第41話 またまた王都へ


とまぁ、こんな感じで俺と王女様の交流がスタートしたわけだ。


それから王女様は、月一のペースで夜に冒険者組合にいる俺を呼び出しては、俺の冒険の話を聞いてくるという、他人から見ればとても奇妙な日々が流れた。


そしてそのまま、現在へと至っている。


そのため、先ほど俺が馬車で王女様を見た時は、普通にあいさつをしてしまいそうになったものだ。


(ふぅ~、さっきはほんと危なかったな~)


俺は王都に向かう馬車の中でそう安堵していると、


「何かいいことでもあったのですか、ケイン様?」


王女様は不思議そうに俺にそう聞いてきた。


「いやいや、私はただ、王女様が無事でよかったな~と思っただけですよ」

「まぁ、お気遣いありがとうございます」


俺ら3人はそのままのんびりと王都へ向かっている。

こういった静かな旅もいいものだ。


「ところで王女様、今回私たちはなぜ王城に招かれているのでしょうか?」


しかしそんなのどかな雰囲気を、アランの一言が変えてしまう。


「あら、アラン様は天命で聞いていないのですか?」

「はい、私の方ではただ王都へ向かうようにとしか言われておりませんので...」


なんか双方で情報の行き違いがあったらしい。

天命もそういったところはちゃんとしてほしいものだ。


「アラン様は今回、旅のお仲間を探すために王都に行くつもりですのよね?」

「は、はい...」

「実はですね、そのお仲間というのはうちの騎士団の兵士なんですよ」

「あ~そうなんですね」


王女様の言葉で俺たちは妙に納得する。

今回王女様に会ったことで、より詳しい情報を得ることができたようだ。

天命も、こういった情報はちゃんと教えてほしい。

こういった偶然がないと、俺たちはそのまま王都で仲間を探すところから始めないといけないところだった。


「新しい仲間か~楽しみだね、ケイン」

「まぁな~」


俺たちは“新しい仲間”というワードにすこしテンションが上がってしまっている。

早く王都に着いて、新しい仲間というのに会いたいのだが、


「あの、王女様。この馬車はあとどのくらいで王都に着く感じですか?」

「う~ん、明日の朝ってところですかね~」

「「朝!!」」


その王女様の発言に、俺たち二人は思わず同時に叫んでしまう。


「どうしたんですか、お二人とも!普通そのくらいかかるものじゃないですか!?」


そして王女様も、俺たちの驚きに思わず戸惑ってしまう。


今まで、少なくとも時速100kmのスピードで平原を突っ走っていた俺らとしては、王都に着くのが明日という事実は、なかなか信じられないものがある。


「馬車って、結構遅いんですね...」

「まぁ、私たち3人を乗せておりますので、当然といえば当然だと私は思うのですが...」


俺ら二人と王女様との間には、どうやら常識のずれがあるらしい。

まぁ特急列車と馬車のスピードを比べること自体が、少し酷な気もする。


「王女様もよくここまで来ましたね...」


そう考えると、王女様の忍耐力も大したものだと感心してしまう。


「実は私、昨日までお隣の国に用事がありましたのでもっと遠くにいたんですよ。このくらいで遠いと思っていたらどこにも行けませんよ」


お隣の国というのはアワの村と王都の間の平原を、まっすぐ西に行くとある国のことであり、アワの村と王都の距離なんかよりずっと遠いところにあるのは言うまでもない。


よく長い時間をかけて隣の国に行ったものだ。

その上、兵士の方は護衛という名目上、歩いて移動している。

この世界の人の根性も見上げたものだ。


「まっ、いい機会ですし、ゆっくり旅を楽しみましょうや!」

「まぁ、そうだね!」


俺とアランはそう言って、今回はとりあえず納得することにする。


旅は長い、たまにはのんびり行きましょう。



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「見てください、やっと王都に着きました!」


王女様は馬車の窓を開けて、そう叫ぶ。

いくら長旅に慣れているからといっても、到着したときに見せる喜びの表情は俺たちとなんら変わらないらしい。

一方王女様の隣に座る、俺たち二人はというと、


「は~疲れた、やっと到着だよ~」

「あ~、早くゆっくり休みたい...」


もう精神の限界であった。


とにかくきついかった!一日馬車に揺られるのは...

何でもいいから早く休ませてほしい。


そして馬車は門の前に一度止まると、兵士が手続きを済ませ、そのまま馬車は王都の中へと入っていく。

王都の中はいつもと同じ、と言いたかったのだが、


「王女様~!おかえりなさ~い!!」


この国の王女様が帰ってきたのだ、王都の住人は大歓声で王女様の馬車に向かって思いっきり手を振っている。


「みなさ~ん、ただいま戻りました~!」


そして王女様も、そんな人たちに向かって精一杯手を振ってみんなに応える。


「へぇ~、こうやって王都を見ると、いつもの景色も少し新鮮だな~」


そんないつもと違う王都の様子に、俺は思わずそうつぶやく。


「みんな大歓迎だ、王女様に人気ってすごいんだね!」


そしてアランも俺と同じように、この不思議な状況を見て興味のまなざしを向けている。


そしてその歓迎の列は、俺たちが王城の門に着くまで続くのだった。



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「王女様のご帰還である、門を開けよ!!」


俺たちが王城に到着すると、馬車から降りて、開いた城の正門から中に入っていく。


いつも俺が城に入るときは、城の端にある小さな門から入っていたため、今回大きな正門から入ることは、俺から見るととても気持ちがいい。


「救世主様が王女様と一緒にいることは、王都に入る前からすで城に伝えてありますので、どうぞ気にせずお入りください」


そんな兵士の言葉から、俺たち二人も遠慮することなく堂々と中に入っていく。


そして最初に案内されたのは、俺がたまに王城に泊まるときに貸してもらえるベッド付きの部屋だった。


「お二人とも、ただいまこれから旅をすることになる騎士団の兵士を呼んできますので、ここで少々お待ちください」


城の兵士はそう言って、部屋から出ていく。

そして王女様も城に帰るとすぐに自分の部屋へと行ってしまったため、この部屋には俺たち二人しかいない。


「さぁ、ケイン、誰もいないことだし、今まで僕に話してなかったこと話してもらおうかな」


するとアランは部屋にある椅子に腰を掛けると、俺に向かって昔から王女様と会っていたことについて問い詰めてくる。


「はいはい...」


俺としても隠すことはすでに諦めているため、今までの王女様との関係についてアランに事細かに話すことにする。


「...まぁ、王女様との関係と言ったらこんな感じかな」


そして俺は、アランにすべて話し終えると、


「ねぇ、ケイン...僕、今までケインに連れられて一週間に一回の頻度で王都に行ってたよね」

「あ、あぁ...」


アランはとても低い声で俺にそう質問をしてくる。

そして、


「ってことはさ、何回か僕を王都の町に置いて、城に行ったこととかあるんじゃないの?」


俺としては気づいてほしくなかった内容に、アランは気づいてしまう。


「まぁ~、何度か」

「えっ、あるの!?なんで僕も連れて行ってくれなかったの?」

「やめてやめて!首が閉まるからっ!」


アランは俺の言葉を聞くと、思いっきり俺の胸倉をつかんでゆさゆさと揺らしてくる。


確かに、アランと一緒に王都に来た時に王女様に呼ばれた際は、アランに「ちょっと買いたいものがあるから一回別れようぜ」と言って、こそこそ王都に行ったことがないわけではない。


でもしょうがないじゃない!!独り占めしたいんだもん。

この国のきれいでかわいい王女様と二人きりになれる時間があるのに、わざわざ友達誘っていくやつがどこにいるっていうんだ。


そういったことはぜひ察してもらいたい。

しかし、


「ごめんごめん、悪かったからっ!」


俺が友達をのけ者にしてしまったことも事実。

俺は、ただアランに責められるだけ責められて落ち着いてもらうのを待つしかないのだ。

そして俺はそのまま、アランの問い詰めにただただ聞くだけの状態でいると、


「コンコン...」


アランの感情は、第三者によって強制的に落ち着くことになる。


「お二人とも、王様がお呼びですので、謁見の間にお越しください、新しいお仲間もそこでお待ちです」








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