第5話

 目覚ましに昨日は邪魔された。このヘッドセットには外の激しい音などを感知すると強制的にゲームを終了し、使用者を覚醒させる機能を備えている。そのせいで昨日はこのチラシを見ることはできなかった。結論から言えばそのおかげで会社に遅れることはなかった。今日は休暇をとったので長く見ることができるだろう。チラシにはこう書いてあった。


  この街には高度技術を持つ医者はいない。首領の病気を治せるものがいたら財貨をやろう。ただし引き受けてから一日以内に来なければ追放とする。


 チラシの発行者は首領の弟のようだ。クエスト一覧の所に”首領の運命”というクエストが追加された。クエストの目標地点も首領の家となっている。今の時刻は18時だ。首領の家について一連の首領弟の長話を聞いてクエストの開始だ。話を聞くと強制的に街の入り口にワープさせられる。ドットグリーンのクエスト中は”平和主義者”というデバフが付き、プレイヤーへの攻撃ができなくなる。利点は攻撃されてもダメージが発生しないことだろう。これで、心おきなく探索ができる。が、有効期限は24時間だ。何もしない、またはこの状態で24時間が経過する"追放者"というデバフに置き換わり、ドットグリーン領への進入が不可能となる。


 首領の弟の指定した薬草やその他必要なものはこのデスラーマウンテンというところで採集できるようだ。推奨レベルは20、ゆきのはまだ10レベルぽっちだ。しかし、彼女はノースダルコナの雑貨屋である物を買っていた。

 それはマントのようなものでうっすらと白いがほとんど透明に見える。それをはおると、ゆきののバフ欄に”透明化”というバフが付いた。これはノースダルコナ限定品の透明マントで一日に一回限りの購入、効果時間は半日というピンキリな性能をしている。しかし今はその効果のおかげでモンスターに見つからず安全に探索ができる。自分の街に入ったらまず雑貨屋を覗く習慣に感謝しつつ、首領の弟の言っていたことを思い出していた。

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ゆきのの大冒険 小雨(こあめ、小飴) @coame_syousetu

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