第4話

クエストタブから詳細を確認したゆきのは林の中を走って次の街へ急いでいた。中断されたクエストのキルログを辿ると、討伐者のネームが赤だったのだ。このゲームをやっていない人からすればただの名前が赤いだけだと思うかもしれないが、赤ネームはPKプレイヤー、つまりはプレイヤーを倒すことで生計を立てているプレイヤーだ。このゲームは死亡後5分は自分の遺体がリスポーンした後も残る。その体の持ち物を調べると所持金の10%が残っているので赤ネームのプレイヤーはそうした金を使って小さな町を隠れ家に生活をしている。赤ネームは大きな街には衛兵がいて、入ろうとすると拒否される設定になっているため、中立の小さな街に身を寄せている。ゆきのが向かっているのは当然、赤ネームの入れない大きな街、”ノースダルコナ”だ。ドットグリーンという種族の領地でレッドどころかイエロープレートすら入ることを許さない厳しい種族だ。PKプレイヤーは黄色から順番に赤に色が近くなるにつれてゲーム内のバフとデバフが付く。代表的なバフはPKした際の獲得スノーの割合上昇、デバフは規模判定中~大の街の9割に入れなくなる。といったところか、走ること25分、スタミナスキルが1上昇したころにようやくノースダルコナに到着した。

「止まれ、見ない顔だな。IDを見せろ!」

 衛兵が槍を向けてそう言ってくる。選択肢には”YESorNO"の二択だった。補足すると街に初めて来た時のミニイベントで、ただIDを衛兵に見せるだけのイベントである。NOを選ぶと街に入れてくれない。ゆきのはとりあえずYESを選択して様子を見た。衛兵のコンソールにゆきののIDが表示される。

「グリーンネームか、通ってよし。問題を起こさぬように」

 ホッとしながら街へ入る。街の中心に行く途中でゆきのはある看板のあるチラシに眼がとまり、それを確認しようとした。


 しかし、それは自宅の目覚ましによって遮られてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る