第49話 一件落着っ!
俺たちのところにやってきたアメリアは、まず間の前に広がる状況に大きく目を見開いた。
「な、なんですか...これは?」
驚くのも無理はない。
なんせ俺たちの周りには、何体もの魔物の死体が広がっているのだから。
「あ、え~っと...」
しかしアランはアメリアになんて説明しようか悩んでいるのか、言い淀んでしまっている。
(仕方ない...)
俺はそう思うと、アメリアに向かって俺の方から口を開く。
「それがね、魔物の軍勢が近づいていたものだから、アランがこっちから行くぞ~って言ってそのまま2人で先に倒しちゃたんだよ~」
とりあえず俺は、世間的に見てこの状況はこう汲み取るのだろうなというのを想像しながら説明する。
おそらくこの状況は、救世主であるアランが主体的にやったというふうにした方が都合がいいだろう。
「ちょっ、ケイン!!」
だが、当然ながらアランはその話を聞き、驚き声を上げる。
「そうだったのですか!!さすがですっ!よくこの軍勢を二人で倒せましたね。私なんかではとてもとても...」
しかしアメリアはその話を信じ、アランに向かって羨望の眼差しを向ける。
「いやっ、アメリア?それは違う・・・」
「さぁさぁいつまでもここにいてもなんでしょう。とりあえず城の方に戻りましょう。陛下もこの話を聞いたらさぞお喜びになりますよ」
「だからアメリアってば!!」
アランは必死で否定をしようとするのだが、アメリアはさっさと話しを進めだし、俺たちを城の方へと連れていく。
「そうだな、早く城の方に戻って休みますか。なぁアラン?」
「ねぇケインもアメリアも少しは僕の話を聞いてよ、ねぇってば!!」
俺とアメリアはそのままアランの話を聞き流すと、アランを城の方へと連れて帰るのだった。
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今俺たちがいるのは城にある謁見の間、玉座から扉に敷かれた絨毯の上で俺とアランの二人は、玉座に座る王様に向かって跪いている。
「救世主アランよ、今回の魔物の軍の侵攻、よくぞ事前に阻止してくれた。サキト王国国民全員に替わって礼を言う」
王様は静まり返る謁見の間でゆっくりと口を開き、俺たちに礼を述べる。
「あ、あのですね王様。これはちょっと内容が異なるというか...」
アランは王様の言葉の内容を否定しようとそうつぶやくのだが、
「救世主様、バンザーイ!!アラン様、バンザーイ!!」
王様がしゃべり終わった瞬間、両隣にいる兵士たちが大声でそう叫び出し、アランの言葉を大きくかき消す。
「今日は宴である!!今回のアラン達の活躍、精一杯喜び合おうぞ!!」
「オォーーーー!!!」
そして王様のその一言から、先ほど以上の歓声が響き渡る。
「あっ...」
アランもその歓声を聞いて、否定することをあきらめたのか、さっきまで上げていた顔をガクッと下げる。
まぁ、俺的にはその方が都合がいいし、それでいいと思うけどな~
謁見を終えると、俺たちはそのまま食堂の方に案内される。
「さぁさぁこちらです」
案内の人が食堂の前で止まると、そうつぶやいてゆっくりとその扉を開ける。
「「おぉ~~~!!」」
扉を開けた先の光景を見ると、俺とアランは思わずそう声を上げる。
当然だ、目の前に広がる光景は、俺たちの想像を超えるほどのとんでもなく豪華な食事が並べられていたのだから。
「すごいよケイン!僕こんな料理、見たことすらないよ!!」
アランはあまりの光景に思わずそう叫ぶ。
今まで何度か食堂に行ったことのある俺としても、その光景には驚きを隠せない。
なぜなら、今回出されている食事の数々は俺が招かれた時に出ていた食事のどれよりも多く、豪華だったからだ。
「おいおいアランやっぱお前スゲーな!今までこんな料理ここでも出たことね~よ」
「僕がすごいんじゃなくて、救世主だからすごいだけだよ」
「じゃあやっぱりお前じゃね~か」
「だからそういうことじゃないって!!」
俺とアランはそんなことを言いながら食堂の中に入ると、案内されるがまま自分のテーブルに到着する。
すると、そのあとに続々と豪華な服装をしている人たちがこの場に集まってくる。
おそらくこの国の貴族か何かだろう。
最初の方はあまり気にしなかったのが、ほとんどのテーブルにそういった人たちが集まり始めると、自分の庶民じみた服装が少し恥ずかしくなってしまう。
「なぁなぁ、なんか俺たちの場違い感半端なくね?」
「しょうがないよ、そもそも僕たちは庶民だし、着替える時間なんてなかったじゃないか。そういった服だって持ってないし」
「まぁ、そうだよな~」
俺とアランは小さな声でそんなことを言い合っていると、
「みなのもの全員集まっておるな。これより宴会を始める!」
王様が食堂の一番前に立って、開会の宣言を行う。
「此度の会は、本日王都に攻めてきていた魔物の軍勢の侵攻を見事阻止してくれた救世主アラン一行を盛大に称える会である。そのため、今回の乾杯のあいさつはアランにやっていただきたいと思う。アラン、前へ」
王様はそう言ってアランを前へと招く。
「呼ばれてるぞ、アラン。早く行って来いよ」
「えっ!嘘!僕が行くの?」
急な王様の振りに驚いたアランだったが、
「みんな見てるからアラン、早く行けって」
みんなのこちらを向ける期待の眼差しから、アランはしぶしぶグラスを持って前へと出る。
当然だが、その時のアランの顔は緊張のせいでガチガチである。
「えっと、先月より救世主の天命を授かりました、アランと申します。救世主になってまだ日は浅く、これから長い旅が僕には待っています。しかし、今回のようにどんな苦難があったとしても、決してあきらめることなく天命に従い、魔王を討ち果たすことを誓いましょう。今回はその最初の一歩を歩めたことを、自分に祝いたいと思います。それでは、乾杯!!」
「「乾杯!!!!」」
アランの乾杯の合図に、みんなが一斉にグラスを掲げる。
まぁ、その場で乾杯のあいさつをしろと言われた割にはうまく挨拶できた方ではないだろうか。
パーティなど参加したことのないアランならなおさらだ。
そしてアランは、そのあと俺のいるテーブルに戻ってくる。
「アランおつかれ~、やっぱりパーティってのは堅苦しいなっ」
「ねぇあれでよかったのかな?僕こういうのよく分かんないんだけど」
「何言ってんだよ、即興で初めての乾杯のあいさつがあれなのなら相当すごいぞ」
自己紹介・一言・乾杯の言葉が入っていたのだ、俺的にはふつうにいいと思うのだが。
とりあえず俺たちはそのあと、コミュニケーションとかは気にすることなく、目の前にある食事にありつくことにする。
なかなか食べる機会のない料理ばかりなのだ、食べない方がもったいない。
誰かに話しかけるなんてことはせず、とりあえずただ食べていると、
「ケイン様~!!」
「あれっ、マリン様?」
さっきまで王様の隣にいたマリン様が、俺たちの方にやってくる。
「マリン様、先ほどのテーブルにいる人たちはよろしいのですか?」
「何言っているのですか?今回はお二方が主役のパーティですよ。お二人を優先するのは当然です。それに、あの人たちは王族と関係を持ちたいだけの人たちですから...」
確かの先ほどマリン様がいたところに目を向けると、そこには豪華な服を着た男たちが群がっていた。
おそらく縁談の話でもしていたのだろう。
やはりこの世界でも、地位とか権力というのは重要らしい。
前世とあまり相違ない事実に、俺はある意味安心感さえおぼえてくる。
「マリン様もいろいろ大変なのですね~」
「ケイン様、私はそういったこと話したいわけではないんですよっ!今回はケイン様が私の部屋の窓から飛び出した後の話を聞きたいんです」
マリン様はそう言いながら俺に詰め寄ってくる。
まぁ、あんな飛び出し方をしたら、誰でもそのあとについて聞きたくなるわな。
「あぁ、あの後の話ですね。確かあの後は...」
俺は先ほどのことを思い出しながら、マリン様にそのことについて気軽な感じで話そうとしていると、
「アラン様、今宵の宴は楽しんでいますか?」
そう言いながらアメリアが、マリン様が来た逆の方からやってくる。
「あっ、アメリアじゃない!」
「これはこれは王女様、3人でどんなお話をしていたのですか?」
アメリアがそう言って話に入ってくると、俺たちは4人だけの空間が出来上がる。
「そうそう、アメリアは先ほどのお二人の戦いを直で見ていらしたのですか?」
「いや、それが私が戦場に到着した時にはもう終わっていまして...」
「そうなの?でもこれからケイン様にそのことについて聞いていたところだからアメリアも聞いてみたら?」
「はい!私もぜひお聞きしたいです。お二人の活躍をっ!!」
なぜか二人は、俺とアランを差し置いて盛り上がってしまっている。
別に俺としてはそんなに激戦というわけではなかったため、話すことなんてたかが知れているのだが...
「なぁアラン、俺別にそんなに話すことないんだけど...」
「何言ってるんだよ、こっちの方こそないよ!ほとんどケインが倒しちゃったんだから...」
俺とアランは小声でそんなことを話していると、
「じゃあお二人とも、お話しいただけますか?」
マリン様のその一言で二人がこっちを向き、俺たちに羨望の眼差しを向けてくる。
「さぁ、お二人とも、お願いします」
そしてアメリアも、そう言って俺たちにバトンを渡してくる。
いやいやほんとに話すことなんてないんだって!!
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