第13話:突撃! 隣に訪問実演


 ……とまあ、そんな経緯があり、俺たちは色んな家に対し『突撃! 隣のご飯(起源祭バージョン)』を行った。


「これ食べてもいいんですか!?」


「あっそれ……」


「……? なんですか?」


「それ……私の吐しゃ物を料理に戻した作品です……」


「うええぇぇぇぇぇぇ‼」


 と、ふゆりんが他人のゲロを食べたり。


「俺は陽キャだぜうぇぇぇぃ‼」


 陽キャ……?


 もしかして……コイツ転移者か!? 


 アタリだっ‼ 転移者ならチートを買わせることもできるかもしれないっ‼


 転移者最高っ‼


 どうにか実用性をアピールして買わせるぞっ‼


「チート買いませんか!? 今ならお安くしますよっ‼」


「そうだな、うぇーい……」


 悩んでいる転移者。すると急に料理を口にして……。


「美味しいヤミー、感謝感謝! またいっぱい食べたいな♡ デリシャ、シャ、シャ、シャ、シャ、シャ、ハッピースマイル‼」


「……は?」「……え?」「……む?」


「闇の儀式かなにかか? それくらい体が受けつけない……」


「お、俺もだ……えーっと、なんでおぞましいなにかを私たちに見せてきたのですか……?」


「ニホンじゃみんなこれやってんだよ、うぇぇぇぇい‼」


「……えっ?」


 ちらっとふゆりんに視線を送ると、全力で首を横に振ってきた。


 よかったー。ニホンってそんな修羅な国なのかと思ったよ。


「お前たちも一緒にやろうぜ‼ うえぇぇぇぇぇいっ‼」


「は? いや……私にはハードルが……」


 いや、ここで真似をして機嫌を取って、チートを買わせるか……?


 けど、これを……真似する……? 


 お、俺が……?


「……おっ、……俺にはできないっ‼」


 と羞恥心に負けて逃げ出したり。






 ――バンッ‼×2 ←クラッカーが破裂する音。



「お姉ちゃん凄い凄―い‼」


「もっとやってー‼」


「っ‼ 分かりました‼」


 とふゆりんが子供たちに大人気になって調子に乗った結果。



 ――バンッ‼×2 ←クラッカーが破裂する音。



「もっと沢山同時に鳴らして―‼」



 ――バァンッ‼×5 ←クラッカーが大量に破裂する音。



「面白―い‼ もっともっとー‼」



 ――バァァンッ!×5 ←ヘロヘロになりながらふゆりんがクラッカーを鳴らした音。



「勢いが落ちてきているよお姉ちゃん‼ そんなんじゃ全国大会行けないよー‼」



 ――バァァァン…… ←まだやるの? と顔で訴えつつも、子供たちの純粋さに負け、苦しみながらふゆりんが鳴らすクラッカーの音。



「お姉ちゃんざぁこ♡ もう無理とかざぁっこ♡」


「ヘンターイ♡ キモーイ♡」



 ――バァ……ン…… ←精神が病んでしまい、自分って生きる価値あるのかなー……と泣きながらふゆりんが鳴らしたクラッカーの音。



「なんかもう飽きたからいいやー」


「ねー。今度はローション沢山垂らして―‼」


 と、メスガキたちの無邪気さを受け、ふゆりんが大ダメージを負ったりした。


「もう無理……メスガキ怖いぃ……」


 チートは短期間に何回も発動するとかなり精神が削られると聞く。更にメスガキ共のせいもあって臨界点を超えてしまったようだ。


「ふゆりんは子供に人気で羨ましい」


「ルナティ……それは皮肉になってるぞー」


「むっ!? 遂に私も皮肉を覚えたのか……!?」


「お前が嬉しそうでなによりだよ」


 ふゆりんは……ご愁傷様です。


 ぐすんっ……遺骨はしっかり燃やしてあげるからねっ……‼


「わたしは……もう大丈夫です……」


 このままぐったりしたままなのかと思っていたら、颯爽に立ち上がるふゆりん。


「心配おかけしました……。家に帰ったらメスガキ除けのお守りを作ります……」


 どうやらふゆりんはメスガキにトラウマを植えつけられてしまったらしい。今度一緒に出掛ける機会があったら、メスガキ邸の前の道を通ってやろう(畜生)。


 しかし、悩むなぁ……。


「んー……」


「……? どうしたんですか? ガンナー」


「いやっ……どうやったらもっと稼げるかなって」


「現段階でも十分に稼げているではないか」


 確かに日給換算したらかなり稼げている。現段階で三人分の生活費を、二週間程度賄えるくらいはある。収穫としては十二分過ぎる……だが……。


「それはそうなんだけど、起源祭って今日だけじゃん? そうなると明日以降からこ

の商売は通じなくなっちゃうだろ?」


 正確に言えば誕生日のような、お祝い事のタイミングで同じことをすれば成り立つだろうが、一日で複数の家にお邪魔できるのは今日だけだろう。


「だから今日中に稼げるだけ金を稼いでおきたいと思ったんだけど……なんか改善案あっかなー……」


「ルナティが剣の腕を披露するというのは?」


「下手しなくても周辺に被害が出るな」


「ではふゆりんを分裂するというのは?」


「……ふゆりん。お前分裂できたのか……?」


「できる訳ないでしょ‼」


「そうなのか……」


「……ボケとして言った訳じゃなくて、真面目に言ったんですか……?」


 ふゆりんは驚愕しルナティの顔をさわさわしている。扱いが完全に未知の生物と触れ合う人間になってるぞ……。


「ガンナーは……なにもできることないですね……」


「おいっ。分かってたけど傷つくんですがー。分かってたけど」


 俺は特別な能力がない。ルナティのように驚異的な身体能力を持っている訳じゃないし、ふゆりんのようにチートを使える訳でもない。


 ただチート販売業者として転移者にチートを販売することだけ…………そうか……俺はチートを販売できるじゃないか!


「いい事思いついた‼ ふゆりんっ‼」


「なんですかいやテンションたかっ……」


「今からお前には新しいチートを買ってもらうっ‼ そしてより金を稼ぐんだっ‼」


「はぁ……。はぁ……?」


「値段は最安値にしてやるから安心しろ‼」


「いやっ、そういう問題じゃ……」


 今回選ぶチートは……ああ面倒だから適当にこれでいいやっ‼ 


 ふゆりんの手を掴み、契約書を握らせる。


「この、一日一本手から人参を生み出すチートを使って、お前は稼ぎ頭になるんだっ‼」

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