第21話 さぁ、運命の時!


「ケイン、お誕生日、おめでとう!!」


次の日の夜にあたる現在、俺は家族に誕生日を祝ってもらっている。


(あ~あ、来ちゃったよ...誕生日)


何を考えていたとしてもやっぱり時は流れるもので、俺もついに15歳、そして精神年齢は35歳になった。


「おめでとう、お兄ちゃん!」


そして当然家族も年を取るわけで、俺の妹、エレナももう7歳で2か月後には8歳になる。

そう考えると、時の流れは速いものだ。


「あ、ありがとう...みんな」


しかし、俺は15歳になったことを、天命のこともあり素直に喜べず、すこしぎこちない返事をしてしまう。


「なんだよあまり喜んでないな~。せっかくお前の誕生日だからって母さんも張り切って夜ご飯作ったんだぞ。なんだ、ついにケインにも反抗期か?」

「まぁまぁこの時期になると、みんなそうなるものよねぇ」


この世界の反抗期は明確だ。

15歳の頃にみんな突如としてやってくるらしい。


しかし、その理由はとても分かりやすい。

それは当然、があるからだ。

自分の運命が明確に決まってしまうこの時期、世界の人間の子供たちがその運命に反抗しようと日本の子供のような態度を、日本人よりも分かりやすくとる。


まぁそれも仕方がないことだ。

日本と違い、こうしろああしろと指示してくる者が親や先生などではなく、神なのだ。

明らかに反抗する本気度が違う。


そのため、この世界の15歳は、2つの場合に分かれてしまう。

天命をもらって喜ぶ者と、反抗する者だ。


しかし、今まで反抗期がどうのこうの言っていたが、実際に反抗する者はごく少数に限られる。

ある意味、反抗期を持つ者は、数少ない人材と言えるだろう。


しかし、そんな反抗期もたかが数年で終わりを迎える。

なぜなら、数年もたってくると、どう抗っても無理だということをみんな理解し始めてくるからだ。

やはり神の存在は大きいらしい。


「ついにケインにも天命がもらえるようになるのね!」

「ケインがどんな天命をもらえるのか楽しみだな~」


両親二人がそう言って、誕生日である俺以上にうきうきしている。


「父さんは、俺に農家を継いでほしくはないの?」


俺は少し核心を突く質問をしてみる。

後々考えて見ればバカな質問だ。

ケインには俺の跡を継いで農家になってほしい、なんて言われたら俺はどんな気持ちになればいいのかとか一切考えていなかった。


しかし、父さんの答えは意外なものだった。


「いやいや、別に俺はそんなことは思っていないぞ。俺はケインに神様の言う通りにしっかりと生きてくれれば、それでいいさ」


そうだ、この世界の人間はこんな感じだった。

いつも俺と一緒に子供時代を過ごしたケインとイルルとしかほとんど話さないから忘れていたが、基本この世界の人間は自分の意見といったものがない。

みんな神様に縋り付いて生きているのだ。

特に大人たちはそれがより顕著に出ている。


よく言えば自分の欲望で動くことはしない人間、悪く言えば周りに流されやすい人間であった。


(会社の部下がこんな感じだと、上司はいろいろと楽なのかねぇ)


俺はこの世界の制度に少し消極的であるが、


「いいな~、私も早く神様の言葉聞いてみたいな~」


7歳の子供であるエレンはこういったことに対して楽観的であった。

やはりどの世界でも、子供は大人に憧れてしまうものなのだろう。


「ご馳走様、今日はもう寝るよ」


食事を終え、俺はそう言ってリビングを出ると、寝る支度をして自分の部屋へと向かう。

部屋に入ると、俺はいつも通り魔法を使って、村を出る準備をする。


今日はアランと約束はないのだが、とりあえず外の空気を吸おうと、部屋の窓から飛び降りる。


天命をもらう月末まであと3日。

運命の時は刻一刻と迫っている。


(まだ3日もあるんだ、3日後は3日後の俺に任せよう...)


俺はもはや現実逃避であることを考えながら、夜の森へと向かうのだった。



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そして3日後、


(あ~あ、来ちゃったよ...月末)


俺はその日の夜、ベットに入りながら現実を受け止め、そう思う。


俺はこの後、夢の中で天命をもらう。

今日のところはどうにかして一晩起き続けてみようかとも考えたが、これはただの面倒ごとの後回しに過ぎない。


実際に一晩起き続ける人はいる。

村や都市の警備をしてくれる人たちだ。

そういった人の話だと、寝ていなくても夜中に突如天命が来て、頭に直接語り掛けてきたり、寝ていなくても明日の夜に寝た時に天命が下ったりと、様々なケースでどちらにしろ神は俺たち人間に天命を送ってくるらしい。


結局、逃げることは不可能なのだろう。


「今日はおとなしく寝るしかないな...」


また最初のほうは、子供の重要な関係者である両親も、子供にどんな天命が下るのか、天命自体が教えてくれるらしく、2人はわくわくしながらもう床についてしまっている。

結局、俺自身に天命が下らなくても、天命からは逃げられないのだ。


(縛りのない内容でありますように、縛りのない内容でありますように...っ!!)


俺はベッドの中で、心底そう願う。

最初はドキドキして眠れなかったが、数時間も経ってしまうと、結局寝てしまうもので...



将来の不安を抱えながら、俺は眠りにつくのだった。



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皆さんおはようございます、朝になりました。


朝日が差し上り、太陽も俺に朝だと伝えてくれています。


「あぁ、もう朝か...」


俺はもぞもぞと起きだし、大きくあくびをし、背伸びをする。

曇りもない、いい天気だ。

今日はいつもどおり、空地で3人で集まれそうだ。



さて皆さん、昨夜のことについてなんですが...


なんということでしょう。

昨夜、何もなかったのですが!!

どういうことでしょうか!?


何もなくただぐっすりと眠っただけなのですが、どういうことでしょう!?


(な、何、どういうこと?俺、今年15歳だよね。えっ、違う?)


戸惑いすぎて俺は、自分の出自に不安を抱き始める。

すると奥の方からドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえ、俺の部屋の扉がバタンと開く。


「ね、ねぇケイン!昨夜天命ちゃんともらったわよね!?」


扉の前には両親が焦った表情で立っていた。


「えっ、えっと。俺、昨日何もなかったんだけど...」


戸惑っていた俺は、親に昨夜のことを包み隠さずしゃべってしまう。


「そ、そんな...どうして?」


母さんは扉の前でがっかりして大きく膝から崩れ落ちる。


「か、母さん!?」


父さんも母さんの肩に手を置き、大きくため息をつく。


「どうしたんだよ2人とも。2人は俺の天命について何か聞いてないのか?」


俺は父さんにそう聞いてみるが、父さんから衝撃の答えが返ってきた。


「いや、俺の元にはいつも通りの天命しか下らなかった。お前の将来のことについては何にも...」

「私の元にも、何も、なくて...」


この先真っ暗である。

まぁ俺の場合は真っ白というのが正解かもしれないが、この世界の人にとって、天命がないというのは衝撃的で恐ろしいものだった。


「ケインはこれから、どうすればっ...」


母さんは今後の俺の将来に絶望している。

同じく父さんも、今回の出来事に大きく頭を悩ませる。


「ね、ねぇ、父さん母さん...」


大きくうなだれている2人に対して、俺は頭の中で一つの仮説が生まれたのでとりあえず聞いてみることにする。


「俺ってまさか、拾い子で本当の誕生日はもうちょっと後なんじゃ...」

「いや、それはない」



あら、即答...

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