第4話 恋人は目覚まし時計?

 ポイッ!


 持ち主の彼女は、ゴミ箱に鈴鳴くんを捨ててしまいました。


「子守歌なら捨てられても仕方ないな」


 捨てられた、天然過ぎる鈴鳴くんは、ショックで心が目覚まし時計の身体から抜けてしまいました。

 フラ、フラ、フラと天に昇った彼の心は、運命の赤い糸製造工場の前に…。

 現在に至る、

 と、いう事らしい。

 

 性格は、良さそうだが…。

 合格、採用については、慎重にならざるを得ない。


 僕が考えていると、地上の天使から連絡が入った。


「緊急連絡。間違い発生です。赤い糸が事故で切断。応援お願いします。もう赤い糸が、こんがらがってます」


 運命の赤い糸。

 最近、時々切れます。

 昔から、変わらない強度のはずなのに、

 何故か切れます。


「そんな事が、あるのですね」


 鈴鳴くんは、不思議そうに訊きました。


「自殺やなんかで、現実世界を否定する人に繋がる赤い糸は、よく切れるね。運命の神さまは、そんな想定していなかったからね」


 赤い糸は、現実の幸せを手繰り寄せる糸。


「そうだ、君。試験雇いにするから、応援に行ってくれるか?」


 鈴鳴くんは、指示通りの場所に降りると、天使がてんてこ舞いしていた。


「応援に来ました」


「助かるよ、とにかく糸の端末を辿ろう」


 切れた端末の先には、

 男の人と女の人。


「自殺だな。いや、心中というやつか。赤い糸で結ばれた以外の人と結ばれようとするとよくある事だ。とにかくこのふたりの魂の今後をどうするかの指示を貰う間に、もう片方の端末、つまり本来の運命の相手を見つけてくれ」


 心中した男の人のすぐ傍に、切れた赤い糸の端末が。

 男の人のすぐ近くで切れた様です。


 彼の本来の運命の相手に繋がる長い、長い、赤い糸をたどる鈴鳴くん。

 その先には、鈴鳴くんの持ち主。

 いや、元持ち主。

 彼女が、大切なものを失った不安に、うろたえていた。

 不安の正体が、解らず。

 瞳から、落ちる、

 大粒の涙。


 まだ、出会ってもいない相手を失ってうろたえる彼女。

 最愛の彼女の姿を見て、彼女よりうろたえる試験雇い中の鈴鳴くん。

 

 空から見ていた僕は、緊急対応として、赤い糸の端末を鈴鳴君に繋ぐ様に指示した。

 とりあえず落ち着いた彼女。


 ホッとした、鈴鳴くん。

 目覚まし時計に引き戻されました。


 持ち主の彼女に、

 ゴミ箱から、拾い上げられた目覚まし時計の鈴鳴くん。


 持ち主さん。

 目覚まし時計を見ると、何故か心ときめく。

 手放せない、目覚まし時計。


 目覚まし時計と彼女、

 相思相愛…?


 これって、どうなの?

 

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