第21話:暴走するムスコ
一周目が終わった。現在判明している具材は、
ガンナー:長ネギ、カニ
ルナティ:チョコレート、マジカルスライムの肝臓
ふゆりん:ローション、???
の五つ。残るはふゆりんのだけだ。
ふゆりん調子乗っているし、残った一つも地雷な気がしてきた。
「残りのふゆりんの具材って固形物?」
「そうです。煮崩れはしていないはずなので、適当に探せば見つかるはずです」
「暗闇のせいで、狙った具材をピンポイントで食べようとするの難しいな」
「そうですね……お二人のお椀の中にはそれらしき具材は入っていますか? 仮に入っているなら同時に食べましょうよ」
「俺は入ってる」
「私もだ」
「では……いっせーので!」
合図と同時にチョコレートローションにまみれた固形物を口に運ぶ。
煮詰めているというのに形が残った触感……長ネギではない。それと硬過ぎず嚙みきれるということは、カニでもない。
どうやら例の具材を食べれたらしい。味は汁のせいで分からなかったが、総合的に野菜っぽさを感じた。
「うわー……カニでした……歯が欠けるって……」
「俺は野菜っぽいやつだった」
「私もだ。長ネギではない」
と、なると俺とルナティがふゆりんの具材を食した訳か。
「それでふゆりん、この野菜っぽいものの正体はなんだ?」
「えっとー……もう少しで分かりますよ……」
どういうことだ?
言われた通りそのままでいると、変化が生じ始める。
体が熱いっ……燃えるように熱いのに、不快感はない。全身に力が漲っているようだ。
「なんだこれは……ハイになってきた」
「ガンナーもか……私の体の隅々まで、熱が浸透している。今すぐにでも暴れたいと思ってしまうくらいには」
「そんなことしたら家崩壊するだろ? ……でも、気持ちは分からなくもない。それくらい全身が昂っている……。一体なにが起きたというんだ……?」
野菜らしき具材を食べただけというのに。もしかして非合法的にヤバい植物とか入れてないよな……?
すると突然ルナティの体が光り始めた。
「む? これは……」
「ルナティ!? どうして光っているんだ!?」
全身、髪の毛からも発光するルナティ。光の強さは微小で、ルナティの姿はハッキリ見えるが、鍋やお椀の中は暗闇に包まれたまままだ。
「急に発光し出すなんて……っ!? ふゆりん、お前……まさか!?」
「……ええ。例の人参を入れました」
「お前はっ……まともな具材を入れることができないのか!?」
「別に害はありませんって! まあ……発光は許して下さい。なんでガンナーは発光しないんですか?」
「……あー、そういえば調べたんだわその人参について」
あのような忌まわしい事件を二度と起こさない為。俺は次の日にあのチートの詳細を調べた。
「結構人によって表れる効果が違うようなんだ。効能としては活力回復がメインなんだが、サブで発光したり、人によっては凶暴になったりするって」
「そうだったんですね。ガンナーが発光しないのと、ルナティの発光量がわたしより少ないは個人差ってことですか」
ほんとロクでもない人参だな。人によって効果が違うってギャンブル過ぎる。効果が凄くても食べたいと思えないわ。
マジカルスライムの肝臓といい、害がありそうなのを選ぶんじゃねぇよ。
「……ん? そういえば人参自体はなんで発光していなかったんだ?」
「あの人参、発光しているのって皮だけなんですよ。だから皮を剥いて入れました」
「所がない筋書きだな全く……。これで全部具材が分かった訳か……」
……ん?
あっ、ちょっと待って……。体の……下の方がめっちゃ熱い……。全身熱いんだけど、下半身、具体的に言うと『ムスコ』がバチクソ熱い……。
異変に気がつき下へ手を伸ばすと、俺のムスコがぐんぐん成長していた。
「……っ」
「……どうした? ガンナー」
「な、な、なんでも……ないっ」
もしかして人参の影響か!?
落ち着け俺のムスコ。お前の出番は今……じゃないっ……のにっ‼
俺の切実な思いに反して、ムスコはぐんぐん成長していく。
パンツにムスコが衝突して痛いっ‼
普段と比べて、あり得ないくらい大きくなってんだけど!?
壁にタックルするように、巨大なムスコがパンツを突き破ろうとしている‼
痛すぎるっ‼
ムスコが布を突き破れず痛すぎるっ‼
洒落にならないくらい痛いっ‼
……もう駄目だっ‼ 我慢できないっ‼
あまりの激痛に、俺はズボンとパンツを脱いでしまう。
ボロンッ。
ふぅ……あー、なにこの解放感。さいっこうに気持ちいいぃ……。
ムスコは牢獄から解き放たれた。今の俺は半分フリー、下半身を露出している状態だ。
だが案ずるな。闇鍋のおかげで今は真っ暗だ。ルナティが発光しているとはいえ、これ以上近づかなければ俺が露出しているのは気づかれない。このままムスコが収まるまで凌げばいいはずだ……。
「全員の具材が分かったので、明るくしましょうか」
ん……?
「そうだな。もう闇である必要はないだろう」
え……?
「ではルナティ。魔法で灯りを――」
「ちょっと待て‼ そんなことしてはいけないだろう!? 死にたいのか!?」
「えぇ……どこに死ぬ要素が……暗いままだと食べずらいじゃないですか」
「闇鍋なんだ! 最後まで闇であることこそが、闇鍋へのリスペクトだろう!?」
「なんでそんなに必死なんですか……」
必死になるに決まっているだろう!?
明るくなれば俺が下半身露出して、ムスコを滾らせている変態だと認識されてしまう‼
そんなことになれば人生終わったも同然だ‼
「具材が分かった以上、もう食べ辛いだけじゃないですか。明るくしましょうよ」
「お前は闇鍋の神に殺されたいのか!?」
「……そんな神がいるとは思えませんが」
「私はどっちでもいいぞ」
「そのままでいい‼」「明るくして下さい」
クソッ‼ どうしてお前は何度も俺の邪魔をするんだ!?
どうにかしてふゆりんを説得しないと……。
「灯りならルナティがいるだろ‼」
「ルナティが光っていることしか分かりませんよ!」
「それで充分だろ!? お椀持ってルナティに近づいとけ‼」
「非効率過ぎるでしょ……そんなに抵抗されると余計に明るくしてやりたくなってき
ました」
「この逆張りキッズが‼」
よくいるよ、世論と反対の意見がカッコいい思う奴。こういう奴大体ありもしない自分の武勇伝をひけらかしてくるから(威勢だけ)。
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