第12話 回復術師を求めて
王都に入って少し歩くと、俺は二人にかかっている魔法を解く。
すると、
「ねぇ、ケイン。さっき門番の人にカインって呼ばれてたけど、あれ何?」
アランが先ほどのやり取りについて、少し強めの口調で問いただしてきた。
今まで隠してきたことだが、俺はあきらめて白状する。
「じ、実は、俺もう何度か王都には来たことがあってだな...」
「はぁ!?なんで僕も誘ってくれなかったの?」
「ほ、ほら、俺が言ってたのはいつも夜だし、危ないだろ?」
「だから僕が危ないんだったらケインも危ないんだよ!1人で行くなんてありえないって!」
そう、俺は夜の特訓の中で何度も王都に行ったことがある。
最初は倒した魔物死体の処理をお願いしようと思ったことがきっかけで、俺が大人に変身し、カインという名前で冒険者組合で冒険者登録をしてもらってから、ほぼ毎日夜に王都に行っては冒険者組合で魔物の死体の買い取りを行ってもらっていたのだ。
先ほど使った魔法の布袋も冒険者組合からもらったものである。
「あと、さっき見せてたカード、あれも何?」
「あれは冒険者カードといって、一種の身分証明になるんだよ。だから初めて王都に来た時、冒険者組合で作ってもらった」
「ふ~ん、ということはもうケインは冒険者で依頼も何度かやっていると...」
「ま、まぁな...」
もう言い逃れすることはできまい。
今回で今まで隠してきていたことが全部バレてしまった。
「よ、よし、これから倒した巨人を買い取ってもらうから、とりあえず冒険者組合に行こうぜ」
「あ~、話しそらそうとしてる~」
俺は話題を変えるようにそう言って、冒険者組合へと向かう。
冒険者組合の前に到着すると、周りにはたくさんの人で賑わっている。
王都の中心に位置する冒険者組合は、建物も大きく、誰でもその場所が分かる、一種のシンボル的役割を担っていた。
「へぇ~大きいんだね」
「ほら、さっさと中へ入るぞ。買い取りの列が長いとまずいからな」
俺はそう言うとさっさと中へと入る。
冒険者組合の中はさすが王都というべきか、たくさんの冒険者で賑わっていた。
受付にも人はいるが、やはり賑わっているのは飲み食いしている冒険者たちだ。
王都の冒険者組合には飲食店も設置してあり、食事も酒も楽しめる。
飲食スペースには、依頼がうまくいって羽振りがいい者や、逆に依頼がうまくいかずフライドポテトだけをパーティーメンバーで分けてかじっている者など様々だ。
俺たちはそれらを素通りし、買い取りカウンターへと向かう。
「ねぇ、ケイン。ご飯食べて行こうよ」
「とりあえず買い取りを終わらせてからだ、というかその前に回復術師も探さなきゃだろ。はやくしないと今日中に終わんねーだろうが」
そんなこといいながら買い取りカウンターへと到着すると、俺は受付のお姉さんに買い取りをお願いする。
「あら、カインさん。昨日受けてた依頼、もう終わったの?」
「あぁ、さっきな。買い取りをお願いしたい」
俺は素早く買い取りをお願いしたかったのだが、
「あれ~、どうしたのこの子達。かわいいわね~。君たちいくつ?」
お姉さんは俺の後ろにいる小さな子供2人に関心が向いてしまった。
「9歳で~す!」
「は、8歳です...」
「へぇ~、この子達はカインさんの子供なの?」
「そんなわけないだろ!この子達はその...親戚から預かったんだよ。ついさっきな...」
俺は一瞬考えて、誰もが思いつきそうな言い訳でごまかす。
「それより早く買い取りはじめてくれないか?」
「はいはい、じゃあ布袋お預かりしますね」
俺はお姉さんに巨人の死体が入った布袋を渡すと、俺たちは買い取りの査定が終わるのを隅っこで待つ。
すると、
「ねぇケイン、昨日依頼を受けたってことは、昨日の時点でイルルのお母さんを助けようって決めてたな?」
やはりアランは勘が鋭いのか、そんなことを聞いてくる。
「そ、そうだったの?」
「ま、まぁな」
俺は恥ずかしいのを隠しながらそう答えと、
「そ、そうだったんだね。ケイン君、ありがとう」
イルルも恥ずかしながらそうお礼を言う。
「お礼はお母さんを助けてからだ。とりあえず早く回復術師を探そうぜ」
「うん、そうだね」
それからしばらく待っていると、
「カインさ~ん、査定が終わりましたよ~」
受付に呼ばれ、俺たちは査定結果を聞きに行く。
「それで、いくらになった?」
「はい、今回の巨人の魔物は100万セモンで買い取らせていただきます」
今まで何度か買い取りをお願いしたが、このセモンという単位は日本円にしたらいくらになるのかいまだにわからない。
とりあえず100万とか言っているし、これなら回復術師に料金を払うことはできるだろう、たぶん。
「それにしてもさすがですね、あの巨人の魔物を倒してしまうとは、さすが一級冒険者です」
冒険者組合の組合員はレベルによってランク付けされており、ランクが高いほど様々な依頼を受けることができるようになる。
レベルが高い順で一級、二級の流れで五級まで存在する。
俺も最初は五級から始まり、1年ほどかけて最近やっと1級になれたのだ。
俺はお姉さんから買い取り金をもらうと、俺はすぐに次の目的のために冒険者組合を後にする。
「君たちまた来てね~」
「ばいば~い、お姉さん」
アランとイルルに向けて手を振るお姉さんにアランは返すように元気よく手を振る。
さすがアランだ、初対面の人に対しても気おくれなく会話を行う。
到底俺にできることじゃない。
そのあと、俺たちは冒険者組合から少し離れた、これまた大きな建物へと到着する。
「ここも大きいね~、ここは何なの?」
「ここは治療院だ、ここならたくさんの回復術師がいるだろう」
王都立治療院、ここにはたくさんの回復術師が勤務し、様々な治療が受けられる。
俺は王都に来てから建物を何度か見ることはあったが、入ったことはない。
そりゃそうだ、俺だとある程度の種類の回復魔法なら使えるし。
とりあえずここで、誰でもいいから素早く回復術師をイヨの村に連れていきたいところだ。
最近開発した魔法もあることだしな。
とりあえず俺たちは早速中へと入り、受付へと向かう。
「あの~すいません。ここに来るの初めてなんですけど、治療をお願いしたいんですが...」
俺は当たり前のように受付のお姉さんにそう聞く。
しかし、その後のお姉さんの返事以降、俺たちはこの世界の恐ろしさを、目の当たりにすることになる。
「分かりました、それでは今回ここで治療を受けるようにと、天命はもらっていますでしょうか?」
「は?」
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