ?」
「う~ん、休みは取れるけど、妻は身重だしねぇ。家でのんびり、本でも読んでるかなぁ? そう言えば、今週の課題はどんなのだい?」
「えっと……この本です、今度は中級のプログラム本らしくって。一週間で読むのは可能だけど、ちゃんと理解まで出来るかなぁ?」
僕はカバンから取り出した本を、師匠に手渡す。僕と父さんの遣り取りは、師匠にはバッチリ話してある。素晴らしい事だと、師匠も感銘を受けていた。
魁南が大きくなったら、自分も絶対にやるぞと決めているらしく。本好きな家族らしく、何よりこのデジタル情報時代に逆行する、印刷された物を大切にする心が素晴らしいとの事。
師匠から言わせると、デジタル時代だからこそ、形に残る物の有り難味が分かるとの事らしく。それは確かだと、僕のルーツの本棚の例にしても賛同出来る。
そもそも、師匠が出版社を立ち上げたのも、その点に尽きるらしい。収集心をくすぐるようなカバーの工夫とか、購買意欲をそそるような文字の羅列だとか。
最近は、そう言う工夫も確かに大切だけれども。
何より、買い手が本当に必要としてくれる本を作るのが、師匠が心に秘めたる使命だとの事。神薙さんの妹の環奈ちゃんが、ここで生まれた攻略本を大切に持っていたように。
そういう本を大切にする風潮は、少なくともこの街には根付いているようだ。
だから師匠も、この街に居付いて会社まで興したのかも知れない。僕もすぐ側で、そのノウハウを見る事が出来て、とても幸せだと思う。
師匠とゲームで知り合って、それから割とすぐにこの編集室に招待して貰ってもう1年になる。普段は社長である師匠を含めて、3人程度の小さな編集部。
しかも、全員印刷業の方にも携わっていて、それが結構大変な力仕事なのだ。
本になる前の、印刷用の紙の塊の重さを知っているかい? だから僕の存在は、階下の力作業にはとても重宝される。何しろ若いし、力持ちだから。
印刷の終わった本の詰まったダンボールも、もちろん結構な重さがあるしね。
師匠は父さんの今週の課題本を、難しそうだと感想を口にして返してくれた。今日のノルマは決めてないが、日課としては寝る前にちょっとは目を通す事になるだろう。
師匠は興味深そうに、父親の跡を継いでプログラマーになるのかと尋ねて来た。僕は分からないけど、知識が選択の幅を広げるから習得して損は無いと
習得の自信なんて、これっぽっちも無いんだけどね。
部屋の時計は、もう8時を指していた。そろそろ帰らないと、ゲームにインする時間も減ってしまう。別に習慣と言う訳ではないけど、せっかくフレンドが増えた大切な日なのだ。
早く戻って、それを実感したいと言う気持ちが僕を急き立てる。ここから頑張って自転車を飛ばせば、15分程度で家に辿り着く事は可能である。
僕は9時からインする予定だと師匠に告げて、帰る段取りを進める。師匠もその時間にはインすると返事をして、これで今日の会合はお終い。
それからしばらく後、別れの挨拶と共に編集室を後にして。再び自転車に乗り込んで、今度は自宅を目指して一目散にペダルを漕ぎ始めた。
やっぱり夜風は冷たいが、僕はそのスピードを緩めない。
家に帰り着くと、いつもの通りに風呂に入って学校の宿題や何やらを片付ける。その頃には父さんも戻って来るが、僕は既に自宅に引っ込んで勉強中。
勉強が終わったら、メールのチェックをしながらゲームにインするのも毎度の流れ。メールの相手は小学校時代の地元の辰南町の友達が多く、家は近いが進路で距離が離れた仲間達だ。
週に何度か文面で遣り取りし合っていて、僕のカンフル剤になっているのは確か。連休前の文面は、予定の確認や告知などが多いようだ。
遊びを誘ってくれる人もいたんだけど、バイトがあって無理だと断ったのは残念だ。
ファンスカにインしても、しばらくは忙しく過ごす事になる。やっぱり色々な方面からメールが来ていて、それは半分はドライな合成依頼とか狩りの誘いなのだけど。
今日に限っては、神薙さんや岸谷さんからお試しメールが届いていた。しかも、インして5分も経たない内に、環奈ちゃんから直接テルまで届く始末。
場所を訊き出した環奈ちゃんは、しばらくして僕のいる競売所まで飛んで来てくれた。それから装備やスキルの座談会みたいになって、彼女のキャラ相談にしばらく時間をかける。
どうも昼間の姉達のキャラ相談を見ていて、羨ましく思っていたのかも知れない。環奈ちゃんのキャラは、昼に一度見た印象通り、なかなかこなれた重戦士タイプのよう。
スキルも申し分ないし、頼り甲斐のありそうなアタッカーだ。
師匠が到着すると、僕は環奈ちゃんを紹介した。攻略本を出した人だと知って、環奈ちゃんは舞い上がっているよう。何より、10年以上のキャリアの差は、少女には眩しく映ったのだろう。
合成の依頼をこなさねばならず、僕と師匠は忙しく競売での遣り取りを開始せねばならなかった。連休を前に品物を受け取りたいと言う依頼者が、意外に多いためだ。
それを聞いて環奈ちゃんが、健気にも僕達の手伝いを申し出てくれた。その頃には神薙さんと岸谷さんも合流しており、騒がしさは5倍増し。
これが噂のプレーヤーかと、師匠だけは興味津々の様子だけど。
環奈ちゃんにバザー品のチェックを頼んで、僕は時間の短縮を図る事にした。個人でレアな品を売りに出す冒険者は、実は意外と多いのだ。
何しろ競売の手数料は、売値が高くなると馬鹿にならない金額に達する。それを嫌う者は競売所の近くのバザー広場で、個人売買の手段を使用する。
競売に出せない品や手数料が高い物を、バザー広場で売買する人はそんな訳で多い。
1人ずつ何を出品しているのか、バザーの場合にはチェックが必要なのが難点だ。競売の場合には、ピンポイントに出品物の有無が分かるのだが。
僕は合成に必要な素材や、神薙さん用に『還元の札』や『武器指南書』が出品されていないかを調べてくれるように環奈ちゃんに頼んだ。
お高い買い物になるが、先ほど師匠から軍資金は貰っているので問題ない。
その神薙さん達は、師匠と色々話し合っていたようだ。インタビューを受けているようで、師匠の動きは完全に止まっている。その分、弟子の僕が頑張らないといけない。
ほとんどが師匠経由の依頼なのだが、僕にもそろそろ直接の顧客がチラホラ舞い込むようになって来ている。値段設定を押さえているせいもあるが、貴重な消耗品などは
僕が合成にハマッたのは、そういう遣り取りも含めて楽しそうに思えたからだ。
環奈ちゃんが頑張ってくれたお陰で、落ちる時間までに結構な収穫があった。バザーをしているキャラ名を聞きながら、僕は片っ端からレア素材などを買い込んで行く。
安く買えるに越した事は無いが、依頼者の出す金額内に収まれば購入決定だ。『還元の札』と『武器指南書』に至っては、最近値崩れしているのか、かなり安い値段で買う事が出来た。
これで神薙さんを強化する目処が付き、僕は一安心。岸谷さんに至ってはアレだけど。
環奈ちゃんが、落ちる時間だと少し後ろめたい様子で進言して来た。僕は
麻痺やスタンなどの効果への耐性を上げる特殊薬で、NM戦では重宝するアイテムだ。結構お高いので、売って小遣いにして貰っても良いし。そう言うと、環奈ちゃんは感激してくれた様子。
僕も本当に助かったし、これくらいはお安い御用だ。
お姉さんコンビも一緒に落ちるらしく、お休みのコールが聞こえて来た。何となく慌しく感じられたのだが、実際は今夜は大した事はしていない気も。
最近の僕の日常を、環奈ちゃんに手伝って貰っただけだった気がするけど。それでも雑談しながら、いつもより楽しく過ごせた感じ。
アイテム購入の成果も上がったし、何よりだった。
いつの間にやら、師匠の炎キャラが隣に立っていた。僕が買い付けた素材をトレードすると、師匠もその購入代金をこちらに手渡して来る。
いい娘達だったねと、師匠の素直な感想が耳にこそばゆい。僕ははぐらかすように、時間を理由に今夜はもう落ちると告げた。
お休みの挨拶を交わしながら、僕は隠れ家に引き込んで行った。今日はハンスさん達『ダンディズヘブン』の面々は、活動はしていない様子。
社会人のギルドは、やっぱりどうしても週末中心の活動になるよう。
落ちる前の最後のメールチェックで、僕はふと知らない名前のモノを見つけた。しかもそれは、どうやらフレンド登録の通達のメールみたいだ。
不審に思って、そのジュンジュと言う名前の主を必死に思い出す。合成依頼関係で、どこかで安請け合いしたのかしらんと、ちょっと不安になりながら。
その時ふと、今日の朝の遣り取りを思い出した。
そう、僕をライバルと言ってくれた同じクラスの柴崎君だ。思い出してしまうと、僕は画面に向かって笑いが止まらなくて困ってしまった。
何て律儀なんだろう、ちょっと一方的だけど。
百年クエストの事、もう少し詳しく調べてみても良いかも知れない。知らない内にクエアイテムを入手してしまったし、何よりライバルとして頑張った方が良い気もするし。
僕はフレンド登録を了承する旨のメールを送り返しつつ、再びニヤニヤ笑い出してしまう。この感情は何だろうと、内心不思議に思いながら。
そう、僕はようやく同級生に対等と認めて貰ったのだ。
競争にせよ何にせよ、相手に張り合いが無いとつまらない事この上ない。こっちが幾ら頑張っても、相手がそれを認めてくれないのだから。
確かに順位は勝手に出る、それが大人の定めたシステムの便利で良質な点だ。そう思っている人も多いが、その順位を見ただけで一体何が分かるのだろう?
その内側で行われる熾烈な戦いを、本人同士の壮絶な駆け引きを。
中学時代の僕の悩みは、多分こんなシステム相手に翻弄された事に尽きると思う。順位が高ければ相手も認めざるを得ないだろうと言う、今思えば稚拙な考え方だ。
僕は勉強もスポーツも、そんな感じで相手の顔を見ずに頑張ってしまったんだ。それで達成感や満足感が、空虚だった訳が今になって何となく理解出来た。
そして、同級生が僕に対して同じ感情を抱いていた事も、何となく分かってしまった。
そう思うと、今日と言う日は色々あったけど、有意義だったようにも思う。だけど、そんな簡単にいかない事も、僕は知っておくべきだったんだ。
何しろ僕が知り合ったのは、学年でもすこぶる付きの有名人なのだし。
――その彼女が巻き起こす嵐は、日常を軽く吹き飛ばす事も。
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