夢まほやく
@2010129
夢まほやく 読み切り1(続かない気がする)
暖かい光と心地よい小鳥のさえずり。私は木の幹によりかかり、目をつむっていた。ふと私は、正座した膝の上にふわっとした重みを感じた。ゆっくりまぶたを開けると、白の毛に包まれたきれいな猫が座っていた。のんびりした昼下がり。私はうつらうつらと眠たそうにしている猫を刺激しないように、そっとその純白の体に触れた。猫はピクッと耳をふるわせ、宝石のような青い目で私のことを見上げた。不思議そうに首を傾げた猫は、まるで微笑むように口角を上げ前足の中に顔をうずめた。このまま時間が止まってくれたら、どれだけ良いことだろう。その時、またまぶたを落としかけた私の上から、降り注いでいた日光が消えた。
「なに?オーエン」
「なんだかいい匂いがすると思ったら、賢者様だったんだ。何食べたの?」
気づかれてたのか。魔法舎から出る前シャイロックのところへ寄って甘いお菓子を食べた。その匂いがしたんだろう。
「美味しいやつ。あ。」
私の膝で完全に眠っていた猫が、魔法にでもかかったように起き出して、オーエンの肩に飛び乗った。さっきよりもっと幸せそうな顔で、毛づくろいをし始めた。
「可愛い」
心の声が漏れて、はっと口をふさいだ。
「うん。」
今まで聞いたこともないようなオーエンの素直な声に、私は顔を上げた。オーエンは子供のような無邪気な顔で猫と戯れていた。私はオーエンのことを、なんとなく誤解していたのかもしれない、と思った。私は改めてオーエンのことをじっと見つめた。
「なに、賢者様。殺されたいの?」
猫と同じ、宝石のようなきれいな瞳が、意地悪な笑みに染まった。あんなオーエンを見てしまった以上、その笑みすらも愛おしかった。
<END>
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