第45話 アメリアの現状
「それでこちらがキッチンになります」
「おぉ...」
アメリアの家に入って数十分、僕は今メイドさんに連れられて、アメリアの家を案内してもらっている。
メイドさんは様々な部屋や家で働いている人など、これから僕たちの仲間になるアメリアの家をくわしく教えてくれた。
そして僕は、メイドさんに部屋を案内されていくにつれて一つ思ったことがある。
入る前からうすうす感じていたことではあるのだが、それはアメリアの家はどの部屋も豪華だという点だ。
リビングやお風呂、トイレ、リビング、それに今案内されているキッチン、どれをとってもいつも僕が使っているものとは大きく違っている。
その上この家はコックを雇っており、その豪華なキッチンで料理をしてもらっているらしい。
僕からするとこんな環境で生活することは、贅沢この上ない。
果たして僕たちは、こんな環境で暮らしているアメリアとともに旅をすることができるのだろうか。
案内されていくにつれ、僕はその思いが強くなっていく。
すると、案内もある程度終わったところで、
「そして最後に、この奥にある部屋が...あっ」
最後にメイドさんが、一番奥にある部屋を案内しようとしたその時、メイドさんは何かに気づいたかのような声を出してその部屋を見つめだした。
「ん?この部屋には何かあるんですか?」
僕はそのメイドさんの反応を不思議に思い、メイドさんの後ろからその部屋の扉を覗くと、ほかの部屋とは違い、その部屋の扉は開いたままの状態になっていた。
「誰かあの部屋にいるのかな?」
僕はそう言ってその部屋へと駆け寄ると、
「あっ、お待ちください!」
そう言ってメイドさんが後ろを追いかけて引き留めてくる。
(引き留めてくるってことはこの部屋に何かあるってことだよな~)
メイドさんの反応からますますその部屋に興味を持った僕は、こっそりとその部屋を覗いてみる。
(なんか話し声が聞こえるな。部屋に誰かいるのか?)
話し声が聞こえたため、中をよく見てみると、そこにはアメリアと知らない女の子がいた。
その女の子はアメリアと同じく金髪で、体はアメリアと比べると華奢な体型をしている。
それだけを聞くと別におかしな状況ではないのだが、一つ不思議な点があるとするならば、その女の子はベットの上で寝たきり状態であるという点だ。
現在正午をとっくに過ぎており、とてもじゃないが今まで寝ていただけとは思えない。
何かの病気なのかと疑問の念が浮かぶ。
「アリア、体調の方はどうだい」
すると部屋の中でアメリアがその女の子に向かって話しかける。
「うん、今は何ともないよ。心配しないでお姉ちゃん」
「そ、そうか、それならいいんだが」
アメリアは心配そうにその女の子に向かって話をしている。
話の流れから、おそらく女の子はアメリアの妹なのだろう。
アリアと呼ばれているその人は一見元気そうに振舞ってはいるが、よくよく見てみると顔色はとても悪そうだ。
アメリアもそれに気づいているからか、相変わらず心配そうにしている。
「ほ、本当に大丈夫か?昨日だって熱が出たうえ、ずっと咳き込んでいたじゃないか。今だって咳はなくなったものの、熱は引いてないし」
「大丈夫!大丈夫だから、心配しないで。それにこれから救世主様と一緒に魔王討伐の旅に出かけるんでしょ。私にかまっている場合じゃないよ」
「そ、それはそうなんだが。アリアがずっとこんな状態ではとてもじゃないが魔王討伐など....」
そこでアメリアの会話が止まる。
なぜなら、その瞬間アメリアは自分の目線を僕のいる扉の方に向けたからだ。
「あっ...」
「えっ」
そう、僕が二人の会話を聞いていたのがばれたのである。
そしてその時には、部屋を覗いているのは僕だけではなく、部屋を案内してくれたメイドさんもだった。
「ふっ、二人ともなぜそこに...?」
「あっ、え~っと...あはは」
「すいませんアメリア様!私も最初はアラン様を止めようとしたのですが、私としてもアリア様のご容態が気になってしまって...」
僕が愛想笑いをしているそばで、メイドさんは必死にアメリアに謝っている。
「いや、今となっては仕方がない、それにアラン様にもアリアのことは紹介すべきでしたね。とりあえず二人とも中に入ってください」
アメリアはそう言うと、僕とメイドさんを部屋の中に入るよう促す。
「アラン様、ご紹介が遅れました。ベットの上にいるのは私の妹のアリアです」
促されるがまま、僕は座っているアメリアの隣にある椅子に腰を掛けると、アメリアは自分の妹を僕に紹介してくれた。
「こんな状態での対応になってしまいすいません。アメリアの妹、アリアと申します」
僕は改めてアリアを近くで見てみると、アリアの表情はとても悪そうであり、今までの大丈夫という言葉も強がっているようにしか見えなかった。
その様子から、僕は思わず単刀直入にこう聞いてしまう。
「あの急で申し訳ないんだけど、アリアは何かの病気なの?」
自分としても始めからその話をするのはどうかと思ったのだが、僕としても以前、病気の人を看病した経験があることからどうしても気になってしまい、思わず聞いてしまった。
しかし、僕の予想に反して、質問に対するアメリアの返答はとても意外なものだった。
「それが、分からないんだ」
「分からない!?」
アメリアの返答に、僕は思わず声を上げてしまう。
病気について詳しく知らない僕が言うのもなんだが、それは大丈夫なのだろうか。
知らないというものほど恐ろしいものはないというのは、僕でも知っている。
この状況は決していいものとは言えないだろう。
「分からないっていうのは、どういうことなの?」
僕はより詳しい事情を聴こうと、そう質問する。
「そのままの通りだ。アリアは熱が出たり、咳き込んだりと風邪と同じような症状は出るものの、それ以外の症状は見つからない上、ずっと看病しているのだが、全く治る気配がないんだ」
確かにそれだけの情報だと、僕から見てもとてもじゃないがどんな病気なのか判断することはできそうにない。
ただの風邪ならそれに越したことはないのだが、ずっとその状態となるとそういうわけではないのだろう。
「風邪の症状が出てからどれくらいたつの?」
「もう、2週間以上になる」
「そんなに...」
これらの内容からどんな病気かは分からないが、よろしくない状況だというのは分かる。
「そういえば、回復術師には見てもらったの?」
「それなんだが、今回はなぜかアリアに治療院に行くようにとの天命が下っていないのだ」
本来なら神様は、事前にその人が病気になることを予見し、先月の月末の時点で病気になった際に治療院に行くようにと天命を下すはずだ。
そのため、今の時点で天命が下っていないのは明らかにおかしい。
「....なるほど」
そのため僕は、どんな病気かは分からないものの、一つの仮説にたどり着いた。
それは、「神様は、助からないと思った命は治療院に見せることなく、そのまま見捨てるのではないか」というものだ。
この説は以前、ケインが以前導き出したものであり、そのとき僕としては否を突きつけたかったのだが、以前のイルルのお母さんの件もあり、一概に否定はできなかった過去がある。
しかし今でさえも、実際にどんな病気か分からない人に治療院に行くようにとの天命が下っていない状況にある。
そのため、その仮説を100%信じるとまでは言わないが、少しばかり信じてしまいそうになってしまう。
神様はもうアリアのことを見捨ててしまっているのではないか、と。
しかしそんなことを本人に直接言うわけにもいかない。
そのため、僕は解決策として、神様ではなく一人の友達の顔が脳裏に浮かんだ。
(そんな時はあいつに頼るしかないよね)
そう、以前イルルのお母さんの病気を治そうとした、僕の一番の親友である、ケインの顔が...
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