夢まほやく 読み切り2
美味しそうな料理がたくさん並んでいる。ネロが全部作ってくれたらしい。私はあんぐりと口を開け、そのままフォークで口に運び込もうとした。
「わっ、オーエン⁉」
カインの驚いたような声が聞こえ、反射的に立ち上がってしまった。食べようとしていた食事たちを一旦戻して、声がした方に駆けつけた。
「あっ...そういうこと...」
オーエンは傷のオーエンになっていた。やばい。オーエンの視界に入ってしまった。さっきまで食事しようとしていたのだから、当たり前なのだが食べ物の匂いが染み付いている。
「美味しいもの食べてたの?このたんぽぽあげるから頂戴」
オーエンがむしられていないたんぽぽを持っているのには多少の違和感がある。カインにも、「騎士様、騎士様」と満面の笑顔を向けている。
「向こうの食堂で、ネロが料理を...」
「...何言ってるの。あいつの料理、この頃甘いものが減ってきてるの。そんなの、僕が食べると思う?」
いつの間にか元のオーエンに戻っていた。ふう、とカインと同時に息をついた。
「ねえ、騎士様、賢者様、なんで僕がこんなたんぽぽを持っているの?」
「オーエンが持ってきたんだろう。」
「知らない。しょうがないから、僕が育ててあげる。クアーレ・モリト」
水が入ったきれいな花瓶が出てきた。オーエンが優しい顔でたんぽぽを差して棚に置いた。
後でカインに聞いたのだが、彼はずっとそのたんぽぽを見つめているらしい。
<END>
夢まほやく @2010129
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