第3話

ダン ダン ダン!

 銃声が鳴り響く。ゆきのは相手に銃を向け発砲し、同時に回避行動を行う。ゆきのの未来位置には複数の銃弾が撃ち込まれる。戦闘相手はNPC、一般のNPCであれば青いネームプレートだが、時として黄色ネームのNPCが街の外にいる。街外NPCで基本何かのイベントに紐づけられている。ゆきのが遭遇したイベントは……


番外イベント1.怪しい人形


 先ほどベリースープを飲んでいた時にイベントの概要はスノリンが説明してくれた。

『近づいてくるのは……あれれ?何かおかしいよ? まるで生きていないみたい……って人形?!』

 詳細な説明はクエストボードから見ないとわからないが確かなことはこの西部劇が似合いそうな雪国に場違いなガンマンの人形は、ゆきのに敵対しているという事だ。HPバーが2本あり1本は30分の戦闘で削り切っている。残り1本だが、こちらのHPも残り4割、人形は思いのほか足が速く、反応速度もいい。気をつけないとすぐ後ろを取られてしまう。速さのステータスは完全に劣っている。ましてや相手のレベルは何という事でしょう。レベル25、ゆきののおよそ1.5倍もあるではないか。それに手にはガンマンよろしく2丁のリボルバーをすごい発射間隔で撃ってくる。常時ファニングショットされているような感覚だ。NPCチート大概にしてほしいと思いながら、

「100発100中!」

 スキルを発動する。さっきからちょこちょこ使っているこのスキルは、”効果時間中に撃った弾丸の軌道を捻じ曲げて銃弾を当てる”というものだ。効果時間はレベル1で5秒、クールタイムは5分だ。5秒の間にファニングショットを使用することで50発を確実に当て、こちらは極力回避する。という戦法を取っていた、人形のHPが3割を下回った。人形の足元に魔法陣が敷かれ、シールドのようなものが張られる。弾丸を打ち込むが、ことごとくが弾かれ、ポリゴンの彼方へ消えていく。ゆっくりとリボルバーを向けてくる人形を前に”もうだめか……”と、思っていたところにバリーンというガラスを砕くような音と共に人形の頭が吹き飛ぶ。数秒後に遠くからズダーン……という銃声のようなものが小さく聞こえた・


怪しい人形、中断


 緑色の文字で目の前に表示される。今の銃声の主が怖いので、銃声方向から影になるように木の裏に隠れ、クエストの詳細を確かめるためにボードを開いて中断されたクエストをタップした。

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